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a young man in a white T-shirt holds a clear glass of clean drinking water

「私は福島汚染水を飲める」なぜ韓国の科学者はこのような文章を発表したのか?

 福島の汚染水放流によって、お隣の韓国では民主党中心に「汚染水怪談」が垂れ流され、国民の不安を煽っています。そんな中、出てきたのが大韓薬学会放射性医薬品学分科の学会長の論文。汚染水を飲めるとまで言い切った彼のインタビューを今回、無料メルマガ『キムチパワー』で韓国在住歴30年を超える日本人著者が紹介しています。

自らの危険を冒してまで福島汚染水の安全性を語った韓国人科学者

日本福島原発汚染水が海洋放流秒読みに入った。東京電力は放流設備を試運転しながら作動に問題がないか点検している。放射線は目に見えないし、感じることもできない。狂牛病やサード電磁波のように、無知が恐怖を増大させる。

韓国では現在、民主党を中心に「汚染水怪談」を垂れ流している(福島の処理水が危険すぎるという議論を手を変え品を変えしながら煽り立てているのだ)。そんな中、ある科学者が今月初めに生物学研究情報センター(BRIC)公開掲示板に載せた文章が大きな波紋を起こした。「私は処理された福島の汚染水を持ってきたら、許容濃度まで薄めて飲む。科学で判断する事案を主観的な感じで歪曲してはならない。文章の著者は忠北(チュンブク)大学薬学部の朴・イルヨン教授(64)。大韓薬学会放射性医薬品学分科の学会長だ。

インタビューの約束を取るために(朝鮮日報の記者が)電話した時、彼は「(親日派をぶん殴ってやるという)ある市民団体代表が抗議訪問するだろうという警察情報課の連絡を受け、気が気でない」としながらも「社会が不必要な混乱に陥った時、科学者は知識を土台として正しい情報を発信しなければならない。私に対する非難より非科学的恐怖が広がるのがもっと怖かった」と話した。

BRICは、黄禹錫(ファン・ウソク)教授の幹細胞疑惑の際、国内生物学研究者らが様々な問題点を指摘し、論文捏造疑惑を明らかにする発火点となった空間だ。朴教授の書き込みは数日で再生回数1万回を突破した。科学者がなぜあのような刺激的なタイトルで議論を招いたのだろうか。14日、朴教授に会いに(朝鮮日報の記者が)忠北大学薬学部1館816号のドアをノックした。

事実を知っている故、沈黙できなかったと朴教授は話した。小さくて痩せ型、しかし表情と話し方は断固としていた。ソウル大学で学士・修士・博士号を取得し、忠北大学薬学部長を務めた。彼は自身を「放射性医薬品の特性と人体に対する影響を30年間研究し講義した」と紹介し「消耗的な論難に割り込んでも非難の大きいことは明らかだがその分野をよく知っている専門家として、今回は沈黙できなかった」と話す。

――福島汚染水をめぐる議論がなぜ消耗的なのでしょうか

「放射線に関する科学とはかけ離れた主観的見解によって論難が増幅され、国民の恐怖だけが大きくなっているからです。国家経済にも役に立ちませんし、だからといって汚染水の放流を防ぐ実質的な手段も見られません。」

――BRICに文章を書いたきっかけは何ですか

「私は放射性同位元素についてよく知っていて、福島の汚染水の放流が大したことではないと思っていました。ところで友達が『もう海釣りは終わった』と言って、学生たちも約80%が「これから水産物は気もちが悪くて食べられない」と答えているのです。国民が本当にこう考えるなら、本当に大きな問題だと思いました。ブーメランのように結局私たち水産業界と飲食業界に大きな被害を与えるはずなのに、これ以上遅れる前に正確な事実を知らせなければならないと思いました」

――タイトルを「汚染水を直接飲む」と刺激的につけていましたね

「科学的に問題ないと書いてみても目を引くのは難しいでしょう。国民が安心するためには、私が直接飲まなければなりません。公開された数字で計算してみたら本当に大丈夫なんです。刺激的なタイトルだと思いますが、それでも『安全だ』『心配するな』と大声で叫びたかったのです」

放射能を生涯研究してきたウェイド・アリソン英オックスフォード大学名誉教授が先月、「多核種除去設備(ALPS)で処理した福島汚染水なら直ちに1リットルでも飲める」と述べたが、国内科学者がこのような宣言をしたのは朴教授が初めてだ。

――汚染水を飲むというのはショーではないですか

「ショーと誤解されてもいいですよ。今は国民の食卓を安心させることが切実です。本当に大丈夫だと言うには、自分の体を差し出さないといけまません」

――生放送で「討論会」が開かれて本物の福島放流水を持ってきたらどうするつもりですか

「機会が来たら断りません。科学的攻防を交わす討論会でパク・イルヨンが正しいという結論が出たり、私が汚染水を飲む姿が生中継されれば、恐怖をまき散らし扇動した側は深刻な打撃を受けて壊れるでしょう。それが怖くて汚染水を準備できないと思います。もう一度言いますが、機会があれば私は躊躇なく飲みます。」

 

――このような文章を書くと言った時、周りから止められたはずなのに、どうやって勇気を出したのですか

「みんな引き止めました。金型を背負って火に飛び込むようなものだから。今まで勉強で生計を立てて生きてきました。これからは社会が必要とする時に使わなければなりません。批判は耐えればいいですし」

――悪口混じりの電話がかかってくるのに脅威(恐怖)を感じませんか

「私も人間です、どうして怖い気持ちがないでしょうか。「犬娘(ケッタル=李在明を支持する女性連)」たちが大騒ぎすることを明らかに知っているが、そのようなことが怖かったら、そもそもこのような文章は書けません」

――政府に胡麻をするための行動だという疑いも受けるのに

「御用学者と嘲弄されましたが、とんでもないことです。歴代の大統領選挙で誰に投票したかを見ると、私は政治的に保守よりも進歩にはるかに近い人なんです」

2012年、ドイツのヘルムホルツ海洋研究所(GEOMAR、Helmholtz)で福島で起きたセシウム流出を模擬実験した結果、流出直後の福島近海のセシウム濃度を1とする場合、約1年後の韓国近海でのセシウム濃度は0.0000000001と推算された。

――実効線量とはどういう意味ですか

「放射性物質そのものの量より私が受ける危険度がもっと重要です。その実効線量をシーベルトという単位で示します。健康診断で胸部レントゲンを撮ると、約0.1ミリシーベルトの実効線量を受けることになります。韓国人の年間実効線量の平均値は3.04ミリシーベルトと言われています」

――よりによってなぜバナナに例えたのですか

「シーベルト、ベクレルのような単位の代わりに直観的なコミュニケーションのために『バナナ等価線量(BED)』をよく使います。バナナ1個は150gくらいになりますが、カリウム40(放射性物質)がたくさん入っているんです。放射性物質の露出量をバナナ数個程度に換算して提示したりします。福島汚染水を放流濃度で希釈した水1リットルの実効線量はバナナ4分の1個に当たるほど安全だという意味です(笑)。」

――それでは一生飲んでも大丈夫ですか?

「福島汚染水全体に含まれる三重水素は780テラベクレルです。重さに換算すると、地球全体の三重水素総量が7キロほどになりますが、福島の汚染水は2.2グラムに相当します。事実上意味のない量ですが、それをさらに約30年かけて徐々に放出するんです。韓国近海に入ってくると予想される4~5年後の濃度の水なら一生飲んでも大丈夫です。人はすでにそれより高い放射線量の入った食べ物、例えばほうれん草、ナッツ、ニンジンなどを毎日食べていますよ」

周辺にゴミが散らばっていてもタバコの吸殻をもう一つ捨てることは勧めることではない。しかし放流以外に方法がない。福島汚染水の放流は経済性の問題もあるが、必ずしもお金の問題だけではない。パク教授は「隣国が災いと不幸を解決しようとしているのに傷に塩をぬることではない」として「もし韓国でそのような事故が起きたならば私たちも海洋放流を選択するだろうし、それが最善だと思う」と話した。こんな人が一人でも韓国にいてくれるだけでも、ありがたい。

(無料メルマガ『キムチパワー』2023年6月24日号)

image by: Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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