精神科の治療において、治療が困難だと判断された場合に「身体拘束」という手段を取ることがあります。拘束をするか否かの判断に「人種差別」が影響を与えている可能性はあるのでしょうか。今回のもりさわメンタルクリニックの無料メルマガ『精神医学論文マガジン』では、本来あってはならない「影響」について研究した海外の論文を紹介しています。
人種差別が「身体拘束」に影響を与えているという研究
精神科医療において著しい不穏や体動があり、そのために治療が困難で、患者の生命に危険が及ぶおそれが切迫している場合等に、身体拘束という手段が選択されることがあります。
その要件として、「切迫性」「非代替性」「一時性」の3つの要件を満たすことが必要とされており、日本でも身体拘束ゼロに取り組んでいる精神科病院があります。
今回は、人種差別が身体拘束のあり方に影響を与えているのではないかという内容の研究をご紹介します。
身体拘束の使用頻度・期間に関する人種差別
12歳以上の入院患者(29,739人)が対象となり、人種と身体拘束の頻度・期間との関連を調べました。
結果として、以下のことが分かりました。
- 人種と身体拘束の有無との間に関連を認めました。(白人との比較でオッズ比で示すと、黒人:1.85倍、混血1.36倍)
- 身体拘束の期間についても、黒人で拘束期間が長くなっていました
要約:『身体拘束の頻度や期間に、人種の影響を認める可能性がある』
身体拘束の必要性の判断に、原則に基づく適応以外の要素が、影響している可能性が考えられました。
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