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吉幾三さんの怒り無視!「謝らないパワハラ自民議員」長谷川岳 勘違いの本質…西村康稔、茂木敏充と共通項

飛行機内でのパワハラが発覚した自民党の長谷川 岳(はせがわ がく)参院議員が「なぜ一言、謝罪できないのか」と猛批判を浴びています。演歌歌手・吉幾三さんの指摘がきっかけで露呈した、CAへの常軌を逸したカスハラ。さらに週刊文春による「パワハラ音声」の追い打ちもあり、長谷川氏は28日になって「時代に即した表現方法に変えて参ります」との声明を発表。ところが吉幾三さんやCAへの謝罪は一言もなかったのです。これに関して「強い立場の人に直言できる政治家は本物だが、まず歯向ってはこないとわかっている人を相手に威張り散らすのは勘違い議員の典型」と指摘するのはメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者で元全国紙社会部記者の新 恭さん。西村康稔氏、茂木敏充氏とも共通する国会議員の「勘違いの本質」とは?
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:吉幾三さん「横柄な国会議員」の実名暴露。なぜ議員は威張りたがるのか

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吉幾三さんが暴露した、国会議員の「機内パワハラ」

「バッジ付けて国会議員だと思うんだけど、飛行機の中とかさ、ああいう場所でちょっと横着な態度な人がいてね」

昨年10月、演歌歌手の吉幾三さんが自身のYouTube動画で語っていた「横柄な国会議員」が誰なのか、ちょっと気になっていたのだが、今月19日にその答えとなる動画を投稿してくれた。

吉さんの体験談はこうだ。ある日、国内線旅客機のJクラスの座席に乗っていたら、前のほうの座席で男性がCA(客室乗務員)に向かって偉そうに怒鳴っている。つけているバッジからみて国会議員らしい。

「名前も全部調べたけども、いちおう国会議員だよ。言葉の使い方とかな、乱暴でよ。国会議員だからいいのかなと。飛行機会社も飛行機会社だけども、なんか待遇が違うんだよな。大人なんだからさ、ある程度常識もって話すとか、口のきき方もわかんないのか。余り横柄な態度はやめてほしいな」

国会議員が激怒して、CAが平謝りしている光景が目に浮かぶ。何が原因で騒いでいるのかはともかく、よほど目に余る態度だったのだろう。

自民党・長谷川 岳(はせがわ がく)参院議員を現役CAが告発

この動画が投稿された後、吉さんのもとに視聴者から何通かの手紙が届いたようだ。今月19日の吉さんの動画投稿で、そのうちの一通(匿名)が公開された。

吉幾三様 突然のお手紙をお送りし申し訳ございません。私は航空会社で働いております現役のCAです。(中略)吉さまがYouTube内でおっしゃっていらした「態度が横柄な政治家」の方は、長谷川岳さんでしようか。

実は私も実際に長谷川さんがご搭乗の便を数回担当した事があります。会社から事前に注意点が(何項目も)知らされ、仕事の前からナーバスになっております。

その内容が自分勝手で我儘なものなのです。例えば「枕は2つ用意する」「到着が遅れる時は早めにお知らせする」など多岐にわたります。(中略)全て現場の私たち乗務員に押しつけられ対応に苦慮しております。

周りに有権者の方がいらっしゃるという意識はないようで、非常に高圧的な言い方をされます。到着が遅れることに関しては、鬼の首を取ったような言い方でクレームをされます。(中略)遅れに関しては当然お詫びをしなければなりませんが、長谷川さまは異常な程の剣幕でクレームをおっしゃり、とても政治家とは思えません。日頃から対応した乗務員全員が長谷川さまに良い印象を抱いていないなか(中略)長谷川さまが気づきと態度を改めていただくきっかけになってほしいと思います。

吉さんは「この手紙の中に名前が入っています。その方を知っている人がいたら、注意してあげてほしい」と言い、自民党の長谷川岳・参院議員が問題の人物であることを明かした。

長谷川氏は航空業界ではかなり有名な政治家であるようだ。この人が搭乗する時には、何項目もの注意点が乗務員に知らされるというのである。

「対応マニュアル」とか「トリセツ」(取扱説明書)とかいうたぐいのものなのだろうが、ただでさえ緊張を強いられる乗務員が一人の乗客にそれほど気を遣わなくてはならないとしたら、安全運航上も見過ごせない問題があるのではないか。

長谷川岳の「パワハラ言い訳」が意味不明すぎて大炎上

吉さんのこのYouTube投稿に反応し、長谷川議員は今月21日、自身のブログを更新した。といっても、「横柄な態度」については全く言及せず、別の問題に置き換えた。

航空政策および飛行機の遅延についての考え方」というのが、長谷川氏の提示する新たなテーマだ。

「私は、航空会社の対応について、機内で発言をする際、三つの原則に従います」とし、その一つとして「正確な情報を伝えているか」をあげている。つまり、「正確な情報」を乗客に伝えていないと判断したらクレームをつけるというのである。その実例が以下のように記されている。

あるとき搭乗した飛行機の出発が大幅に遅れていました。出発時間をとうに過ぎてから「管制の指示によって出発許可を待っているため遅れが生じている」との機内アナウンスが入りましたが、外を見て驚きました。まだ航空会社は機内への貨物の搬入作業の途中であり、相当な貨物が残っている状況でした。遅延の原因は管制の指示ではなく(中略)航空事業者の準備が遅れているために、出発が遅れている状況が一目瞭然でした。これを航空当局の責任にすりかえ、それを情報として流すことは許されるものではありません。そのことについてその場で発言をさせていただきました。

搭乗した航空機が大幅に遅れれば、その日の予定が狂ってしまい迷惑千万であることは誰しも同じである。機内アナウンスは「管制の指示を待っているため」と説明したが、窓の外を見ると、そうではなく貨物の積み込み作業が遅れているだけではないか。「ウソをつくんじゃない」と思う長谷川議員の苛立ちはよくわかる。

だからといって、その機内で、CAに向かって声を荒らげることに、国会議員の役割から見て、どれほどの意味があるだろうか。安全運航と乗客サービスに集中すべき乗務員の心をいたずらにかき乱し、動揺させるだけではないのだろうか。どうしても機内アナウンスのあり方を改善したければ、日を改め、国会で問題提起する方法もあるだろう。

長谷川議員が乗るからというので、事前にトリセツを渡されたCAたちが、より平身低頭してサービスにつとめるのをいいことに、正義の味方ぶって罵声を浴びせかける。これでは、国会議員であることを笠に着て威張り散らしているとみられても仕方あるまい。

むろんこれが、吉さんの見聞したシーンなのかどうかはわからない。だが、長谷川氏は吉さんの指摘する事実を否定していないし、ブログを更新して真っ先に取り上げたのがこの実例だ。

西村康稔、茂木敏充とも共通する「驕り高ぶり」

筆者は何も長谷川氏だけを糾弾したいのではない。この国にパワハラ体質の議員センセイは掃いて捨てるほど存在する。とりわけ大臣にその種の人物が就任すると、まわりの官僚たちは、ご機嫌斜めにならないよう、トリセツを作成して細心の注意を払う。

今を時めく“裏金議員”の大物、西村康稔氏が経済産業大臣だったころ、「西村経産大臣出張時の注意点」と題する対応マニュアルが省内に配布されたことがあった。

その中身は、「車中での対応」「お土産購入ロジ」「ぶら下がり会見での対応」「帰宅時(駅構内)での対応」の4項目。

出張時にお土産を買うときには「購入量が非常に多いため、荷物持ち人員が必要。秘書官1人では持ちきれないため、東京駅の大臣車積み込みまで対応することが理想」。駅弁を買うなら「弁当購入部隊とサラダ購入部隊の二手に分かれて対応」などと、実に涙ぐましい気遣いである。本来の公務と関係ないことに国家公務員の人員とエネルギーを費やさねばならないのだ。

“裏金議員”の処分問題に頭を痛める茂木幹事長も負けてはいない。これも茂木氏が経産大臣だったころだが、出張に同行する職員用にトリセツが作られていた。以下はA4用紙22枚にもわたる「大臣出張等メモ」の一部。

〈嫌いな食べ物は、煮物全般、酢の物、ゴマ豆腐・・・〉
〈ご飯ものよりも麺類やパン〉
〈ハンバーガーはオーソドックスなもの、カレーは辛口なものを好む〉
〈ルームサービス等で麺類を注文する際には、大臣に提供するタイミングについて細心の注意を払うことが必要。中国出張の際(中略)冷麺ができてから大臣に提供するまでのタイミングが20分ほどずれてしまい、かたくて食べられないと大激怒していた〉

くだらないことに官僚の能力を消費しているというほかない。しかし、これが実態なのだ。

国会議員が「自分は偉い」と勘違いする理由

この国に、議員と呼ばれる人の数は、市町村合併などでかなり減少したとはいえ、いまも国会と地方議会合わせて3万3000人をこえている。この数が適正かどうかについては議論があるものの、トリセツが必要なほど他人を疲弊させ、そのわりに実績の上げられない議員に、どれほどの値打ちがあるだろうか。

議員を「先生」と呼ぶ日本的“慣習”にも問題がある。明治時代に議員宅に住み込んでいた書生が「先生」と呼んでいたのが起源という説もあるが、とにかく不思議なこの呼称によって、自分は偉いんだ、特権があって当然だという思い上がりを生みやすい面はあるだろう。

秘書のささいな言葉や態度に激高して「土下座しろ」と怒鳴りつけたり、役人に無理難題を押しつけて、むやみに仕事の時間を奪う議員のいかに多いことか。普段はふんぞり返っている政治家が、いざ選挙となると、頭をこすりつけんばかりに「お願いします」と叫んでまわるのだからバカ丸出しである。

長谷川参院議員は北海道選出で当選3回。選挙区と東京の間を航空機で行き来しているらしく、総務副大臣だった2019年、旭川空港ビルの対応に腹を立て、「与党として支援できない」と電話で激しくまくし立てたのを週刊文春が記事にしたことがある。

強い立場の人に直言できる政治家は本物だが、まず歯向ってはこないとわかっている人を相手に威張り散らすのは勘違い議員の典型といっていい。長谷川議員もこのさい、吉幾三さんの指摘をありがたく受け入れて、「横柄な態度」をあらためてはどうだろうか。

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