自民党に投票する心理も、世襲候補に投票する「認知バイアス」と共通する!
日本国民が、自民党に投票しやすくなる原理も、前述した世襲候補者に投票する原理と相通ずるものがあります。
そもそも、日本では国政選挙における投票率が、たったの50%前後しかありません。
投票に行かない理由はさまざまですが、「誰に投票すべきかわからない」「どうせ投票しても何も変わらない」といった無関心や諦観が人々の意識を覆っていることが大きいのです。
ゆえに、曲がりなりにも組織政党の自民党と公明党の候補者が、岩盤的な2~3割の固定票を得るだけでも、選挙区で勝ち上がれてしまいます。
4割といわれる浮動票からも、「どうせ入れるなら、死票にしたくないから自民党に票を入れておこう」という消極的支持も得られることでしょう。前述したバンドワゴン効果でいう「集団同調性バイアス」です。
こうした全体的な流れの中で、野党の票が伸びずに選挙が終わるのには、次のような「認知バイアス」の影響が指摘できます。整理しておきましょう。
- 正常性バイアス →長年日本の政治を担ってきたのは自民党で、多くの人が支持している。ゆえに自民党に任せるのが正常な投票行動に思える。カネに汚い分もあるが、まともな議員も多いはずだろう──などと不都合な情報は過小評価する
- 確証バイアス →原発の問題にしろ、軍拡の問題にしろ、難しいことはよくわからないが、米国と仲良くやらないと日本はうまくいかないはずだから、外交面ひとつとっても、やはり自民党が一番マシなのだろう──と都合のよい方向に考える
- 現状維持バイアス →うちは親の代からずっと自民党を支持してきたから、このまま支持し続けても問題ないはず。かつて民主党という野党が一時的に政権を担ったことがあるものの、うまくいかなかった実例もある
- 喪失不安バイアス →これまで支持してきた自民党という政党をやめてしまうと、今までの自分の行動がすべて無駄だったような気持になるから、自民党支持のままでよい
- 権威バイアス →自民党が日本の戦後政治を長年担ってきたので、国政への見識や経験も深いはず。日米関係を考えても、自民党が最も米国と信頼関係を築いてきたという実績がある
- 稀少性・限定バイアス →野党を見渡しても、「真正保守」と言える政党は自民党しか見当たらない。にわか保守を気取る野党はあっても、自民党もどきにすぎない。いっぽう左派の日本共産党は独裁的で怖い感じがする。社民は存在感がない。れいわは左翼的で主張が極端のような気がする。ゆえに自民党しか考えられない
これらの他にも、まだまだバイアスを挙げていくこともできますが、概ね以上のような「認知バイアス」をベースにして投票に行く──という有権者が少なくないのではないでしょうか。
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