英BBCに“黙認”の過去。500人以上に性的虐待加えた「英国のジャニー喜多川事件」

 

性加害を知りながらジャニタレ起用を続けた日本企業の人権軽視

問題を受け、大手企業の間ではジャニーズ事務所の所属タレントの広告への起用を見直す動きも広がる。他方、今回の問題はタレント自身の不祥事とは異なるとして悩む企業も多く、対応は分かれた。

ジャニーズ事務所所属タレントの起用をめぐる主な企業の対応(*6)

■起用せず

  • アサヒグループHD:岡田准一 生田斗真
  • キリンHD:目黒蓮 重岡大毅
  • 東京海上日動火災保険:相葉雅紀

■検討中・未定

  • 明治:相葉雅紀
  • コーセー:目黒蓮

■当面継続

  • 花王:Aぇ!group
  • 不二家:Snow Man
  • 住友金属鉱山:生田斗真

このうち、サントリーホールディングス(HD)は11日、事務所に対し、被害者の救済策や再発防止策を説明するよう、書面で申し入れた。サントリーは、

「納得いく説明があるまでは、新たな契約を結ばない」(*7)

とする。

東京海上日動火災保険は、広告出演などに関する契約を更新しないことを決めた。今年12月の期限を待たずに契約を解除することも検討。同社は、

「いかなる形でのハラスメントも容認できない」(*8)

とする。

日産自動車も、当面は販促物で新たに起用しない。また、ジャニーズの調査報告書と記者会見の内容が日産の「人権尊重に関する基本方針」に反しており「非常に遺憾だ」とコメントした(*9)。

とはいえ、海外のエンターテインメント業界では、人気タレントとCMタレントとの棲み分けがはっきりとし、万が一のリスクを備え、人気タレントはよほどのことがないかぎり大手企業のCMには出演しない。

また、そもそもジャニー喜多川氏の性加害問題など、“もう半世紀も前”からあったと分かりきっていた話。そのことを知ったうえで事務所のタレントを広告に起用する企業もある意味では“同罪”であり、日本企業の“人権軽視”の姿勢が目に余る。

姉のメリー喜多川が周囲に語っていたこと

今回の問題をめぐっては、「パラフィリア」という言葉も取り上げられた。性加害問題について行われた「再発防止特別チーム」の会見時に配布された「調査報告書」では、「本事案の原因」として、以下の4点を挙げている。

  1. ジャニー氏の性嗜好異常
  2. メリー氏による放置と隠蔽
  3. ジャニーズ事務所の不作為
  4. 被害の潜在化を招いた関係性における権力構造

一方、上記の1番目には、喜多川氏の「性嗜好異常」を挙げているのだが、「報告書」にはこうある。

(喜多川氏が)20歳頃から80歳代半ばまでの間、性加害が間断なく頻繁かつ常習的に繰り返された事実は、ジャニー氏に顕著な性嗜好異常(パラフィリア)が存在していたことを強く裏付けるものである

もっぱら未熟な思春期少年を性愛対象としたジャニー氏の性的関心と同意なき性行為の強要が長年続いたことは、被害者の年齢層(中心は13~15歳)がいわゆる小児性愛(13歳以下)に比べ定義上は若干高くなるものの、まさに性嗜好異常の一型とみなすことができるものである

この「性嗜好異常(パラフィリア)」とは、アメリカ精神医学会が作成した診断基準の「DSM-3」で採択された用語で、パラ(=偏った)+フィリア(=愛好の病)という意味。

「異常性欲」や「性倒錯」に代わって使用されることが多い言葉だ。

その特徴は、性的興奮を招く強烈な空想、強い性的衝動、小児もしくは同意しない人を相手とする性的行動の反復が少なくとも6カ月以上継続することなどであり、露出症やフェティシズム、性的サディズムや性的マゾヒズム、窃視症や小児性愛(ペドフィリア)など多岐にわたる(*10)。

喜多川氏の場合、そのうちの典型的な“小児性愛”ということになる。そして、「報告書」では、その喜多川氏の行為について、姉のメリー喜多川氏が周囲に「病気だから」と言っていたことも明らかにされている。

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