ウクライナ戦争での勝利が見えたプーチン。それでも露の「戦略的敗北」が確実なワケ

 

私は、何を言っていたのか?

鳥人さんのメールに戻ります。

「ロシアの負けは決まっている(戦術的成功、戦略的失敗)」と仰っていた北野さんのコメントを希望にしていたのですが、今後の展開はどうなると予想されていますか?

そうです。私は、2022年2月24日に戦争がはじまる前から、「ロシアがウクライナに侵攻すれば、戦略的敗北は不可避」と書いてきました。

しかし、それは「ウクライナ軍が勝つ」という意味ではありません。

たとえば、『現代ビジネス』2022年2月16日(@つまり侵攻がはじまる8日前)の記事。タイトルは、『全ロシア将校協会が「プーチン辞任」を要求…! キエフ制圧でも戦略的敗北は避けられない』です。

後半「キエフ制圧でも戦略的敗北は避けられない」とはどういう意味でしょうか?普通に考えたら、「キエフを制圧したら勝利ではないのか?」と考えませんか?そこで、次のフレーズ、【 戦略的敗北 】が重要になってきます。

戦術的勝利が戦略的敗北につながるとは?

皆さん、仲の悪いAさんとBさんをイメージしてください。Aさんはある日、Bさんを突然襲って、ボコボコにしました。Bさんは血まみれで道路に倒れていいます。Aさんは、「俺はBに勝った!」といいました。Aさんは、嫌いなBさんをボコすことで、【 戦術的勝利 】をおさめたのです。しかし、この【 戦術的勝利 】がAさんの苦しみの原因になります。

まずAさんは、傷害罪で逮捕されました。AさんがBさんをボコしたことは、ニュースに出てしまいました。そして、取引先から、「あなたの会社とはもう取引できない」と関係を切られてしまいました。「犯罪者の会社からはもう買わない!」とお客さんの数は激減しました。

Aさんは、確かにBさんをボコして【 戦術的勝利 】をしました。しかしその結果、前科者になり、取引先と顧客を失い、貧乏になり、社会的に孤立することになったのです。そう、Aさんは、嫌いなBさんをボコしたことで【 戦略的敗北 】を喫したのです。

ここまで、ご理解いただけたでしょうか?

プーチンとロシアの【 戦略的敗北 】

この話がわかれば、私の言いたいこともご理解いただけるでしょう。

現状が続いていけば、ロシアは、クリミアとルガンスク、ドネツク、ザポリージャ、へルソンを支配したまま、停戦にもちこめるかもしれません。そして、ロシアは2022年9月に、ルガンスク、ドネツク、ザポリージャ、へルソンを、一方的に併合しています。だからプーチンは、「ウクライナ特別軍事作戦で、ロシアの領土が増えた!だからロシアの勝利だ!」と宣言することはできます。しかし、それはしょせん【 戦術的勝利にすぎない 】ということです。

ウクライナ侵攻によって、ロシアとプーチンに何が起こったか、少し振り返ってみましょう。

国際的に孤立した

2022年3月2日、国連総会はロシア非難決議案を採択しました。これを支持した国(つまり反ロシア国)は、141か国。これに反対した国(つまり親ロシア国)は、わずか4か国でした。ベラルーシ、北朝鮮、シリア、エリトリアです。ロシアの位置づけは、これら「ならず者国家の親分」です。

プーチンは、「戦争犯罪容疑者」になった。国際刑事裁判所(ICC)は2023年3月、プーチンに「逮捕状」を出しました。ウクライナの子供たちをロシアに誘拐した容疑です。そうプーチンは、ICCの「戦争犯罪容疑者」になったのです。

これでプーチンは国際刑事裁判所の加盟国124か国に行けなくなりました。行けば逮捕されるからです。ちなみにプーチンは、2度と日本にこれません。日本はICCの加盟国なので、来日したプーチンを逮捕する義務があるからです。

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