1月2日に羽田空港で発生した、日航機と海上保安庁の航空機との衝突事故。この事故に関して、航空会社の労働組合などが加盟する「航空安全会議」が緊急声明を発表したことが大きく報じられました。なぜ同会議はこのような声明を出すに至ったのでしょうか。今回のメルマガ『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』では著者の伊東さんが、二度と起きてはならない事故の原因を探るとともに、航空安全会議が緊急声明を発出した背景を解説しています。
「ナンバーワン」認識の食い違いか。羽田衝突事故の原因と航空安全会議が緊急声明発表の背景
羽田空港で日航機と海上保安庁の航空機が衝突・炎上した事故から9日で1週間。しかしながら、さまざまな疑問点もいまだ多く、関係機関の調査や捜査がつづく。
事故は2日午後5時47分ごろ、札幌発の日航516便エアバスA350-900型が、C滑走路に着陸した着後に発生。
滑走路には、能登半島地震で支援物資を搬送するためにいた海保機ボンバルディアDHC8-300型「みずなぎ1号」がおり衝突、約1キロ先で停止した。
日航機の乗客乗員379人は3カ所から脱出シューターを使い約18分間で全員脱出。他方、海保機は副機長ら乗員5人が死亡、機長が重傷を負った。閉鎖されたC滑走路は機体の撤去が完了後、8日に運用を再開する。
しかし閉鎖の影響により、7日までに日航と全日空の国内線で計1,200便以上が欠航、20万人超に影響が出た。
全日空は8日以降、羽田発着の欠航は解消する見込みであったが、日航は8、9日も機材繰りの問題で大阪や福岡を結ぶ路線を中心に欠航を決めた便が。
事故後、羽田にある4本の滑走路が一時すべて閉鎖し、2日夜にC滑走路を除く3本は運用を再開した。警視庁は業務上過失致死傷容疑を視野に捜査を進めている。
海保機が「ナンバーワン」を拡大解釈か
事故をめぐっては「ナンバーワン(1番目)」という管制官の言葉を海保機の機長が誤解した可能性が浮上。
元機長で航空評論家の内藤一さん(71)は朝日新聞の取材に対し、海保機がJAL(日本航空)機に着陸許可がおりていたことを認識していなかった可能性があるとしたうえで、
「海保機に勘違いがあるとすれば、『ナンバーワン』という言葉では」(*1)
と指摘。
「この言葉によって海保機のパイロットが滑走路に入るのを急いだ可能性がある」(*2)
と強調する。
あるいはJAL元機長の八田洋一郎さん(75)も、
「海保機のパイロットが『ナンバーワン』という言葉を聞き、管制から着陸許可まで出たと拡大解釈してしまったのではないか」(*3)
とする。
八田さんによると、パイロットは管制官の指示通りに動かなければならないとし、通常、管制官が出発機に「ナンバーワン」と伝えれば、それは「離陸の順番が1番目」を意味するという。
しかし今回、管制官は海保機に対し、滑走路停止位置までの走行しか指示してはいなかった。にもかかわらず、海保機は滑走路に入り、
「指示通りに動かなかった海保機のパイロットに誤認識があったとみられる」(*4)
とする。
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