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小林製薬「紅麹」の健康被害は10年前に予言されていた!サプリを飲むほど寿命が縮む理由…安倍「負の遺産」ここにも

小林製薬の「紅麹(べにこうじ)」による健康被害が、さらに広がる可能性が出てきました。大阪市は3日の対策会議で、同社の「紅麹コレステヘルプ」が、全国129の自治体、約2万3000店舗で約86万個販売されたと明らかに。各地の保健所が確認を急いでいますが、回収のメドはついていません。これに関して「健康被害への強い懸念は10年前からあった」と指摘するのは、『きっこのメルマガ』著者で人気ブロガーのきっこさん。なぜ故・安倍元首相は有識者や消費者団体の反対を無視し、国民を危険にさらす「機能性表示食品制度」を創設してしまったのでしょうか?
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:被害拡大必至の紅麹事件

令和最大級の健康被害「事件」

あえて「事件」という言葉を使いますが、小林製薬の「紅麹事件」は、この原稿を書いている3月29日現在で、死者5人、入院者114人、通院者は通院希望者も含め680人以上に上ると発表されました。

しかし、この数字はあくまでも「現時点までに判明した人数」として小林製薬が発表したものなのです。

同社には全国の消費者や取引先から相談の電話が殺到しており、「窓口を110回線に増やしたが全体の3割ほどしか対応できていない。今後は280回線に増やす」とのこと。つまりこれは、その「全体の3割ほど」の声からの数字なのです。

また、小林製薬ではなく厚労省や消費者センターの相談窓口への電話も急増していると報じられたので、今後、被害者数が増加することは必至でしょう。

まず、根本的な点をおさらいしておきます。多くの消費者は「紅麹」が問題だと勘違いしていますが、「紅麹」という菌は古くから天然着色料として一部の食品などに使われてきたもので、これまで日本では特に危険性は指摘されていませんでした。

しかし、小林製薬が製造・販売した「紅麹の一部のロット」に何かが混入し、それを使った製品を摂取した消費者に被害が出ている、ということなのです。

帝国データバンクの調査によると、小林製薬から直接「紅麹」を仕入れている事業者は225社、この225社から仕入れている1次販売企業は873社、この873社から仕入れた原料を加工・販売している1次仕入加工企業は3878社に上るそうです。そして、この3878社から仕入れた商品を販売している2次仕入販売企業まで含めると、最終的には全国の3万3000社超に小林製薬の「紅麹」を使用した製品が流通しているといいます。

サプリの「習慣性」がアダに

しかし、今回もっとも問題視され、小林製薬が自主回収を始めたのは、同社が「悪玉コレステロール値を下げる」という謳い文句で製造・販売している機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」「ナイシヘルプ+コレステロール」「ナットウキナーゼさらさら粒GOLD」などのサプリメントなのです。

たとえ一般の食品に小林製薬の「紅麹」が使われていたとしても、同じ食品を来る日も来る日も朝昼晩の3回、食べ続ける人はいないでしょう。でも、小林製薬の「紅麹コレステヘルプ」は「45粒15日分」「60粒20日分」「90粒30日分」などのパックで販売されているのです。健康診断で医師から「コレステロール値が高いですね」と言われた人がこのサプリを購入した場合、必ず朝昼晩の3回、飲み続けるでしょう。これが問題なのです。

健康食品は粗悪品だらけ。驚きの研究結果

世の中では相変わらずサプリメントを始めとした健康食品がもてはやされていますが、あたしはこうした類の市販品をいっさい信用しておらず、絶対に摂取しないようにしてきました。

それは今から20年近く前に、現在も続いている「ダイエット&ビューティーフェア」に参加した時、プロユースの美容製品の専門メーカーの開発者から「市販のサプリは大半が粗悪品」と教えられたからです。

当時はサプリを始めとした健康食品の一大ブームで、市場規模は1兆2850億円と過去最高を記録しました。中でも酸化防止効果によるアンチエイジングを謳い文句にした「コエンザイムQ10」のサプリが流行しており、店頭から通販まで数々の商品が溢れていました。

しかし、ブームが起こると粗悪品が混じり始めて玉石混交となるのです。

あたしは、当時「コエンザイムQ10」のサプリの中で最も売れていた上位10商品を某大学の研究室が分析したデータを見せてもらったのですが、「コエンザイムQ10」がまったく含まれていなかったサプリが2商品、含有量が表示の半分ほどだったサプリが5商品、表示通りに含まれていたサプリはわずか3商品だったのです。

この事実がキッカケとなり、以来あたしは「市販のサプリを始めとした健康食品の謳い文句は信じない」というスタンスを取ってきました。

しかし今回は、肝心の成分が入っていなかったどころか、死亡リスクまである余計な成分が混入していた疑いがあるのです。

そこで今回は、3月29日放送のTBSラジオ『荻上チキ Session』の冒頭に電話出演した、科学ジャーナリストの松永和紀(まつなが わき)さんが指摘した問題点を列記したいと思います。

松永さんは「食品安全委員会」でリスクコミュニケーションを担当する委員でもあり、市販のサプリのリスクや「機能性表示食品」の安全性の問題を以前から訴えてきたジャーナリストで、あたしはとても信頼しています。

いつものように文字起こしすると書ききれなくなってしまうため、発言の要点を簡潔にまとめて、以下、挙げていきます。

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科学ジャーナリスト 松永和紀さんの指摘(TBSラジオ『荻上チキ Session』3/29より)

「市販のサプリメントはリスクが高い、というのは専門家の間では常識なので、今回は『やはり起きてしまったか』と思った」

「『紅麹』と聞くと麹菌の一種と思いがちだが、麹菌とはまったく違う別の菌」

「紅麹自体は古くから中国や沖縄などで少し食べられてきた」

「青カビから発生するプベルル酸が検出されたと報じられたが、英文の論文など目を通しても危険性を指摘するものは今のところ見つけられなかった。現時点では『これが原因』と決めつけず、広い視野で調査を進めるべき

「サプリは形状が錠剤に似ているので、愛用者は薬のように毎日飲み続けてしまう傾向がある」

「消費者の多くは、原料が自然・天然と言われると『身体にやさしいもの』『身体に良いもの』とイメージしてしまうが、自然・天然の原料はとても恐い。フグ毒やキノコ毒などを考えればすぐ分かること」

「『トクホ』と呼ばれる『特定保健用食品』は製品ごとに国が審査しているが『機能性表示食品』は国がガイドラインを作っただけで審査していない。このことが多くの消費者に理解されていない。国の制度だという理由で何となく安全だと思われてしまっている。業者側も『機能性表示を取得』と表示して宣伝しているので、消費者は国が審査しているように感じてしまう」

「2015年に導入された『機能性表示食品制度』は、当時の安倍晋三首相の『企業が活躍しやすい国を造る』という宣言で創設された。しかし私は、当時からずっと『安全性確認が弱いんじゃないか?』と思っていて、いろいろ取材して問題点を訴えてきた。そして10年近く経って、やはりこういう問題が出てきた。これはきちんと検証した上で制度を根幹から見直すべき」

「安全性だけでなく機能性についても、宣伝を見ると『え?そこまで言える?』という製品が多数ある。実際に昨年は景品表示法違反で措置命令を受けた製品もあった。やはり制度として弱い」

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安全性を企業側に「丸投げ」した安倍元首相

‥‥そんなわけで、「機能性表示食品」については、松永和紀さんが指摘した通リ、今回の問題が起こるまで「国が審査して許可を下ろした製品」と思い込んでいた人も多かったと思います。

今回、小林製薬の問題のサプリを購入して飲み続けていた人たちも、この製品を信用したのは、第一に「小林製薬」という製薬会社の製品であること、第二に「機能性表示食品」であることが理由だと思います。

日本の健康食品市場は、2005年の1兆2850億円をピークに右肩下がりが始まり、2014年には1兆1700億円にまで落ち込みました。

しかし、当時の安倍首相による「機能性表示食品制度」の導入により、2015年から右肩上がりに転じ、新型コロナ禍の2021年には1兆3700億円と過去最高を更新しました。

これは、新型コロナ禍で健康意識が高まったこと、リモートワークによる体脂肪やコレステロールの増加を気にした人たちがサプリを購入するようになったことが大きな要因だと見られています。

しかし、一時は粗悪品の混入などによって右肩下がりになった市場ですから、市場拡大の最大の要因は、やはり「機能性表示食品制度」の導入でしょう。

それまで市販のサプリなどに懐疑的だった消費者も、この表示によって安心して購入するようになったと思います。

この「機能性表示食品制度」が生まれた背景には「特定保健用食品(トクホ)」の存在がありました。「コレステロール値が下がる」などの表示ができる「トクホ」の市場は拡大してきましたが、消費者庁の許可を取得するためには時間もお金も掛かります。

そこで安倍首相は、機能性も安全性も企業側に丸投げして、消費者庁は企業が提出した申請書を受理するだけで機能表示ができる「機能性表示食品」という別枠を新設したのです。

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企業が自己申告「機能性表示食品」申請書の実態

こうすれば、小さな企業やベンチャー企業も参入しやすくなり、結果として市場の拡大につながるという、小泉政権時代からミャクミャクと続いてきた竹中平蔵氏による新自由主義の一環、「規制緩和」という名の無責任丸投げ政策です。

何か問題が起こっても責任はすべて企業側にあり、許可した国側は何の責任も取りません‥‥という自民党政権の伝統芸です。

しかし、あたしには今回の「紅麹事件」は、国側に何の責任もないとは思えません。

それは、当時の安倍首相が安全性の担保もないまま、成長戦略の一環として強行導入した「機能性表示食品制度」に対して、複数の消費者団体から批判の声が巻き起こったことに端を発します。

消費者庁は制度導入の翌2016年に「機能性表示食品」に関する「検証事業報告書」の概要を発表したのですが、そこには企業側から提出された申請書の実態について、次のように報告されていました。

さすがに「機能性成分がゼロ」というものはなかったようですが、これは企業側の自己申告なのです。たとえ企業側の検査で「機能性成分ゼロ」の製品が見つかったとしても、そんなもの提出する書類には書かないでしょう。これでは20年前の「コエンザイムQ10」とほとんど変わらないじゃないですか。

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安倍元首相の「負の遺産」国も責任を免れず

結局のところ、当時の安倍首相が強行導入した「機能性表示食品制度」とは、それまでと変わらない玉石混交の市販のサプリに「国がお墨付きを与えた」だけなのです。

制度導入の1年後には、こうした事例を確認していたのにも関わらず、機能性も安全性も企業側に丸投げしたまま「機能性表示食品」として数々の製品にお墨付きを与えてきたのですから、国に何の責任もないとは思えません。

特に「製造ロットによって成分量のばらつきが大きい」という事例を確認していたのですから、「製造ロットによっては異物が混入する可能性」も考えられたわけで、これを8年間もスルーしてきた国の責任は大きいと思います。

そして、この事件も、安倍晋三元首相の数々の「負の遺産」の1つなのです。

※今回は、これまた安倍元首相の「負の遺産」である「種子法の廃止」にも言及する予定でしたが、長くなってしまったので次の機会にします。

(『きっこのメルマガ』2024年4月3日号より一部抜粋・文中敬称略)

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