東京五輪“誘致”の買収工作費にも使われた「官房機密費」という自民が“自由に出し入れできる”カネ

 

「想い出アルバム作戦」「ともだち作戦」

当時のIOCの倫理規定では、大会の招致について、「立候補都市に関わるすべての人は、五輪関係者へいかなる贈与も行ってはいけない。五輪関係者はいかなる贈与も受け取ってはならない」と定めていた。

このルールは改定を重ねた今も、残っている。しかしながら、かつてIOC関係者の間では、贈答品の上限が「200ドル」とされていた時期がある(*3)。

1998年冬季五輪を開催した長野市が、招致時に当時のIOC会長に市場価格で200万円相当の日本刀や日本画を贈ったり、つづく、2002年冬季大会招致では米ソルトレークシティー側とIOC委員との間での不正な金銭の授受などが発覚。

これら一連の不祥事を受け、IOCは1999年に倫理委員会を新設し、贈与の禁止や立候補都市への委員の訪問を禁止する規定を作るも、一方で、当時の招致ルールでは、高額でない慣習的な範囲での贈り物は認められていたというのが実情だ(*4)。

馳氏の2013年4月1日のブログには、

15時20分、官邸へ。菅官房長官に、五輪招致本部の活動方針を報告し、ご理解いただく。

と記し、「想(おも)い出アルバム作戦」などと方針を列挙していた。

一方、ブログには「ともだち作戦」という記載も。こちらは、馳氏の発言からは分からないが、猪瀬直樹氏の都知事時代の庁ホームページ「知事の部屋」には、13年1月に「重要なのは友達作戦と絆作戦」との記述がある。

友達作戦とは、国家として、民間会社の人の取引関係も含めてIOC委員に迫っていって、1票ずつ獲得していく。国家総力戦だ。

との記載が。

2013年は五輪開催地が決定された年であり、招致レースは終盤戦に突入していた。そのようなさなか、「想い出アルバム作戦」「ともだち作戦」が展開されていたのであり、2016年大会招致に失敗し、なりふり構わない招致活動を行っていた様子が見て取れる。

機密費とは?

機密費という表現は、正式には存在しない。政府は「機密費」という言葉を避け、「報償費」と言ったり、「官房機密費」を「内閣官房報償費」、外交機密費を「外務省報償費」と呼んできたりした。

その背景には、憲法学者によると、日本国憲法は、戦力の保持を認めず、秘密の政治・外交を容認しない精神を持ってとし、そして国家の活動には基本的に「機密」は存在せず、「機密費」もあり得ないとの説明が以前はなされてきた。

機密費のうち、内閣官房報償費は、国政の運営上必要な場合に、内閣官房長官の判断によって支出される経費。会計処理は内閣総務官が担当。

支出には領収書が不要であり、会計検査院による監査も免除され、原則使途も公開されず、そのため不透明な支出について疑問の目があった。かつての旧首相官邸では、官房長官室に大きな金庫があり、常に数千万円の現金が入っており、使用した翌日には事務スタッフが現金を補充する仕組みであったとのこと(*5)。

一方、外務省報償費とは、外交政策に必要な場合に支出される費用のこと。とくに外務省は、すべての省庁の中で最も予算が多く、年におよそ30億円以上計上されているという。

内閣官房報償費については、1947年から予算が計上されるように。政府は1998年に支出の基準(内規)を設けたが、2000年には写真週刊誌「FOCUS」(現在は休刊)が政治評論家の極秘リストとされるメモを入手したと報じた。

外務省報償費は、2001年に外務省機密費流用事件が発覚した。外務省の要人外国訪問支援室長に在任していた職員が9億8,800万円にのぼる官房機密費を受領していたうちの約7億円が詐取し、そこから競走馬14頭、競走馬種付け権、ゴルフ会員権、高級マンション、女性への現金に浪費していた。

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