タレントのryuchellさんが12日、所属事務所で亡くなっていたことがわかりました。自殺とみられています。このニュースに日本全国の人々がショックを受けたのではないでしょうか。数ヶ月前に偶然、東京・笹塚で談笑するryuchellさんを見かけていたという芸能記者歴30年のベテランジャーナリスト・芋澤貞雄さんが、今回の件を振り返りながら、あの自殺した俳優についても思いを巡らせています。
ryuchellさんの出来事で、私の頭の中を駆け巡ったこと
ryuchellさんのニュースには本当に驚きました。
私は数ヶ月程前、京王線『笹塚駅』にある『紀伊国屋』前で、スタッフらしき人物と談笑するryuchellさんを偶然目撃していましたから…。
インスタやSNSでは“ありのままの自分”や“ryuchellのなりたい自分”を投稿していたようですが、残念なことにそのことでコメント欄には誹謗中傷が書き込まれていたようです。
自分が選んだ自分の生き方が間違っていたのか…笑顔の裏で思い悩んでいたのでしょう…胸が痛みます。
夫を演じることに違和感を覚えたryuchellさんが父親として、パートナーとして元妻・pecoと決めた生き方…“新しい家族の形”には当然賛否両論ありました。
今となっては誹謗中傷コメントを挙げることさえ心苦しいので具体的には書きませんけれど、ryuchellさんの容姿が激変していったことに「ryuchellのせいで息子がイジメにあわないか心配…」というようなコメントは相当こたえていたような気がします。
「めっちゃ可愛い」とか「素敵ですね、外国の女優さんみたい」と言われていたその裏での誹謗中傷に、少しづつ少しづつ悪魔に心をむしばまれてしまっていたのでしょうか。
pecoとの離婚を発表した翌月、ryuchellさんは『愛してる!』という映画の公開を迎えました。
この映画は“日活ロマンポルノ50周年”を記念したプロジェクトで、ryuchellさんはSMラウンジのオーナーという役柄でした。
トランスジェンダーの役者として、これからの仕事をしていきたいのだろうか…そんなことをふと思ったことを思い出します。
今となっては離婚から1ヶ月後のこの映画に出演を決めた事が“どうしてそんなに生き急ぐのか…”と感じぜざるを得ません…。
顔が見えない誹謗中傷ほど悪質なものはないと思いますが、私はこの4文字に、3年前の三浦春馬さんの悲しい出来事の数時間前の、賀来賢人のメッセージを思い出すのです。
自殺した俳優・三浦春馬さんへの誹謗中傷のこと
当時、三浦さんと賀来は同じ事務所に所属しており、賀来が三浦さんの後輩にあたります。
そのきっかけは2020年1月に投稿された三浦さんのツイッターでした。
「~どの業界、職種でも、叩くだけ叩き、本人達の気力を奪っていく。~少しだけ戒める為に憤りだけじゃなく、立ち直る言葉を国民全員で紡ぎ出せないのか」
この頃、三浦さんはミュージカル俳優としての活躍も盛んで、歌番組に出演する事もありました。
もちろん大絶賛するコメントも多かったのですが、その放送を観た顔の見えない視聴者たちが、好き勝手に“踊りは上手いのに歌がヘタ過ぎ”というような感想をSNSに書き込んだのです。
またこの頃、いわゆる“文春砲”で東出昌大と唐田えりかの不倫が報道されました。
三浦さんのツイートが自分への誹謗中傷に対するものなのか、東出の不倫報道に対するものなのかは今となってはわかりませんが、タイミング的にこのツイートは「お前はあんなクズ男の肩を持つのか?」とか「最低野郎の味方なの?」とバッシングの猛烈なターゲットになってしまったのです。
そして三浦さんがいなくなってしまう数時間前、賀来は「人が好きなモノや、一生懸命やっている事を馬鹿にするのなんか超簡単で、否定したり、好きだ嫌いだ言う事も超簡単。本当に超簡単。靴紐結ぶより。」という投稿をインスタグラムにアップしました。
そして突然のあの訃報…。
私には賀来の言葉が「春馬を追い込んだのは好き勝手に誹謗中傷しているお前らだ!」と言っているようで、しばらくの間、心臓の鼓動の激しさは治まりませんでした。
「お迎えに行くからね」3日間の心の移り変わり
『文春オンライン』ではryuchellさんを医学的見地からアプローチしていました。
今年5月に会ったという友人の「最近、ホルモンバランスが悪い」と言っていたというコメントを受けて。
医学的常識として、ホルモンバランスの乱れはメンタルに悪影響を及ぼすものとされています。
些細な事で急に落ち込んだりしてしまう、と。
10日に息子さんの5歳のバースデーを祝うためサマースクール先のグアム島を訪れていたというryuchellさんは、日本に帰ってくるときお迎えに行くからね、という約束までしていたという報道がありました。
この3日間にどんな心の起伏があったのでしょう…。
私は三浦さんの取材で強く感じたことがあります。
“本人が発しているSOSを敏感に感じ取ってくれる人物が側にいたら…”
せめて生きていくのが辛い程の“しがらみ”から解放され、天空で、笑顔で下界を見守っていること…を願ってやみません。
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プロフィール:芋澤貞雄
1956年、北海道生まれ。米国でテレビ・映画のコーディネーター業を経て、女性週刊誌などで30年以上、芸能を中心に取材。代表的スクープは「直撃! 松田聖子、ニューヨークの恋人」「眞子妃、エジンバラで初めてのクリスマス」。現在も幅広く取材を続ける。https://twitter.com/ImozawaSadao
image by : Dick Thomas Johnson from Tokyo, Japan, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons