日本人はもっとギリギリに立て。世界的建築家・安藤忠雄は逆境をどう乗り越えたのか?

Hangzhou,,China,:,Jan,2018,-,Tadao,Ando’s,Liangzhu,Village
 

日本を代表する建築家の安藤忠雄さん。いまや彼の建築物は多くの人々を魅了していますが、それまでは「負け戦」の連続だったそうです。今回のメルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、負けた時に自分に問うべきこと、分析すべきことを、ウシオ電機創業者・牛尾治朗さんとともに語った対談を紹介しています。

建築家・安藤忠雄が「常にギリギリ」の状態に身を置けと言ったわけ

日本を代表する建築家・安藤忠雄さん。多くの人々を惹きつけてやまない、その比類ない建築が世に知られるまでは「負け戦」の連続だったといいます。

なぜ度重なる逆境を乗り越えてこられたか、自身の勝負哲学を語っていただきました。

※対談のお相手は、ウシオ電機創業者・牛尾治朗さんです(当時)。

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〈牛尾〉
あなたは負けた時に、なぜ負けたかということを徹底的に分析して次に生かしているそうですね。自分がなぜ負けたか、相手のどういうところがよかったかというのを分析して、努力してそれを自分のものにしていると。そういうところはすごく素晴らしいと思うんです。

〈安藤〉
コンペには日本はもちろん、パリやニューヨークやロンドンでもよく参加するんですけど、美術館なんかの公共建築はほとんどコンクール・コンペなんですね。ですから大体200人くらいの参加者の中から経歴や実績で10人くらいに絞って、その人たちに絵や模型を作らせて競うわけですが、まぁよく負けるんです。

けれども、負けてから相手の作ったものを研究すると、やっぱり相手のほうがわれわれ以上にいろんなことを考えていることに気づくわけです。相手に比べたらやっぱり努力も足らん、創造力も足らん、次はこの部分はこういうふうにうまくやらなければいかんなと。そういうふうに、いろんなことに気づいて少し実力がつくけれども、次のコンペでもまた負ける。また少し実力がついて、それでもまた負ける。だけどやっていくうちにいろんなことを覚えて、そのうちに勝つわけです。

ところが、勝つと当然相手の研究はしないですね。これはまずい。勝った時にも相手のことを研究すればもっといいわけですけれども。

〈牛尾〉
なるほど、負けた相手の作品も研究しろと。

〈安藤〉
そうです。だけど大体しない。勝っても負けても、相手を研究して自分たちのまずかったところを集めていくと、次の機会にもっと役立つんです。

この10数年、日本は世界から駄目だ、駄目だと言われ続けていますね。しかし、1980年代に欧米の講演会に行った時に向こうの人は、日本の企業のあり方も、社会のあり方も、そして教育のあり方も、全部素晴らしい。そして、いかに日本に学ぶかが一番大きな課題なんだ、と言っていたんです。

その結果、日本と欧米の立場は逆転しました。それでこの10数年は、アメリカでもヨーロッパでも、日本はどうなっているのか、いつ立ち上がるのかと。いまの日本は、企業のあり方がまずい、教育はもうまったくまずい、何もかもまずいと言われているんです。

〈牛尾〉
おっしゃる通りです。

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