医師不足が深刻な韓国。政府の対策に医師協会が「反対」するのはなぜか?

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韓国はいま「医学部志向」で、幼稚園の頃から目指すクラスもあるほどなのだとか。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では、韓国在住歴30年を超え教育関係の仕事に従事している日本人著者が、韓国政府が医学部定員を1000人増やすという案を推進していることが判明したことによって、変化していくであろう国内の動きを見ています。

韓国が医大定員1000人増やす計画

韓国では医学部志向が気狂いのように繰り広げられていることはこのメルマガでもお伝えしている。幼稚園の段階から「医学部特別組」が編成されるなど尋常とは思えないくらい医学部志向が煮たっている。

そんな中、医大の学生数を増やすことに反対しているのが医者らの団体だ。自分たちの飯のタネが奪い合いになるとでも考えているのだろう。

しかしここへ来て政府が医学部の定員を1000人増やす案を推進していることが13日、分かった。定員拡大は現高校2年生がうけることになる2025学年度大学入試から適用され、詳しい内容は来週発表される予定だ。韓国国内医学部の定員は06年以降3058人に制限されているが、17年ぶりに大幅に増員する改革が進められるわけだ。

13日、朝鮮日報の取材を総合すると、保健福祉部は医大増員規模と拡大方式、年度別拡大日程などを来週公開する予定という。当初、政府は00年に医薬分業で減った医大定員351人(10%)を原状復旧するか、定員の少ない地方国立大医大を中心に500人余りを増やす案を検討した。

しかし、医師不足が深刻で、地方医療は崩壊寸前であり、必須医療(小児科・外科・救急医学科など)分野は志願者がおらず、患者が「救急室をぐるぐる」回って結局受け入れてくれる病院を探せず死亡する事例まで続出していることなどを受けて、大幅に増やすことにしたという。

政府の主要関係者はこの日、「2035年には不足している国内医師が1万人に達するという専門家報告書を受け取った」とし、「医師養成には10年かかる」と話した。2025学年度から1000人ずつさらに採用すれば、2035年に1万人になる。

別の政府関係者は「1000人増員を皮切りに規模をさらに増やすことができる」と話した。高齢化で医療需要が急増し、医師不足がさらに深刻な場合、医学部の増員も1000人より多くなることもありえるという趣旨だ。2020年基準の国内医大卒業者は人口10万人当たり7.2人で、OECD平均の13.6人の56%水準だ。医大卒業者はOECD最下位圏だが、医師の収入はOECD最上位圏だ。

政府は医師不足が深刻な地方の国立大学医学部と小規模医学部を中心に定員を拡大する方針だ。ソウルは人口1万人当たりの医学部定員が0.87人、釜山は1.02人だが、京畿道は0.09人、仁川(インチョン)は0.3人に止まる。成均館(ソンギュングァン)大学医学部はソウル三星(サムソン)病院、蔚山(ウルサン)医学部はソウル峨山(アサン)病院という大型病院で修練できるにもかかわらず、医学部の定員はそれぞれ40人に過ぎない。

しかし、大韓医師協会などは医大増員に強く反対し、ストライキも辞さないという立場だ。大学入試準備生が大挙医大に集まると「医大熱風」がさらに悪化するという憂慮も出ている。医師会などの反発を押しのけてユン・ソンヨル政府が医大生の増員を実行できるかどうか。注目に値する。

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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