エコキュートと健康被害の不都合な事実。近所迷惑で済まぬ「低周波騒音公害」に苦しむ人々は原発の犠牲者だった

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格安な深夜帯電力を利用してお湯を沸かすことができ、災害時には数百リットルの水備蓄にもなるというフレコミの「エコキュート」。オール電化住宅の増加に加え、プロパンガス代替手段としても広く普及していますが、そんなエコキュートが原因と思われる「健康被害」の存在をご存じでしょうか。被害者が訴える症状は、耳鳴り、吐き気など切実なものばかり。最近では、電気代高騰や電力会社の深夜プラン廃止によりコスト面のメリットが薄れ、あえて昼間にお湯を沸き上げる「12時間ずらし」の裏技も流行っていますが、そもそもなぜエコキュートは「人々が寝静まる真夜中にヒートポンプを動かし、冷え切った空気から熱を取り出す」という非効率的な仕組みになっているのでしょう?メルマガ『田中優の‘持続する志’(有料・活動支援版)』著者で「未来バンク事業組合」理事長を務める環境活動家の田中優さんが詳しく解説します。

プロフィール:田中優(たなか ゆう)
「未来バンク事業組合」理事長、「日本国際ボランティアセンター」理事、「ap bank」監事、「一般社団 天然住宅」共同代表。横浜市立大学、恵泉女学園大学の非常勤講師。著書(共著含む)に『未来のあたりまえシリーズ1ー電気は自給があたりまえ オフグリッドで原発のいらない暮らしへー』(合同出版)『放射能下の日本で暮らすには?』(筑摩書房)『子どもたちの未来を創るエネルギー』『地宝論』(子どもの未来社)ほか多数。

氷山の一角か?知られざる「エコキュートの健康被害」

キュートという言葉は「可愛い」という意味だ。だからあちこちに使われるが「エコキュート」という言葉ほど厚かましい言葉はないと思う。

どんな被害があるのか、ある方から相談があったので、そのお手紙から紹介してみたい。以下、引用する。

■耳鳴り、吐き気…「低周波振動」被害者の切実な訴え(手紙より引用)

お隣の家が、私の家の庭越しに、大手メーカー製の「エコキュート」を設置しました。1~2年前のことです。

エコキュートは、空気熱を交換し冷却圧縮して高温化しお湯を作るために、ヒートポンプの装置を作動させますが、その際に発生していると思われる波長の長い低周波振動(モーターの機械的な音や、それによる振動の可能性もあり)が、私の自宅のガルバリウム鋼板や高断熱気密壁を貫通して、室内にまで及んでくる状況になりました。

昼間の活動時には気付けないような微細な振動が、床や柱など自宅全体に伝わり、肉眼では感知できないほど軽微な揺れを家全体に与えているようで(何ヶ月にも渡って身をもって検証してきたので99%間違いありません)、その影響による「耳鳴り」や「息切れ」「胸部の圧迫感」「動悸」といった体調不良に悩まされています。

とりわけ2階が酷い状態です。寝室では眠れないので書斎や納戸でも寝てみましたが、発信源から遠いはずの納戸のほうが振動が大きいのです。

夜間を中心に、1日何回かのサイクルで運転される際の「ゴォ」ないし「ウォン」という、家全体を覆うようなうなり音が始まると、とたんに前記の症状があらわれてきます。昨年4月にこれが原因で発症したと思われる「耳鳴り」が大きくなるのです。

就寝時は床や布団ごしに、微細な振動が背面や臀部に伝わってきて、手足が痺れ、その振動の細かい震えが胴部・腹部・胸部にも伝わり、体全体が低周波の振動と共振するような感じになり、体内が無数の粒子で撹拌されているような「吐き気を伴う不快感」を覚えます。

このことに気づく以前は、寝室で横になると何となく床が揺れているように感じていたのですが、自身の勘違いか小さな地震ではないかくらいで済ませていました。ただ、「耳鳴り」が発症した後の6月頃、神経が過敏になっていたこともあって、お隣の空調の振動が空気孔を通して「カラカラッ」という感じで伝わってきていることや、空調の外口部が発する空気の出入りによる「耳障りな騒音」に気づきました。

それでも、夏秋と我慢して何とかやり過ごしたのですが、去年の年末ぐらいに、本格的に寒くなりエコキュートの運転が強まると、急に今まで経験したことがないような体調不良に陥りました。

おそらく、隣家にエコキュートが設置されて以来、気づかずに騒音を浴び続け、知らないうちにダメージが蓄積され、細胞レベルで蝕まれたものが自覚症状として表面化しているのではないかと思います。

事の深刻さに気づいたのはここ1週間ぐらいで、その間エコキュートが製造物責任を問う訴訟になっていることや、低周波が家を揺るがすようなエネルギーを持っていること、波長が長い分遠いところまでその影響が及ぶことなどを知りました。

すでに横浜市の大気音環境課に問い合わせ、振動計や低周波音計を借りて数値を測定したり、区役所の無料弁護士相談もしてみましたが、もはやそんなことでは埒が明かない状態に至っています。現に今も振動が足元から伝わってきて、胸の圧迫感を感じつつ書いています。

こうした低周波の害や悪影響は、一般的には社会的に認知されていないようです。ほとんどの人は、私自身がつい最近までそうであったように、身の回りにそうした通常の感覚活動では感知できない危険が潜んでいるとは気づかないで過ごしているためもあってか、人体への影響を体感していないようです。もしくは体質によって、体感する人としない人がいるようです。

そのため、低周波を体感した人が、いくらその苦痛や辛さや不快感を訴えても、「気のせいか何かの体の病気」「精神の病による妄想」ということで片付けられてしまい、泣き寝入りで終わってしまうようです。たとえ訴訟に持ち込んでも、他の給湯器に交換するなどの和解に持ち込むのがせいぜいで、メーカー及び関連業者は、私のような苦情のほとんどを、ごくごく例外的な過敏症か統合的失調症として実際に処理しているようです。

今の段階では、私もそう見なされてしまうでしょう。現に製造メーカーに問い合わせても取り扱ってもらえませんでした。

ですが今の私にとっては、本当に病気になってしまうか命の危険を感じるほどに差し迫った問題であることを、何卒理解していただきたく存じます。今日、低周波音計で発生源である空調付近を計測してみたところ、国が設定する環境基準において、「心身に係る苦情としての扱いが可能な参照値を満たしている」ことが確認できましたので、今取れる対応手段として、総務省の公害等調整委員会の公害相談ダイヤルに訴えるつもりでいます――

「低周波騒音公害」が社会的に軽視される理由

引用は以上だ。(※編註:文意が変わらない範囲で内容を一部編集しました)

この方の言っている状態は、全世界的に起きている「低周波騒音公害」とほぼ一致している。実際に私が区役所に勤めていた時に、公害対策課で見聞きした低周波騒音問題とそっくりだ。

その原因はおそらく、私が現場で見聞きしたモノでいうと、大きな室外機のようなものによる空気振動が多かった。

なぜ「そのせいだ」と明言しないかというと、「低周波騒音」は「距離減衰」しにくいため、距離を離れても騒音のデシベル値が落ちにくいので、近づくことでこれが原因と特定するのが難しいためだ。

たとえば、役所への苦情が多かったカラオケ騒音なら、「距離減衰」するので敷地境界と騒音源との数値の差で示すことができるのに、「距離減衰」しない低周波騒音ではそれができない。

しかもこれに共振現象が加わる。要は弦楽器に音が当たると弦が共振して鳴る。それと同じで、離れていても同じ振動の特性を持つ音は、同じ周波数の弦音と強振するのだ。

特に低周波のものは耳に聞くことのできる「可聴周波数」より下になることも多く、耳に聞こえない音であることもあるし、人によって聞こえる、聞こえないという個体差も出ることになるのだ。

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