本気で狙うノーベル平和賞。ウクライナ戦争を「ロシアへ割譲」案で早期に終わらせたいトランプの本音

2024.04.11
 

単なる功名心。ウクライナ戦争の早期終戦を図りたいトランプの本音

では、ウクライナ戦争の早期終戦で幕引きを図りたいトランプ氏の本音はどこにあるのだろうか。1つに、トランプ氏は本気でノーベル平和賞を狙っているとも言われる。トランプ氏は大統領在任中、イスラエルとアラブ諸国の関係発展に尽力を注ぎ、イスラエルがUAE、バーレーン、モロッコ、スーダンとそれぞれ国交正常化を果たし、そこで仲裁役を果たした。これを受け、米共和党のテニー下院議員は今年1月にトランプ氏をノーベル平和賞に推薦したと明らかにした。

また、トランプ氏は北朝鮮の金正恩氏とベトナム、シンガポール、板門店と3回も対面し、米朝首脳会談を行った。トランプ氏は北朝鮮の指導者と初めて対面する米国大統領となったが、トランプ政権下では北朝鮮を巡る緊張は大きく緩和され、同氏は朝鮮半島の緊張緩和、北朝鮮の核・ミサイル問題の解決を図ることでノーベル平和賞を狙っていたともされる。

こういった過去に照らせば、ウクライナ戦争の早期終戦はその延長線上で考えられる。ノーベル平和賞を狙うトランプ氏からすると、戦争が続くウクライナはかつてないチャンスとなり、就任早々に両国を終戦させることで、その後の政権運営でそれを強くアピールしていく狙いだろう。

しかし、これは中国に間違ったシグナルを与えかねない。これまで世界の政治と経済を主導してきた米国が外国の紛争に関心を持たないばかりか、ある国が軍事侵攻してもそれに異議を唱えないと中国が理解すれば、台湾への軍事侵攻のハードルは大幅に低くなる恐れがある。中国が最も警戒するのは台湾防衛における米軍の関与であり、そういった可能性が低くなればなるほど、中国の野心的な行動はエスカレートするだろう。

image by: Drop of Light / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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