エコキュートと健康被害の不都合な事実。近所迷惑で済まぬ「低周波騒音公害」に苦しむ人々は原発の犠牲者だった

 

「低周波騒音」の対策は困難、被害者と加害者で温度差も

もう一つあるのが「加害者か被害者か」による差だ。これが明瞭に出るのが追突交通事故の場合の「むちうち症」だ。

どちらも同じ程度のダメージを受けているはずなのだが、むちうち症を訴えるのは追突された側の人で、加害者の車両からの訴えは少ない。

こうした経験に照らし合わせても、この方の言っていることは信憑性が高いと思う。そして厄介なのは、対策が困難であることだ。

高い音は薄い壁でも落とすことができるが、低周波の場合はそれに見合った質量のある素材でなければ遮蔽することができないのだ。

ちなみにこのケースでは天然住宅(※編註:著者の田中優氏が非営利事業として開始、のち株式会社化)の建てた家に「お宅の建設会社がキチンと土台を作っていないから振動するんじゃないの」とまで言ってきたそうだが、天然住宅の建てる家の基礎コンクリートは他の家よりはるかに密度が高い。伝える振動・騒音ともに地面を経由したものは他の建物よりずっと下がっているはずだ。

キュートさの欠片もない「原発とエコキュートの不都合な事実」

これがまさにエコキュートの被害の状況なのだ。

昼間なら、場所にもよるが道路を走行する大型車などの騒音により紛れてしまうのだが、エコキュートは主に深夜にヒートポンプを動かす。

そのため、人間の可聴音階すれすれの音階で、周辺の暗騒音(ある特定の発生源からの音に着目した時、それ以外で同時に発生している全ての音のこと)に紛れて、「低い音」や「振動」が届いてしまう。

もともとヒートポンプは良い方式で、周囲の熱を集めて利用する仕組み自体は効率的だ。でも、それを深夜に動かすことが悪い。

昼間のほうが周囲の温度が高いのだから、熱を集めるにしてもはるかに効率的だ。深夜の冷たくなった水を温めるために、外気温が低い時間帯にヒートポンプを動かし空気から熱を集めようとすれば効率は悪くなる。

しかも、騒音を恐れたせいか、可聴音階すれすれの周波数で稼働する。原発の電気があり余る深夜時間帯に電力を家庭消費させたいがために、無理な稼働をヒートポンプに強いている。

原発で作り出してしまった電力を、無理にでも利用させる仕組みとして、「夜間(深夜)電力」を利用させるエコキュートは生まれたのだ。

(メルマガ『田中優の‘持続する志’(有料・活動支援版)』2024年1月30日号より抜粋。最新号はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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