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「パルワールド買収×ゲーム部門1900人リストラ」のMicrosoftは、世界のゲーム業界をどう“書き換え”ようとしているのか?

1日現在で総プレイヤー数が1900万人を突破する世界的大ヒットも「ポケモンにデザインが酷似している」と賛否両論を巻き起こしている、モンスター育成サバイバルクラフトゲーム『パルワールド(Palworld)』。そんな話題沸騰中のパルワールドの開発・運営元で、仮想通貨取引所・コインチェック創業メンバーの溝部拓郎さんが代表取締役をつとめる「株式会社ポケットペア」を、米IT大手マイクロソフト(MS)社が買収を試みようとしていると9日に報じられました。一方、そのMS社はゲーム部門の1900人を解雇する、とも報道されています。メルマガ『記野式: サクッと!ゲーム業界講座』の著者でゲームアナリストの記野直子さんは、自身のメルマガでMSをめぐる2つの話題を取り上げ、パルワールドが今後PlayStation向けに発売されるか否かを予測しつつ、ゲーム部門の2000人近い大量解雇など、いま大転換期にあるMS社の戦略を分析しています。

『Palworld(パルワールド)』がMicrosoftブランドに?

発売から2週間も経っていない2月1日の段階で1,900万本の売上を達成している『Palworld(パルワールド)』ですが、株式会社ポケモンから「今後調査して適切な対応を取って行きます」とのコメントが出たところで、次のニュースはなんじゃろか?と思っていたところ、別の意味で驚きの情報が入ってきました。

なんと、Forbesによると、Microsoftがこの『Palworld(パルワールド)』の開発元であるポケットベアの買収を試みているということです。

マイクロソフトの『パルワールド』買収試み、もはやほぼ確実に(Forbes JAPAN)

『Palworld(パルワールド)』は現在Steam、Xbox One、Xbox Series X|Sでアーリーアクセスとして発売されており、XboxではXbox Game Passに対応しています。前出した2月1日付けの1,900万本の売上のうち700万本はXbox Game Pass経由だったことも明らかになっており、Microsoftとポケットベアがいい関係であることは間違いないです。

Forbesによれば、ポケットベアはXbox Game Passへの配信にあたりMicrosoftから前払い契約料(MG)を受け取っており、この予想外の大ヒットを受けてMicrosoft側は「Xbox側の取り組みとしては、株式会社ポケットペアと協力し、Xboxでプレイできる『Palworld(パルワールド)』のサポート体制を強化しています。」と異例の発表をしていました。

『Palworld(パルワールド)』のPlayStation向けの展開は現在検討中とのことですが、これによりPlayStation向けには発売されないだろうな、と思ったあなた、そうじゃないと思われますよ。MicrosoftはもはやXboxのハードを売るためにコンテンツを増やしているわけではないと考えられるからです。

いずれにしてもこの買収劇の行方は引き続きレポートしますね。

Microsoftのレイオフとパッケージゲームの斜陽

1月25日(現地時間)にMicrosoftがゲーム部門で1,900人の人員を解雇するとのニュースが飛んできました。買収したActivision Blizzardの従業員が中心とみられるとのことでした。

もちろん、2つの会社が一緒になるわけですからダブっている人員が解雇されることは予期できたのですが、それにしても1,900人ってものすごい数ですよね?

蓋を開けてみれば、Xbox本体、Bethesda、Activision Blizzard全体での人員削減とのことで、カスタマーサービスから開発までMicrosoftのゲーム事業のさまざまな分野に影響を及ぼすとのことでした。

なかでも、衝撃的だったのは「Xboxはパッケージゲームの小売店への流通専門部署を閉鎖した」と報じられていることです。これは、Microsoftがパッケージゲーム販売を停止したということではないのでご注意を。部門を縮小した、またはアウトソーシングへ移行するとも考えられます。

現在、ほとんどのAAAタイトルはパッケージとデジタルダウンロードの両方でリリースされていますが、Niko Partnersによれば、最近のXboxではAAAタイトルの中には売上本数の80%以上がパッケージではなくデジタルダウンロードであるとのこと。また、昨年6月Circana(旧NPD)のアナリストMat Piscatella氏は、今後数年のうちにコンソール向けのデジタル専用リリースが一般的になるだろうとも述べています。

Microsoftがパッケージに注力する必要性があまりなくなったと捉えるべきかもしれません。現実に昨年10月に発売された『Alan Wake 2』や本年5月に発売されるXboxの『Senua’s Saga: Hellblade II』はデジタルダウンロード専用です。

※『記野式: サクッと!ゲーム業界講座』2024年2月10日号の一部を抜粋。その他、同号では以下のさまざまな話題も掲載しています。初月無料でお読みになりたい方はぜひご登録下さい。

記野式: サクッと!ゲーム業界講座』2024年2月10日号目次
記野式まえがき:SVODのアップデート
1.Amazon Prime が有料会員でも広告が入るって!
2.Netflix が WWEの2025年からの独占権を取得
3.Netflixを追い上げるはずだったDisney + は?
4.記野式:まとめ

イギリスソフトランキングTop10(2024年第5週:1月28日~2月3日)

Newzooの2024年ゲーム業界トレンド展望
1.2024年は引き続き成長傾向か
2.2024年はゲーム各社にとってどんな年か
3.サブスクは低迷期へ
4.プレミアムゲームへの回帰
5.モバイルゲームからの転換
6.あらたなモバイルアプリストアの出現か
7.生成AIがゲーム開発を効率化するか

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中国市場アップデート
1.中国当局が規制を白紙撤回!
2.海外製ゲーム32タイトルを承認

VR/MRのお話
1.Apple がMR(Mixed Reality)の新デバイス「Vision Pro」を発売
2.PlayStation VR2 アップデート
記野式:あとがき

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image by: Agustin Acosta / Shutterstock.com

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青山学院大学文学部卒業。日産自動車株式会社を経て、ゲーム好きが高じゲーム業界へ転身。コナミ株式会社、株式会社バンダイ、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントにてゲームソフトの海外展開、ゲームソフト発キャラクター展開などに従事。2007年よりカイオス株式会社代表。

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