◆脂肪肝
異所性脂肪の代表格が脂肪肝です。脂肪肝とは、文字通り肝臓に脂肪が蓄積した状態です。近年、30代~40代を中心に増加傾向にあります。
日本人間ドック学会が2016年に発表した「全国集計結果」では、「肝機能異常」のある人は、20年前と比較すると10.5ポイント上昇して、男性の40.2%、女性の22.8%にみられました。これらのほとんどが脂肪肝と思われます。
脂肪肝は
- 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:nonalcoholic fatty liver disease)
a)単純脂肪肝:肥満などによるもの
b)非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:Non-Alcoholic SteatoHepatitis) - アルコール性脂肪肝:飲酒によるもの
- 妊娠に伴うもの:急性妊娠性脂肪肝(AFLP:Acute Fatty Liver of Pregnancy)
などにわけられます。
NAFLD(nonalcoholic fatty liver disease、非アルコール性脂肪肝疾患)は、アルコールを原因としない脂肪肝です。NAFLDの8割から9割は炎症や線維化を伴わない「単純性脂肪肝」です。多くは肥満が関係します。単純脂肪肝の予後は良好です。
非アルコール性の脂肪肝はかつては、放置してもさしたることはないと言われていましたが、近年、上述の「NASH」が認識されるようになり、様相が一変しました。
非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis)を略してNASHです。NASHは、肝炎から肝硬変や肝臓癌に進展することもあり、結構こわいのです。NAFLDの1割くらいがNASHです。
結局、炎症を伴うか否かが、肝要ですが、単純性脂肪肝からNASHへ進行することもあります。
[肝臓に脂肪が蓄積→脂肪肝→非アルコール性脂肪性肝炎→肝硬変→肝癌]
このようにB型ウィルスやC型ウィルスや飲酒以外に、NASHからも肝癌になり得るので、油断は禁物です。
(☆)
・TNFα(ティエヌエフアルファ)
インスリンの働きを妨げる作用があります。内臓脂肪が増えると分泌が高まり、インスリン抵抗性をもたらし、糖尿病を引き起こしたり悪化させる一因になります。
・PAI-1(パイワン)
内臓脂肪の増加とともに分泌が高まり、血栓ができるとそれを融解させるプラスミンの働きを妨げ、血栓を大きくし、血流をさえぎる状態をつくります。メタボリックシンドロームでは、脂質異常症・高血圧・糖尿病があって動脈硬化が進行しますので、そこに血栓のできやすい状態が加われば、心筋梗塞や脳梗塞の危険が高まります。
・アンジオテンシノーゲン
血圧を上昇させる作用のアンジオテンシンの分泌を高めます。内臓脂肪がたまると分泌が増加して、血圧を上昇させ、高血圧を招く一因となります。
アルコールと糖質制限食の関係については次回とします。(次回につづく)
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