3.外国人労働者には課題も多い
ここで考えなければいけないのが、外国人労働者の問題だ。人手不足の現場では外国人労働者のニーズが高い。なぜ、日本人ではなく外国人か。日本人の給料は高く、外国人の給料は安くて済むと考えているからだ。
しかし、外国人労働者といっても、基本的に日本人と最低賃金は変わらない。そして、生活支援や教育にもコストが掛かる。単純な日雇い労働者ではないのだ。
外国人労働者といっても、一生懸命働くとは限らない。権利の主張が強い人もいるし、さっさと仕事をやめ、生活保護に依存する人も出てくるだろう。つまり、米国やEU諸国が抱える移民問題と同様の社会問題が生じる可能性が高いのだ。
先進国の中で、日本の賃金水準は高いとはいえない。しかも、円安が続けば、現地への仕送りは目減りしてしまう。日本人の若者もオーストラリアの高賃金に惹かれて出稼ぎにいく人もいるくらいだ。外国人労働者の立場に立てば、果たして日本を選ぶだろうか。
政治的な問題もある。日本の縫製業は、中国人研修生に依存していたが、コロナ禍により全く来なくなった。国内でも外国人研修生制度は奴隷制度だという声が上がり、法的な規制も強まっている。結果的に中国人研修生が来なくなって経営が行き詰まった縫製工場も少なくない。
現在、コンビニ、スーパー、専門店、飲食店等では、猛烈な勢いでセルフレジ、タブレットによる発注システムが普及している。人手不足の状態が続いたことで、ようやくデジタル投資が進んできたのだ。もし、外国人労働者に依存すれば、デジタル投資は進まなかっただろう。そう考えると、安易な外国人労働者依存は日本の体質を弱くし、リスクを高めるともいえる。
4.既存ビジネスの見直しの時期
ついつい、我々は既存ビジネスが正しいものと考えてしまう。組織も業務フローも既存のものが正しく、それを守ることが安定につながると考える。しかし、本当にそうなのか。
そもそも、黒字リストラで会社から追われる人材は、その会社にとって不要であると判断された存在だ。こんなことは、世界では日常茶飯事であり、珍しいことではない。むしろ、必要のない人材まで長く雇用してきた日本企業が珍しい存在なのだ。
人手不足問題も十分な賃金が支払えない仕事に人が来ないのは当然である。下請けは仕事さえあれば安定したビジネスモデルだ。しかし現在は、元請け、下請けを含めたサプライチェーン全体の競争が起きている。
更にいえば、限られた人的資源とビジネス資源を産業間で奪い合っていると見ることもできるだろう。利益の上がらない産業は淘汰されるのだ。
そう考えると、既存ビジネスが行き詰まるということは、事業撤退、事業転換の時期に来ているということでもある。企業は変わらなければならないのだ。
それをいち早く感じた企業が黒字リストラという手段を採用したのだろう。逆に、外国人労働者に依存しなければ生きていけないということは、日本という立地には適していないビジネスモデルであるということだ。
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