有権者が「世襲議員」を生み出す「認知バイアス」とは?
そんな自民党の世襲議員を、有権者が選ばなければよいだけのはずですが、なぜ世襲候補は有権者の票を集めやすいのでしょうか。
ひとつには、世襲候補は、当選を重ねてきた先代と氏名や顔つきが似通っている──ということが特徴として挙げられます。
先代からの支持者は、それだけで、世襲候補者にも同類項・共通項があるように感じるからです。
既得権益や利権が先代の時代からもたらされていれば、これは十分大きな動機付けにもなります。後援会組織などには「現状維持バイアス」がはたらくからです。
また、これまで培い育ててきた「後援会組織」を維持していかないと、先代を長年応援してきた過去の努力が無駄になるかもしれないという「喪失不安バイアス」もはたらくでしょう。
いっぽうで、見慣れない新人候補者は、「何をやらかすやら分からない人物」に映ります。馴染がないために新人候補は除外されやすいのです。
先代のやってきたことを忠実に踏襲するであろう世襲候補は、自分の安心にもつながる「感情バイアス」の点からも、非常に受け入れやすい候補です。
たとえ、世襲候補にドラ息子やバカ娘という風評があったとしても、これまた、世襲候補者に対する自分にとって都合のよい情報だけを信じる「確証バイアス」がはたらいて、議員になれば先代の影響も受けて、まともな議員活動もするはずだろうと甘く考えてしまうのです。
もちろん当選すれば、支持者の期待に応えるのが当たり前だろうといった「正常性バイアス」もはたらいてきます。
それだけではありません。
自分の大切な一票を投ずるなら、落選しそうな候補者に入れるよりも、世襲候補で当選確実な候補のほうに入れたいと思う「集団同調性バイアス」もはたらくことでしょう。
これは、勝ち馬に乗るほうを選ぼうとする別名「バンドワゴン効果」とも呼ばれる心理作用なのです。
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