物流・運送業界が抱える「2024年問題」を解決するため、いすゞ自動車が打ち出したのは、普通免許でも運転できる3.5トン未満の小型ディーゼルトラックの発売でした。新聞を賑わしたこのニュースを取り上げるのは、メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』著者でMBAホルダーの理央さん。一度に多くの荷物を運べる大型化とは真逆の解決策を打ち出したことについて、顧客の課題への向き合い方として3つの点で優れていると解説。「PMF(プロダクト・マーケット・フィット)」を目指すための学びがあると伝えています。
変化の時代に必要なPMF ~いすゞ自動車に学ぶ成功する新製品市場導入
いすゞ自動車が、「普通免許」で運転できるトラックの発売を、発表しました。
日本経済新聞の9月28日の記事よると、
いすゞ自動車は27日、普通免許で運転できる小型ディーゼルトラックを2024年夏までに発売することを明らかにした。車両総重量を普通免許の条件である3.5トン未満にした。ドライバーの労働時間の規制が強化される「2024年問題」が迫るなか、普通免許しか持たない人でも運転できるようにして人材を確保しやすくする。
とのことです。
2024年問題とは、働き方改革法案の中で、ドライバーの労働時間の上限が課されることで生じる、運送・物流業界の問題を指します。いすゞ自動車の顧客企業の運送業では、ドライバー1人あたりの残業が制限されたり、走行できる距離が減ったりすることが、予想されます。
こうなると、一度にできる限り多くの荷物を運びたい、と考える企業も多くあるはずなので、車両メーカーとしては、「大型トラック・トレーラーを開発しよう!」となりがちです。しかし、今回のいすゞ自動車では逆に、小さいトラックを開発、販売する、と発表したのです。
考えてみれば、顧客企業の運送会社の課題は、「多くの荷物を一度に運ぶ」ことではなく、「荷主の要求通り荷物を運ぶための人員の確保」です。
となると、顧客企業の中で、大型のトラックを運転できる免許を持っている人は、限られているので、普通運転免許を持っている人でも運転できる、小型の車を開発すれば、顧客企業が求める人員の確保の拡大に、繋げることもできる、ということになります。
この事例から学べることは、3つ。1つ目は、顧客が抱える問題を正しく把握すること。顧客が欲しいのは大きいトラックではなく、人員問題の解消です。この顧客課題をどう解決するか、という姿勢でなければ、この発想は出てきません。
次に大事なことは、市場の状況を正しく把握すること。2024年問題によって起こるであろう、顧客課題を正しく把握しています。
3つ目は、顧客課題の解消のために、自社だけができる価値を提供すること。質の良いトラックを開発する、ということだけではなく、1つ目と2つ目の点を踏まえて、「普通免許で運転できれば、免許保有者の幅が広がる」という仮説をしっかりと立てられたこと。
この仮説が立てられれば、営業活動の中で、顧客企業にヒアリングすることで、どれくらいのニーズがあるか、スピードを持って検証できます。
このように、市場(マーケット)を正しく把握し、具体的なニーズを持つターゲット層が持つ、課題を解決できる製品やサービス(プロダクト)を、開発、市場導入することで、製品と市場ニーズがマッチする状態を、PMF(プロダクト・マーケット・フィット)と呼びます──
(本記事は、メルマガ『理央 周の売れる仕組み創造ラボ【Marketing Report】』2023年10月10日号からの一部抜粋です。続きはご登録の上お楽しみください、初月無料です)
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