「料理の鉄人」で一躍有名料理人となった道場六三郎さん。今回、メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』でご紹介しているのは、満93歳となった今でも現役料理人としてYouTubeチャンネルを持ち、多くの登録者数を獲得する彼のバイタリティを探ります。
93歳の現役料理人・道場六三郎氏の仕事哲学
道場六三郎氏。この道一筋に歩み来て75年、和食の神様と称されます。
この1月に93歳を迎えられましたが、凛としたコックコート姿はいまも健在です。その矍鑠たる秘訣は何か。
『致知』最新号となる5月号で、原点にある両親の教え、若い頃からの心懸けと創意工夫の実践、逆境の乗り越え方、後から来る者たちに伝えたいこと、老いて輝く人と老いて衰える人の差を交えつつ、「倦まず弛まず」を象徴する道場氏の生き方に迫りました。
その一部をご紹介いたします。
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──道場さんは今年の1月3日で満93歳を迎えられましたが、実に矍鑠とされていますね。
この道一筋に歩んで75年、若い時から料理に打ち込んできた勲章でしょうが、年の割には姿勢がいいって言われます。
ただ近頃は、呂律が以前と違うような気がして、今度から小唄を習おうと思っているんですよ。声を出す訓練をしたほうがいいなと。
──充分明瞭なお声をされていますが、93歳で新たなことに挑戦される姿勢に感服します。4年前にはYouTubeチャンネル「鉄人の台所」を始められましたね。
フジテレビの人気番組『料理の鉄人』のディレクターをやっていた田中経一さんが全面的に企画や編集を手掛けてくれているんです。
冷蔵庫の中にある食材を使って家庭料理を紹介しているんですが、おかげさまで結構たくさんの方が見てくれているみたい。
──チャンネル登録者数は19万3000人に及んでいます。
ああ、それは有り難いことです。これまでは店の料理ばかりやってきましたから、家庭料理は家庭料理で新しい発見が随分あるので楽しいし、感謝しています。
例えば、最近反響が大きかったのは「海老とリンゴの一つ揚げ」。海老とリンゴって合うの? と思うかもしれませんけど、これが何とも絶妙でおいしいんですよ。
──その柔軟な発想はどこから来るのでしょうか?
僕は「交わりは進化なり」とよく言っているんですが、一見意外な食材を合わすことで新しい料理が生まれる。
その代表作が、日本料理で使われることのなかったチーズと白味噌を組み合わせて創作した「チーズの西京焼き」で、これは当店の看板メニューになっています。
若い時からそういうことをやっていたものだから、同業者の先輩に「あれは日本料理じゃない」って言われたりもしました。
だけど、伝統を重んじることよりもお客様が喜んでくれるほうが先だと思うんです。
もちろん伝統の中でよいところは取り入れるべきですが、それをただ踏襲するのではなく、新しいものを自分で発見して創意工夫していく。伝統と革新の追求。それが生きた料理です。
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