日本は新卒一括採用で、「よーいどん!」と同期内競争の火蓋が切られ、30代になると、順調に昇進する人と一般社員にとどまる人に枝分かれします。やがて昇進したグループでも、部下がいる人といない人、結果を出し続ける人と結果を出せなくなる人、役職定年になる人ならない人など、同期内格差が生まれ微妙な関係になる。
さんざんけしかけ、走らせ、持ち上げ、ある日突然ハシゴを外す――。まったくもってせっそうのない「会社」に会社員は踊らされ、その会社員としての「賞味期限」が定年よりかなり前の「50歳」であることを、件の数字は物語っているのです。
同時にそれは、メディアが騒ぎ立てる「1に賃上げ!2に賃上げ!3、4がなくて5に賃上げ!」の対象から外されていているという、厳しい現実でもあります。
私はこれまで「50歳過ぎたら、会社を利用せよ」と言い続けてきましたが、「まだ賃金があがる可能性のある」40代のうちにセカンドキャリアを具体的にイメージした方がいいかもしれません。
ただ、今回の速報値では少々気になる点がありました。
どういうわけか、大卒・55歳以上の平均月給が、軒並みあがっていたのです。「大卒・55~59歳」1.6%増、「大卒・60~64歳」3.5%増、「大卒・65~69歳」11.5%増、「大卒・70歳~」10.5%増といった具合です。
2022年の賃金構造基本統計調査では、50代後半で1.2%増以外は、0.4%減、6.0%減、12%減と軒並みマイナスでしたので、もし、今回の増加率が単なる数字のマジックではなく「シニア社員を使わないと会社は回らん!」ということに会社側が気づき、評価方法を変えたり、役職定年を辞めたりした結果の数字なら、セカンドキャリアのあり方も変わってくるかもしれません。
ちなみに、調査対象は「一般労働者」。役員などは含まれていません。
いずれにせよ、繰り返し書いてるとおり、50歳以上の暗黙知を評価し、彼ら彼女らの可能性を信じ、能力発揮の機会がある企業しか生き残れません。非正規雇用だけでなく、シニア社員までを「安い労働力」として冷飯を食わせるのは、さっさとやめて「人の可能性を信じる」健全な経営をしていただきたいです。
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