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日本にも欲しい?韓国の老後資金の“足し”になる住宅年金の仕組みとは

韓国の老後、貯蓄もなく、年金も少ない状況で生活費を払っていくのも苦しい人たちが大勢います。それを解消するために2007年に発売した住宅年金というものについて無料メルマガ『キムチパワー』の著者で韓国在住歴30年を超え教育関係の仕事に従事している日本人著者が詳しく紹介しています。

ちょっと便利、住宅年金。日本にもある?

職場を定年退職した後、10年間警備員として働いているチェ某氏(72)の最大の心配は、この仕事をいつまでできるか分からないということ。最近、膝の手術まで受けて厳しい警備業務をするのが手に余るが、だからといって月給なしで100歳時代を生きていく自信がないと言う。

子供たちが結婚してゆき子供たちの賃貸マンションなどを支援するためにお金がかかっているし、貯めておいたお金もあまりない状態だ。家庭を築いたばかりの子供たちに「金を少々送れ」というのも恥ずかしいし、チェさんは毎日ため息ばかりついている状況だ。

チェさんの事例のように引退後、最も大きな心配は当然ながら毎月入ってくる月給が途絶えるという点だ。サラリーマン生活をしながらなんとか手に入れた自分らの家一軒以外には、財産になるようなものもない。収入源のない引退者は心配がさらに大きくならざるを得ない。

問題は、引退したからといってお金を使う必要がなくなるわけではないということ。むしろ体のあちこちが痛くなったりするわけだから、むしろ出費はますます増加するものと考えなければならない。だからといって、住んでいた自分らの持ち家を売って、安いところにチョンセ(韓国式の方式で大きな頭金を入れれば出るときにその金額が全額帰ってくるもの)を借りて引っ越すのも簡単ではない。

一生生きてきた生活半径を変えなければならない問題からはじまり、余生を借家人として転々とするはめになることも、頭に描いてきた引退ライフとは距離がある。夫婦基準の老後最小生活費は月231万ウォン(264000円)という。国民年金受給者の月平均受給額は62万ウォン(7万円)。最小生活を維持するために必要な170万ウォン(19万4000円)はどうやって手に入れるべきか?

年金専門家たちは、韓国の世帯の特性上、住宅年金が老後に対処する良い選択肢になりうると語る。ほとんどの資産が、迅速な現金化が困難な不動産に縛られているためだ。統計庁によると、昨年基準で65歳以上の高齢世帯の平均資産は5億714万ウォン(5795万円)だが、このうち81.3%である4億1224万ウォン(4712万円)が不動産資産であることが調査の結果わかっている。

住宅年金は住宅を担保に預けて、自分の家に居住しながら一生の間毎月年金を受け取るように国が保証する商品だ。韓国住宅金融公社が運営し、2007年に発売して4月末基準で12万6,700人が加入している。

夫婦のうち1人が55歳以上で、公示価格12億ウォン(相場約17億ウォン=1億9千万円)以下の住宅であれば加入できる。多住宅者(住宅を何個も持っている人間)も加入が可能だが、住宅の合算価格が12億ウォン(1億3700万円)以下でなければならない。住宅公示価格が12億ウォンを超過した2住宅保有者も、3年以内に1住宅を処分する条件で加入することができる。

住宅年金の月支給金は、加入当時の年齢(夫婦の年少者基準)と住宅価格によって決定される。同じ価格の住宅でも、年齢が低いほど支給金が少なく、高齢に加入すれば支給金が大きい仕組みだ。加入後、住宅価格が上がったり下がったりしても、月々の支給額は一定に保たれる仕組みになっている(価格の変動があっても年金の変動はないということ。国が保証しているから)。

加入者と配偶者の死亡まで保有住宅で生涯居住と生涯年金支給を保障している。一定期間(10~30年)年金を受け取る方式を選んでも生涯居住は保障される。居住地を移らなくても毎月一定金額をもらえるという点が最大の長所だ。

毎月同じ年金額を受け取る定額型、最初に多くの年金額を受け取る初期増額型、年金受領額をどんどん増やす定期増加型がある。初期増額型は初期一定期間(3~10年)定額型より多くの金額を受け取り、以後は初期金額の70%を受領する方式で、子供の結婚、医療費および余暇活動などで引退初期に大金が必要な場合に選択すればベターだ。定期増加型は3年ごとに4.5%の年金額を増やして受け取ることができ、相対的にインフレに備えることができる方式だ。

では、いくらもらえるのか? 相場12億ウォン(1億3700万円。例としてはちょっと高すぎだが!)の住宅を例に挙げると、55歳の加入者が定額型を選んだ場合、174万ウォンが支給される。80歳の加入者は393万ウォンを受け取ることができる。住宅年金加入者の年齢平均である72.1歳を考慮し、70歳で計算すると327万ウォンの受領が予想される。ソウルのマンション売買の中位価格(相場9億5,000万ウォン)を考慮し、公示地価6億ウォンの住宅に加入すれば、70歳基準で毎月280万ウォンを受け取ることができる勘定だ。住宅年金加入者の平均では月122万6,000ウォン(住宅価格3億8,500万ウォンの場合)を受領しているようだ。122万6,000ウォンといえば14万円くらいとなる。国民年金のほかにこれくらい入ってくる金があれば余裕ある生活ができよう。

該当住宅にローンが残っていても加入が可能だ。住宅年金に加入する際、将来受け取る年金の一部(融資限度額の最大90%)を一時金として受け取り、担保融資を返済することができる。

相場2億5,000万ウォン未満(2857万円)の住宅所有者は、一般型に比べて月支給金を最大20%さらに支給する優待型住宅年金商品に加入できる。

2024年6月の今月から2億ウォンから2億5,000万ウォンに加入条件が拡大されより多くの世帯が恩恵を受けるようになった。相場2億3,000万ウォン(2630万円)の住宅を保有している70歳の住宅年金加入者が優待型商品に加入すれば、月支給金が67万9,000ウォンから73万9,000ウォン(8万4500円)に増えることになる。

加入者が死亡しても年金額の100%を配偶者が継承できる点も長所だ。国民年金や公務員年金など他の公的年金は遺族が受け取ることができる金額が40%に減ることになるがそれとは違うのだ。ただし、配偶者が承継するには、子供の同意が必要だ。

住宅年金が所有権を加入者が持ち、これを担保に融資を受ける商品であるため、加入者の死亡により配偶者と子供の両方が年金に対する所有権を主張することができるからだ。これにより、住宅年金をめぐって親子間の争いが発生する可能性もあるわけだ。

これに対し、住宅金融公社は所有権を加入者が持つ抵当権方式の他に、所有権を公社に移転する信託方式を運営している。加入時に信託契約を通じて所有権を公社に渡すことになるが、加入者の地位は配偶者にのみ継承されるようになるので、加入者死亡後に子供などの同意なしにも配偶者が年金を受け取ることができる。

加入者夫婦が全員死亡したら、住宅の処分価格と支給された年金額を精算する手続きがある。お金が余ったら、残高は相続人に支払われる。

一方、支給された年金額が住宅売却金額より大きいからといって、子供にこれを負担せよ(請求する)ということはない。不足分は国(住宅公社)が負担するやり方だ。だから長生きすればするほどお得な商品となる。また、子供が親に支給された年金額をすべて支払い、住宅を買い取ることもできる。

いつ住宅年金に加入するのが有利でだろうか。年金額は加入時点を基準に計算され、住宅価格が大幅に上がっても反映されない。つまり、なるべく住宅価格が下落する前に高い時に加入した方が有利だという話だ。

不便な点もある。まず、年金住宅加入中にも引越しすることはできるが、引越し当時の既存住宅と新しい住宅の担保価格を比較して既存住宅価格がさらに高い場合、年金額は減ることがある。

また、夫婦のうち1人以上は当該住宅に実居住しなければならない義務もある。ただし1.病院、療養施設入院、2.子供の扶養で他の住宅に長期滞在、3.療養院など老人福祉法上の老人住居福祉施設移住など例外を認めている。

最近、実居住例外認定事由にシルバータウン移住が追加された。これに対し住宅年金加入者がシルバータウンに引越しを希望する場合、公社に事前承認などを受けた後、当該施設に移り、既存住宅には借家人を探して追加賃貸所得も得られるようになった。

住宅年金に加入したのに不動産価格が暴騰して解約を希望する場合、解約は可能だが、これまで受け取ってきた年金はもちろん、利子と住宅価格の1.5%水準である初期保証料まで一度に返さなければならない。また、解約日から3年は同一住宅を担保に再加入できない。

相場が12億ウォンを超える住宅を所有していれば、留意すべき点もある。年金額の上限基準が相場12億ウォンまでと設定されており、相場12億ウォンの住宅加入者と相場17億ウォンの住宅加入者の月支給額が同じだからだ。

離婚した配偶者には加入者死亡後、住宅年金が継承されないという点も記憶しなければならない。加入基準の法的配偶者を承継人に決めるため、再婚した配偶者も年金の移転を受けることができない。また、住宅を担保に年金が支給されるだけに、国民年金のように離婚をしたからといって年金額が分割されることもない。[韓国日報参照]」

image by: Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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