追いつめられたカーネル・サンダース、不屈の闘志に火がつきます。と言っても今回ばかりは現実の壁が立ち塞がりました。資産もない六十五歳の老人に金を貸してくれる銀行などありませんでした。
私なら首を括ります。
しかし、百折不撓の人カーネル・サンダースは己を奮い立たせます。金はなくとも試行錯誤の末に完成させたフライドチキンのレシピがある、彼はこのレシピを金にしようと思い立ちました。
オリジナルスパイスを提供し、調理法を伝授して契約料を受け取る、サンダースは高圧釜とスパイスを車に積み、アメリカ中のレストランを廻りました。車の中で寝泊まりし、試作品のフライドチキンが一日の食事でした。アポイントもなく飛び込みで訪れるため、門前払いは当たり前、話も聞いてくれないのが当たり前でした。サンダースは粘り強くフライドチキンを売り込みます。レストランの裏口で従業員たちに試作品を食べてもらい、調理場を借りて無償でフライドチキンをその店の客に提供しました。
こうした地道な営業活動により、サンダースのフライドチキンは評判を呼び契約を求めるレストランが増えていきました。
こうしてサンダースはケンタッキー・フライド・チキンのフランチャイズ化に成功、七十四歳になってフランチャイズ権を売却した時には、六百もの店舗を数えました。彼は九十歳で亡くなるまで、ケンタッキー・フライドチキンの顔として世界中の人々に親しまれました。
六十五歳からの逆転人生は、百折不撓の闘志がもたらしました。彼の人生を知るとカーネル・サンダースの人形に一礼したくなりますね。そんな苦労など素振りにも出さない好々爺然としたサンダース人形は人形でありながら、サンダースの素顔を伝えているのかもしれません。いかなる困難、障害に遭っても微笑みを以って対応したのではないでしょうか。障害物レースのような人生を、彼は堂々と完走したのでした。
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