小林製薬「紅麹」事件も安倍政権の悪しき遺産。カネだけでなく国民の命も奪うアベノミクスの亡霊

 

安倍政権の「規制改革会議」に送り込まれたあの人物

この松澤は、日本の医療を蝕んでいる「自民党厚生族×厚生官僚×医師会×薬品業界」のドロドロの利権・癒着構造の真っ只中に居る人物で、この7年前の日本版「メタボリック・シンドローム」の概念・基準とそのための法制度を提唱したことで知られるが、その出鱈目さについては後述する。

恐らくこの松澤の推挙によるものと思われるが、彼が設計した「機能性食品」自由化を担う尖兵として安倍政権の内閣府「規制改革会議」の委員に送り込まれたのが、松澤より約20歳下の後輩である森下竜一=阪大寄附講座教授だった。森下の専門は遺伝子治療学・抗加齢医学で、寄附講座のスポンサーは第一製薬(当時、現在の第一三共)。そのお陰で40歳そこそこで教授の座を得たのは彼の商才の表れなのだろうが、彼はその商才を政界方面にも発揮し、第2次安倍政権が始動した2013年以後、現在に至るまでずっと、内閣府の健康・医療戦略推進本部ないし同事務局の「戦略参与」という御大層な肩書を維持している。

森下は、このような安倍政権との特別な関係を利用して、彼が2002年に創業していた大学発の医療ベンチャー「アンジェス」で世界に先駆けてコロナ感染症の治療薬の開発が可能であるかの大風呂敷を広げ、安倍も「世界の英知を結集することで治療薬などの開発を一気に加速したい。日本としてリーダーシップを発揮する」などと持ち上げて(2020年3月14日の会見)、それ以降、75億円もの厚労省補助金を降り注いだ。しかし同社は事業に失敗、22年9月には開発中止に追い込まれた。この醜聞については、マスコミは忖度して大きく取り上げなかったが、『月刊タイムス』22年2月号に山岡俊介が「アンジェスの予防薬に効果なし!? コロナ予防薬開発に疑惑浮上:製薬ベンチャーと安倍元首相、吉村大阪府知事との癒着疑惑」と書いた。

また、その吉村との関係から生じたもう1つの問題は、森下が大阪万博プロジェクトに絡み込み、2016年に「万博基本構想検討会」委員、19年に大阪府・市の「特別参与」、20年に大阪府・市の「特別顧問」と階段を上り、21年には「大阪万博パビリオン総合プロデューサー」に就任していること。このようにして、至る所に牢固たる「政官学業の癒着構造」が築かれて、国民不在の政策や行政が罷り通って行くのである。

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