「原発推進」政策で見逃された危険な活断層。なぜ能登半島を大地震が“不意打ち”したのか?

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元日の能登半島を襲ったグニチュード7.6、最大震度7の揺れを観測した大地震。この地震が想定を大きく上回った理由は、原発推進政策に大きく関係しているようです。今回のメルマガ『田中優の‘持続する志’(有料・活動支援版)』では著者で 「未来バンク事業組合」理事長を務める環境活動家の田中優さんが、なぜ能登半島が大地震に「不意打ち」されたのかを解説。さらに専門家も含めた国民の地震に対する理解の遅れを指摘しています。

プロフィール:田中優(たなか ゆう)
「未来バンク事業組合」理事長、「日本国際ボランティアセンター」理事、「ap bank」監事、「一般社団 天然住宅」共同代表。横浜市立大学、恵泉女学園大学の非常勤講師。著書(共著含む)に『未来のあたりまえシリーズ1ー電気は自給があたりまえ オフグリッドで原発のいらない暮らしへー』(合同出版)『放射能下の日本で暮らすには?』(筑摩書房)『子どもたちの未来を創るエネルギー』『地宝論』(子どもの未来社)ほか多数。

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原発推進政策の悪弊。見逃された能登半島大地震の危険性

今年の新年は地震とともに始まった。言うまでもなく能登半島地震だ(図1)。

図1: 能登半島地震1月1日(気象庁 2024年01月01日の震源リスト)

図1: 能登半島地震1月1日(気象庁 2024年01月01日の震源リスト

ここに活断層がある可能性が高いことはよく知られていた。

しかし

「能登半島北岸の直線的な海岸線が、沿岸の海底にある活断層の活動によってできたものであることを知る研究者は多かったし、地震は当然想定されるべきだった。しかしそれができず、不意打ちの形になってしまった」

と。

名古屋大学教授で、日本活断層学会会長を務める鈴木康弘氏は地震を受けてそう述べている。

M7級想定できた-沿岸活断層、認定急げ

1月1日に起きた能登半島群発地震は甚大な被害をもたらしたが、それは想定されていた地震の大きさとは全くレベルの大きな地震であったためだ。その原因が活断層の位置と長さの想定が正しくなかったためだ。続けてその理由についての言い訳を同じく日本活断層学会会長の鈴木康弘氏から聞いてみよう。

「2007年の新潟県中越沖地震も海底活断層によるものだったが、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)を巡る政府の審査では音波探査が過度に重視された結果、大幅な過小評価になっていた」

と。

「音波探査」では海岸沿いの海域の活断層を「活断層認定」するのが難しく、今回の能登半島北岸のように海岸近くにある活断層を音波探査で調べることは難しい上に判定できる新しい堆積物が薄いために見極めが難しいのだと。しかも想定される震度が高ければそれだけ建設費用が嵩んで電力会社の抵抗は大きくなる。電力会社の抵抗はあるだろうが、今なら、海底でも陸上と同じように地形から活断層を地下を掘削して調べることも可能だ。海域を探査船を出して音波を出して海底下の地質構造を調べるが、しかし能登半島北岸のように、海岸近くにある活断層を音波探査で調べることは難しい。

こうした問題を補うため、最近は、海底でも陸上と同じように地形から活断層を認定する技術が進んだ。能登半島では「後藤秀昭・広島大准教授ら」が調査し、北岸をほぼ東西に走る長大な海底活断層の存在を指摘していた。これが今回の地震を起こした断層とみられるが、いまだに音波探査による地質調査が重視されすぎているために、後藤氏らの結果は活断層図(図2)に反映されていない。

図2:産総研活断層データーベース」地下構造可視化システム簡易版

図2:異様に少ない能登の活断層。「産総研活断層データーベース」地下構造可視化システム簡易版

それが能登半島に活断層が描かれておらず、地震が不意打ちした理由だ。

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