日本人はもっとギリギリに立て。世界的建築家・安藤忠雄は逆境をどう乗り越えたのか?

 

〈安藤〉
でも、そうは言われながらも、実は日本人はそれほどレベルの低い民族ではないと僕は思っているんですね。

1995年の阪神淡路大震災の日に、僕はちょうどロンドンにいたんです。次の日に日本に帰ってきて被災地を見た時に、これはもう復旧も復興もとんでもないと思いました。

ところが、半年くらいの間に倒れた高速道路は起こし、新幹線は走らせ、倒壊した建物もある程度整理ができて、日常生活にはほとんど問題がないくらいまで回復させました。この姿を見て、日本人はやっぱりいざとなったらすごいなと実感しました。

緊張感を持ち、企業と行政と民間人が垣根を越えて力を合わせると、すごい力を発揮する。ギリギリの状態まで追い込まれて本気を出したら、日本人はやっぱり立ち直るんだなと思ったんです。

ですから、世界中から大変だと言われながら日本がなかなか立ち直れないのは、まだ結構余裕があるからだと思うんですね。余裕があるから緊張感も出ないんです。

〈牛尾〉
なるほど、おっしゃる通りです。

〈安藤〉
僕自身も、最初からチームは小さい、学歴はない、社会的ネットワークもないという状態からスタートしましたから、とにかく自分の力だけでやるしかなかった。

そのためには、負けても決して諦めないように、精神的に頑丈でなければならないし、体力もできたら30代のままで75歳くらいまで仕事ができるように鍛えておかなければいかんと。その気持ちでずっとやってきましたから、負け戦もそれほど気にならずにきたんです。

ですから、日本人はもっとギリギリの状態に置かれているほうがいいと思うんです。

〈牛尾〉
同感ですね。

〈安藤〉
その点、日本の経営者はものすごく闘っているんですが、学生はぬるま湯の中を泳いでいますから、彼らにはもう少し、この国は大変なんだぞということを言ってもらったほうがいい、と思いますね。

(※本記事は『致知』2003年11月号 特集「仕事と人生」より一部を抜粋・編集したものです)

image by: JIANG TIANMU / Shutterstock.com

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【著者】 致知出版社 【発行周期】 日刊

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