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世界に漂い始めた「第三次世界大戦」の兆候。ガザ危機で日本と中国が試される理由

パレスチナのガザ地区を実効支配するハマスによるイスラエルへの大規模攻撃が端緒となり、極度の緊迫状態にある中東。イスラエル軍がガザ地区の侵攻に踏み切るのはの確実ですが、その戦火は世界に飛び火する可能性が大きいようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、ガザ危機が第3次世界大戦のきっかけとなりうる危険性を指摘。さらにかような局面から脱するため、日本が果たすべき役割を考察しています。

ウ戦争からパレスチナ戦争に。このまま拡大すれば「第3次世界大戦」勃発へ

ハマスの奇襲攻撃で、イスラエルは、1,300人以上の死亡、3,300人以上の負傷者が出ている。対して、ガザのパレスチナ人の死亡者も増え続けている。

イス軍は、ガザ国境を封鎖して、ほとんどのゲリラを排除した。今後はガザへの侵攻になる。

また、ロケット弾の飽和攻撃を受けて、イス軍は、試験中のレーザー迎撃システム「アイアンビーム」を実戦配備する準備を進めているとのこと。これで、飽和攻撃を阻止したいようである。

しかし、ガザ侵攻をイス軍が行えば、数十万人という犠牲者が出ることになる。

既に、イス軍は、少数の特殊部隊をガザに入れ、偵察活動をしている。

イス軍侵攻のため、期限14日午前中までの24時間以内にガザ北部から南部の住民は避難しろと、イス軍は、ガザ北部の住民にチラシをまいた。これに対して、ハマスは住民に退避をしないように呼びかけている。そして、イス軍は人道回廊も設置したが、ハマスはガザ地区に道路封鎖を敷き、住民の南部への避難を妨げている。

それがなくても、ガザ南部には110万人もいるので、退避をすることは簡単ではない。

国連は「このようなイス軍の対応が人道上破滅的な影響を及ぼさずに行われることは不可能だと考える」とし、通告撤回を求めた。

また、ガザからエジプトに抜けるラファフ国境検問所の横断ゲートをエジプトは、コンクリートブロックで閉鎖した。米国は、米国人などの外国人が国境検問所を抜けられるように交渉していた。

エジプト政府はガザ地区からの米国人避難を拒否し、住民への支援物資輸送が交換条件としているが、合意成立したようだ。物資をガザに入れ、外国人はエジプトに出られるようだ。

現在、約600人の米国市民がガザに滞在しているため、米国は、ハマスとの良好な関係にあるカタールの応援も受けて、交渉していた。

これで、ガザ侵攻が始まる。

レバノン国境でもヒズボラがロケット弾や、対戦車ミサイルでイス軍に攻撃をしている。ヒズボラは、ガザにイス軍が侵攻したら、イスラエルに攻め込むという。

また、イス軍は、アレッポ空港とダマスカス空港に空爆を行い、ダマスカス空港は滑走路が使用できなくなった。

そして、イラン政府は国連を通じイスラエル政府に、ガザ地区へ地上軍を投入するならイランも介入すると警告した。

ヨルダン川西岸では、イス軍と武装したユダヤ人入植者が連携する形で50名以上のパレスチナ人を殺害し、2つの村が事実上破壊された模様であり、ヨルダン川西岸で戦争が始まる可能性やガザの地下に張り巡らされたトンネルを使いハマスがイス軍を翻弄して、この戦争が長期化泥沼化することになりそうだ。

それと、ブリンケン米国務長官は、中国の王毅外相と電話会談して、イスラエルに対するイランやヒズボラなどによる攻撃を防ぎ、ハマスとの戦争が拡大しないよう、中国に中東での影響力を行使するよう促したが、中国はイスラエルのガザ侵攻を止めることが重要だと述べたはずで、影響行使はしないでしょうね。このパレスチナ戦争で世界が二分化するので、無理だ。

この戦争を終わらせるためには、パレスチナ国家をヨルダン川西岸に作り、イスラエルの入植地をヨルダン川西岸に作らないことである。ネタニヤフ首相が、平和交渉を潰したことが、この悲劇につながったことを明記する必要がある。

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「ヨハネの黙示録」を知る国と知らない国の差

どちらにしても、大戦争になることが見えている。イスラエルから日本人を脱出させる必要がある。キリスト教信者の多いポーランドやフィリピンなどは早い段階で脱出するために、軍用機を送ったが日本は遅れている。このため、日本人51人は無料の救援韓国軍用機で脱出している。韓国もキリスト教徒が多い。

やっと、日本は14日になって、C2輸送機2機がジブチに向けて出発させた状態であるし、日本は救援機であるにもかかわらず有料で、ドバイまでしか運ばない。在イス日本大使館はあくまで「希望するならば」というレベルで、テルアビブに残っている日本人は多くいる。聖書の「ヨハネの黙示録」を知る国と知らない国の差が出ている。

イスラエル・ハマス戦争はどこまで拡大するかのか。第3次世界大戦の兆候

今後、イスラエル・ハマス戦争が、どこまで拡大するのかが次の焦点になる。レバノンのヒズボラがイスラエルを攻撃するのは想定済であるが、シリアにいるイラン革命防衛隊が、イスラエルのゴラン高原を攻撃して、イランが戦争に介入すると、中東戦争になる。ここまで想定できることになっている。

イラン国内に、イスラエルが空爆を行い、特に原子力発電所、濃縮ウラン製造施設を破壊すると、これはイランとイスラエルの全面戦争になる。この状況になると、核戦争の危機になる。イランもイスラエルも核を持っている。

【関連】次は“イランの核施設”か。シリアの空港を空爆したイスラエルが狙う「真の標的」

もう1つがガザにイスラエルが侵攻して、多数の住民を殺すと、アラブ諸国もイスラエルとの関係が悪化することになる。そして、世界世論も大きくイスラエルから離れることになる。

すでに、南アフリカのラマポーザ大統領は、パレスチナとの連帯を宣言。この状況の中でグローバルサウスはパレスチナよりの立場を取る国が増えている。

また、世界的にアラブ民族が移住しているので、特に欧米諸国に移住していることから、欧米諸国内でテロ事件が多発することになるし、現時点でも、欧州の各都市では親イスラエル、親パレスチナのそれぞれの支持を訴えるデモが起きている。欧州の分断になっている。

こうなると、世界経済は大きな試練に巻き込まれることになる。

そして、戦争が続くと、次の戦争を誘発する。ブリンケン米国務長官は「数週間以内にアゼルバイジャンがアルメニアを侵攻するかもしれない」と警告した。

イランがこの戦争に参加すると、イエメンやイラクなども戦争に参加して中東全体戦争になり、サウジなどスンニ派諸国も中立からハマス寄りになる可能性もある。

この証拠に、イランのライシ大統領とサウジのサルマン皇太子が電話会議をしている。ロシアは、ハマス寄りであるが、戦争には参加しないが、ハマスに9,300万ドル以上の仮想通貨で援助している。ロシアが陰にいることは確かだ。

次に東アジアでも戦争を誘発すると、世界大戦になってしまう。

このためには、日本と中国は東アジアでの戦争防止のために、話し合うしかない。世界戦争にしないことである。

欧米各国の兵器工場は増産するが、ウクライナとイスラエルに供給する必要から、弾薬などが足りずに、日本の兵器産業にも受注が来るし、鉄鋼などや自動車など、多くの分野での機器が必要になり、戦争地域から遠い、日本にも戦争経済が押し寄せることになる。

日本は兵器などをウクライナに提供すればよいが、直接の提供ができないなら、英国などを経由して、ウクライナに届けることである。

そうしないと、ウクライナ戦争は、まだ数年も続き、続いた分、世界は疲弊することになる。また、各地で戦争が起きることになる。

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経済失速が著しい今だからこそ「説得」容易な中国

また、テロ事件などで政情不安定になる欧米諸国での生産ができなくなることも考えられる。欧米諸国にはイスラム系移民が大量に入り込み、キッシンジャー元国務長官は、ハマスのイスラエル攻撃を祝うドイツのイスラム系移民の光景を見て、「まったく異なる文化、宗教、概念を持つ非常に多くの人々を受け入れたのは重大な間違いでした。なぜなら、それを行うことで各国の内部に圧力団体が生まれるからです」という。

このアラブ系移民を日本は、ほとんど入れていない。クルド系トルコ人を入れているが、多くの問題を起こしている。ということで、イスラム系移民・難民は絶対入れてはだめだ。

そして、戦争経済で活況になるのは、東アジアでの戦争がない平和が続くことである。日本も中国も平和であれば、両陣営からそれぞれ機器の注文が来るので、景気が良くなる。

このため、中国で銀行への取り付け騒ぎが起きるなど中国経済失速時でもあり、この戦争経済で、経済回復できる良い機会だと中国を説得できるはずだ。

次なる世界秩序作りに貢献できる日本の文化

日本は、欧米諸国とは違い、イスラエルへの負の遺産がない。欧米はユダヤ人迫害の贖罪のため、パレスチナの地にイスラエルという国家を人工的に作り、そこにユダヤ人を送り込んだ。このため、そこに住んでいたパレスチナ人達が、祖国を追われたことが始まりである。

しかし、日本は、欧米と同じような価値観を持っている。自由や民主主義や市場経済という普遍的な価値観である。

しかし、この価値観を他国に押し付けることもしていない。戦前は八紘一宇などを日本は押し付けることもしたが、戦後は欧米と同じ価値観を持つだけで、他国に押し付けたことはない。

欧米は、この価値観を多くの国に押し付けている。このため、多くが実情に合わないために、反発されている。

日本の役割は、現地の実情と普遍的価値の両立を図ることで、世界秩序を回復させることであろう。海外青年協力隊などが世界で活躍しているが、他国とは違い、現地に溶け込んでいる。

日本は、現地を「知」と「情」という2つの側面で見る感覚があり、日本も欧米文化を日本化して取り入れてきた。これを他の文化圏でも実行すればよいだけである。

日本は多神教であり、いろいろな考えを取り入れるベースがあり、多様化してきたのである。この考え方が欧米以外の国で必要になっている。

この日本が行って、東南アジアは普遍的価値を取り込むことができたので、大発展しているのだ。これは、東南アジアも仏教文明であり、多神教であることが幸いしている可能性もあるが、日本の工場進出に伴う社員教育が国の文化を変えたことによる。

日本が世界に出ているが、覇権を取ることはできない。覇権には4つの条件が必要になる。軍事力が他を圧倒すること、経済力が他を圧倒すること、文化・思想レベルが他国に比べて高く、その文化・思想を広めようとすること、世界への支配体制を確立していることの4つである。

日本は現時点で、軍事力も経済力も他を圧倒していない。

このため、覇権国になることできない。

しかし、中国のような自由でもなく民主主義でもない独裁国が、覇権を取ると、人間の尊厳を壊し、人間の進化を止めることになる。

ということで、普遍的価値を共有する国が、共同で新しい世界秩序を作るしかないし、より多くの国に普遍的価値を広めることである。

この広めるのに、日本文化が貢献できるはずとみている。米国の政治的混乱、累積債務の多さを見ると、米国は、近々覇権国ではなくなることが確実である。どう、次の世界秩序を作り、運営するのかを考える必要になっている。

さあ、どうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2023年10月16日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Anas-Mohammed / Shutterstock.com

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