ポーランドの「ベラルーシ侵略」に警告を発したプーチン
プーチンは黒海経由のウクライナ産穀物輸出合意の履行を停止して、SWIFTとの再接続を要求しているが、オデーサへのミサイル攻撃やウクライナに向かう船を攻撃すると脅迫している。
もう1つ、プーチンは、穀物取引の延長と引き換えに、トリアッティとオデーサ間のアンモニアパイプラインの運転再開を要求した。
これに対して、ウクライナ国防省は、「クレムリン(ロシア大統領府)は黒海を危険地域に変えた。主に危険にさらされるのはロシア船と、黒海を航行してロシアの港湾やロシアの一時占領下にあるウクライナの港湾に向かう船だ」とロ軍と同様な処置をするという。
西側諸国は、ウクライナ産穀物を鉄道輸送で他国に輸送して、そこから輸出する方策を検討している。EUの担当者は、コストの問題とポーランドなどがウクライナ穀物輸入を禁止していることなどを調整する必要があると述べている。
しかし、黒海穀物輸出合意が完全に終了すると、交渉材料がなくなるので、どうにか理由をつけて復帰したいロシアと、もうロシアに邪魔されたくないウクライナは、同合意を捨てて、より確実な代替ルートを見つけたいようである。EUもウクライナの意向を尊重する方向のようだ。
しかし、この穀物輸出合意からのロシアの離脱で、穀物相場が上昇している。アフリカ諸国での飢餓が心配な状況になっている。
そのアフリカの南ア政府がプーチン逮捕状を正式に申請したことで、プーチンはBRICS首脳会談に出席できなくなった。代理としてラブロフ外相が、出席することになった。
それと、「プーチンはウクライナとの戦争に勝つために十分なことをしていない。無能なプーチンは権力を能力のある者に委譲すべきだ」と厳しく批判していたロシアの有力ミルブロガー「イゴール・ガーキン」が逮捕された。彼は、プリゴジン免罪でも批判していた。
これにより、政権に批判的な戦争支持の主戦論者まで弾圧することになり、政権基盤が徐々に脆くなっているようである。
そのプリゴジンは、戦闘員を前に「我々はしばらくベラルーシに滞在することを決めた」と宣言し、ロシアによるウクライナ侵略の現状を「我々が参加する必要のない恥ずべきものだ」と批判した。そして、ベラルーシで会社を設立した。当分いるようである。
ムーア英MI6長官は、6月24日のプリゴジンの反乱時に、プーチンはプリゴジンとモスクワ進軍を中止する取引を行ったという。そして、中止から数日後、クレムリンに招かれ、プーチンと会談をした。プーチンはプリゴジンに反撃をしなかった。自らの身を守るためにルカシェンコに仲介を依頼したという。
ワグナー軍が滞在するベラルーシでは、ベラルーシ国防省がポーランド国境付近でのワグナーとの共同演習をすると発表した。ベラルーシとロシア領カリーニングラードの間(スバウキ回廊)を繋ぐためにポーランドに侵略する可能性があるという人がいるが、それをするとNATO対ロシア・ベラルーシの戦いになってしまう。
ワグナー軍を警戒して、ポーランドも東部の国境地域にポーランド軍を移動させて、警戒している。これに対して、プーチンはポーランドがベラルーシに侵略すると、ロシアが反撃すると警告した。非常に危ない状況にも見えるようだ。
逆に、ドイツは、ワグナー軍がポーランド侵入なら全面的に反撃を支援すると述べた。NATO対ロシアの全面戦争になる。
プリゴジンの乱の反省で、ロシアの治安組織である国家親衛隊に戦車などの重火器配備を定めた法案可決した。プリゴジンの乱の際、首都を守る軍事力が弱かった反省からの法改正であり、徹底的にクーデター抑止体制を作り、プーチン政権を守りたいようである。
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