それは、まったく意味不明の交換条件の提示でした。朝日新聞はジャニーズ事務所の何を担っていたのでしょう。答えはすぐに判明します。直後、朝日新聞はSMAPのメンバーを使って、朝日「新」新聞のキャンペーンを始めたのです。これについても、わかりやすいジャーナリズムの腐敗として、タイムズ本社の関心が高まる理由になりました。
実は、ニューヨークタイムズとしては、朝日新聞の報道に対しての関心は皆無でした。淡々と、記事にする価値のあるものを記事にするだけです。結局、朝日新聞社にはジャニーズ取材などする気はなく、結論からいえば、今回の騒動が起こるまで、ただのひとりもジャニーズ事務所による組織的な児童虐待について、真剣に記事にすることはありませんでした。
朝日新聞による取材妨害の後に起きたのが、フジテレビによる取材スパイ行為でした。これも実に不思議な話でした。ニューヨークタイムズのチームによって行われたのべ50人ほどの当事者や関係者への数か月の取材の結果、いよいよ記事化するという直前になって、実は日本のメディアもジャニーズ事務所の犯罪を知っているだけではなく、共犯関係にあるのではないかという疑念がNYタイムズ本社内で湧き、記事化する前に確認のためのマスコミ調査をすることになったのです。
(次回配信号に続く)
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