プーチンの近視眼的に過ぎる「戦術脳」
NATOが拡大した
「ウクライナ侵攻」の理由の一つは、「NATO拡大を阻止すること」でした。ところが、プーチンはNATO拡大を阻止するどころか、NATOを拡大させてしまいました。ウクライナ侵攻に恐怖した中立国のフィンランド、スウェーデンがNATO加盟を決めてしまったからです。
フィンランドは2023年4月、NATO加盟国になりました。スウェーデンについては、トルコやハンガリーの反対でてこずっていますが、近い将来加盟するでしょう。
ロシアは、「旧ソ連の盟主」の地位を失った
プーチンは、旧ソ連圏を「ロシアの勢力圏」と考えていました。ところが、ウクライナ侵攻でロシアは、「旧ソ連の盟主」の地位を完全に喪失しました。旧ソ連各国の動きを見ると、
- ウクライナ、モルドバ、ジョージアが、「EU加盟申請」をした
- アルメニアは、2022年、2023年に、アゼルバイジャンと戦争をした。この時、ロシアを中心とする軍事同盟CSTOは、アルメニアを助けなかった。それでアルメニアは、CSTOから脱退する意向を示している
- 中央アジア諸国(カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン)は、ロシアを捨てて中国についている。昨年5月「中国中央アジアサミット」が開かれ、「中国中央アジア運命共同体」の創設が決まった。
現状「ロシア圏」にとどまっているのは、ベラルーシだけでしょう。
ロシアは、中国の属国になった
ウクライナ侵攻の結果、最大顧客だった欧州がロシア産原油、天然ガス、石炭を買わなくなりました。またロシアは、SWIFTから追放され、ドル、ユーロでの貿易が困難になりました。
結果、ロシアは、原油、天然ガスを中国に、大量に激安で【 人民元 】で輸出するようになりました。そう、ロシアは、人民元圏に組み込まれ、中国の属国と化したのです。
どうですか皆さん?ロシアは、完全に戦略的に敗北しています。そしてこうなることは、プーチンがウクライナ侵攻を宣言する前からわかっていたことなのです。
戦術脳と戦略脳
というわけで、ロシアが現状維持で停戦を実現したとしても、ロシアの【 戦略的敗北 】は決定済みなのです。
ちなみに最近、「中国が勝つのではないですか?」という質問が増えています。長くなるので、これについては別の機会に。
しかし、皆さん思い出してください。1940年、ヒトラーは1カ月で大国フランスを降伏させました。それを見た日本人の多くは、「ナチスドイツ勝つんじゃね?」と思った。それで、日独伊三国軍事同盟締結という大失敗を犯したのです。
今、「中国が勝つんじゃね?」と主張している人たちも、当時「ヒトラー勝つんじゃね?」と主張していた人と同じと言えるでしょう。
日本も、「満州事変」や「真珠湾攻撃」など【 戦術的大勝利 】が【 戦略的敗北 】につながる例がありました。
「戦術脳」は、短期的、近視眼的です。「戦略脳」は、長期的、大局的です。
30年代、40年代の日本の指導者は、「戦術脳」だったので、敗北したのです。今の指導者は???
「戦術脳」」と「戦略脳」。これは非常に重要なテーマなので、本を出すことにしました。皆さんも、成功と繁栄をもたらす「戦略脳」を手に入れてください。
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