警察が「原因究明の支障」に。羽田JAL機衝突事故で業界団体が緊急声明を発表したワケ

 

あまりに過密。山手線並みの発着数

今回の事故をめぐっては、羽田空港が世界有数の“過密状態”であることを、改めて浮き彫りにした。

国際空港評議会(ACI)によると、羽田空港は1時間あたり最大90回着陸できる。しかし、これは1分間に1.5本の飛行機が離陸、もしくは着陸している計算。

英航空情報会社OAGの「世界の混雑空港ランキング」では、羽田空港は2023年に世界3位。

2023年の羽田空港の座席提供数は世界3位

 

  1. アトランタ国際空港(アメリカ) 座席数 6,122万席
  2. ドバイ国際空港(UAE) 5,650万席
  3. 羽田空港(日本) 5,269万席
  4. ヒースロー空港(イギリス) 4,937万席
  5. ダラス・フォートワース国際空港(アメリカ) 4,808万席

 

OAG調べ

このランキングは、空港利用者を、空港に就航した旅客機の「提供座席数」の合計で算出される。

国交省によると、羽田空港の羽田空港の年間の発着枠は約49万回。しかし、1993年度は約19.6万回。滑走路の増設などもあり、18年度には約45.5万回となり、1日あたり平均1,248回に達した。

これは2、3分おきの発着であり、「JR山手線並み」(*5)だ。国交省の担当者は、

「管制官1人あたりの取り扱い機数が増えているのは事実」(*6)

とする。

事故の原因究明に大きな支障をきたしてきた警察

事故後、1月3日付で国内の航空機事故の撲滅を目指す「航空安全推進連絡会議」(東京都大田区・永井丈道議長)は、運輸安全委員会による事故調査が何より優先されるべきであり、通例となっている警察の刑事捜査が優先されるべきではないとする「緊急声明」を出す。

声明では、これまで日本国内で航空機事故が起きた場合は、警察が事故原因の特定を目的として捜査することが通例となってきたために、それが事故の原因究明に大きな支障をきたしてきたと指摘。

日本が国際民間航空機関(ICAO)に加盟することからすれば、世界的な統一ルールが考えられる事項についてICAOが制定した国際民間航空条約の附属書「航空機事故及びインシデント調査に関する標準と勧告方式を定めた第13附属書」(ANNEX13)の考えに基づき、航空機事故の原因を特定して再発防止に努めるべきと強調。

さらに運輸安全委員会の事故調査結果が、刑事捜査や裁判の証拠に利用されてきたとも指摘し、そのような行為は国際民間航空条約の規定から逸脱しているとした(*7)。

航空安全会議は航空会社の労働組合など42団体が加盟。1966年に発生した航空機の連続事故をきっかけに設立された。

引用・参考文献

(*1)「『ナンバーワン』海保機誤解の見方朝日新聞 」朝日新聞 2024年1月5日付朝刊 27項

(*2)朝日新聞 2024年1月5日

(*3)朝日新聞 2024年1月5日

(*4)朝日新聞 2024年1月5日

(*5)高橋豪・細沢礼輝・土舘聡一「発着2、3分おき 山手線」朝日新聞 2024年1月9日付朝刊 2項

(*6)高橋豪・細沢礼輝・土舘聡一 2024年1月9日

(*7)「羽田空港事故『刑事捜査が優先されるべきでない』『報道・SNSの憶測やめて』 業界団体が緊急声明」弁護士ドットコムニュース 2024年1月5日

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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