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庶民では買えない価格の韓国マンションが「不良建築」だらけの残酷な現実

マンションの「不良骨材」を取り除くためのシステムに「相当な弱点」があることが明らかになってしまった韓国。今回、無料メルマガ『キムチパワー』の著者で韓国在住歴30年を超え教育関係の仕事に従事している日本人著者が、現在の韓国マンションの現実について紹介しています。

マンション「不良骨材」非常事態

25日午後2時頃、A大型建設会社のソウル再開発団地の工事現場。レミコン(生コン)車両が入り口に入るや現場の管理者が濾し網に骨材となっているコンクリートを大きなひしゃく一杯を入れ、ホースで水を撒き始めた。コンクリート原料のセメントが水に流されると、管理者は濾し網を振って骨材の中にレンガの破片など異物がないか綿密に調べる。

この現場では、生コン各社が車20台に1台の割合でコンクリートを洗い、セメントに混ぜる骨材の品質を確認するという。コンクリート品質不良の憂慮が大きくなっている韓国だが、骨材業者の管理が依然として不十分だという憂慮からだ。

実際、「不良骨材」を取り除くための政府の品質検査システムに相当な弱点があることが明らかになった。昨年4月、韓国土地住宅公社(=LH)の仁川黔丹(インチョン・コムダン)新都市アパート地下駐車場崩壊事故以後にも管理・監督システムがまともに作動していないのだ。

29日、国土交通部とLHが共に民主党のキム・ビョンギ議員室に提出した資料によると、黔丹(コムダン)崩壊事故当時、現場に骨材を納品した9業者全てが昨年国土交通部の品質定期検査で「正常」判定を受けていた。9か所中4か所は事故前の2022年12月、5か所は事故後の昨年7~8月に検査を受けていた。

黔丹事故に対する調査報告書と精密安全診断では、駐車場崩壊の原因として鉄筋漏れ(鉄筋を設計通りに使わないで適当にごまかして少なく使う)、コンクリート強度の異常(コンクリート材をまともに使わないで砂などを多くして適当にごまかす。経費節約のため)とともに骨材品質の異常(一度使った骨材などを使用)が指摘されている。

骨材はセメントとともにコンクリートの最も重要な原料だ。廃コンクリートをリサイクルした循環骨材は品質が低く、住宅には通常使わない。すなわち、9つの骨材メーカーのうち、一部が不良骨材を納品した可能性があるが、政府の検査システムはこれを摘発することができなかったのだ。彼らは不意に行われる随時検査対象からも除外されていた。

A社は最近、全国の骨材野外積場50か所を対象に自主検査に乗り出した。異物の搬入を防ぐ区分け設備で問題点が発見された忠清南道のある業者からは骨材の需給を直ちに中断した。A社の現場品質管理者は「現場で水で洗いながら不良骨材を捜し出すのは限界がある」として「採取や生産段階から骨材業者に対する管理・監督を強化しなければならない」と話した。

さらに大きな問題は、全国の工事現場で自然採取骨材に比べて相対的に品質が低い選別破砕(建設現場の岩石を割って使用)および循環骨材の使用が増えているという点だ。国土部によると、昨年生産された全体骨材のうち、このような低品質骨材の割合が61.3%(1億3648立方メートル)に達する。20年の50.1%(1億2309万立方メートル)比11.2%ポイント高くなっているわけだ。

黔丹事故当時、事故調査委員長を務めた湖西大学建築土木工学部のホン・ゴンホ教授は「鉄筋に劣らず建物安全に重要なのが骨材品質」とし「今からでも徹底した品質管理をしなければならない」と指摘している。

新築のマンションが崩壊したり壁を伝って水が漏れたりという事態がいくつも重なって発生しているため、今、韓国では最近建てられた新築のマンション(韓国式にはアパート)に入居するときに「いよいよ新しい家に入れる」というウキウキ感よりも「このアパート、不良建築で作られていないだろうな」という不安、疑心のほうが先に立つような事態となっている。それでもソウルのアパートの価格はあまり下がっていない。普通の
人が普通の会社で普通に一生働いていても絶対に買えないような値段になっている。

ソウル中心部などでは30億ウォン(だいたい3億円くらい)以上だし、ソウル郊外でも10億ウォン以下というのはあまりないはず。今現在の価格から50%以上下落してもなかなか庶民には買えないほど高いものになっている。しかもこんな不良建築では入居する側としてはたまったものではない。(東亜日報ベース)

image by: trabantos / Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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