侵攻から間もなく2年、西側メディアはここにきてロシア・ウクライナ戦争の戦況を「ウクライナ不利」と報じ始めた。ドイツのテレビZDFのニュース番組は2月15日、「ロシアによるウクライナ侵攻からおよそ2年、前線のウクライナ兵への補給はますます難しくなっています。多くの場所で弾薬類が不足しています」と伝え、オーストラリアのテレビABCも、15日の放送で「前線のウクライナの兵士は弾薬の確保に苦戦しています」と、悲観した。
フランスのテレビF2(2月15日)は、ウクライナ軍にとって「対ロシアの抵抗のシンボル」となった東部・ドネツク州の都市アウディーイウカでの攻防に注目。「(ウクライナ軍は)前線に追加の部隊を投入していますが、激しい攻撃を受けているかつての工業都市は陥落寸前で、ウクライナ軍は相変わらず弾薬が不足している状況です」と厳しい状況を伝えた。
アウディーイウカでの勝利は象徴的な意味に加え、ウクライナ軍の武器や物資の供給にとって重要な拠点の確保となるだけに戦略的にも重要な意味を持つ。ウクライナ軍が正念場を迎えているとF2は指摘する。
前線では弾薬類だけでなくマンパワーの点でもロシアとの差が際立つようだ。前出・オーストラリアABCテレビは「(ウクライナ軍が)砲弾を一発撃つと、ロシアからは5発から10発の砲弾が返ってくる」との見方を伝え、前出・ドイツZDFも「ロシア側の砲撃力はウクライナの7倍」と報じる。いずれにせよウクライナ軍の劣勢は明らかだ。
バイデン政権の見立てもほぼ同じだ。ジョン・カービー大統領補佐官は会見で、「ウクライナ側から危機的な状況だと報告を受けている。ロシア軍がウクライナの陣地を攻め続けアウディーイウカはロシアの支配下に入る恐れがある」と認めている。
当初は経済制裁で包囲されたロシアが干上がり、撤退を余儀なくされるというシナリオだった。しかし、いまでは多くの欧州のメディアが反対に、「ロシアが長期戦に持ち込もうとしている」と警戒し始めている──
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年2月18日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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