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未知の料理に大らかマナー、美味い酒。「ガチ中華」が日本人を惹きつける3つの魅力

2022年には新語・流行語大賞にもノミネートされるなど、今やすっかり市民権を得た感もある「ガチ中華」。テレビ番組などでもたびたび取り上げられファンも急増中ですが、その魅力はどこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『j-fashion journal』では自らもガチ中華店に足を運ぶというファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんが、自身がそこまで心を引かれる3つの理由を紹介・解説しています。

【関連】中国の経済崩壊と深く関係。なぜ日本に「ガチ中華」店がゴリゴリに増えてきたのか?

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:ガチ中華に魅かれる理由

ガチ中華に魅かれる理由

1.未知の料理との遭遇

ガチ中華に魅かれる理由について考えてみたい。

第一に、未知の料理との遭遇である。日本では出会わない食材、調理法、味、香りを体験することで、お腹だけではなく、好奇心も満足する。

日本料理は、主に魚、野菜が中心だ。季節の変化と共に、様々な旬の食材が供される。

ヨーロッパやアメリカでは、牛肉の存在感が強い。牛の年齢や部位が細かく分類されている。

中華料理の肉は豚や羊、魚は淡水魚が中心だ。中国内陸部は新鮮な食材の入手が困難であり、干しなまこ、干しフカヒレ、干しツバメの巣等が珍重されている。これらの食材は高級中華専門で、ガチ中華ではお目にかからない。

ガチ中華の特徴は、辛い料理が多いことだ。唐辛子の辛(ラー)と、山椒の麻(マー)に特徴がある。

未知の食材が麻辛で調理される料理は、使ったことのない感覚や脳が刺激される。それが癖になるのだ。

2.よく食べ、よく喋り、よく笑う

第二には、よく食べ、よく喋り、よく笑うこと。日本では、静かに食事をするのがマナーとされる。だから、最初は中国人の喧しさに顔をしかめたものだ。しかし、中国の食事に慣れてくると、自然と大きな声で喋るようになった。

日本の食事は、そのメンバーで意味が変わる。どんなに美味しい料理が出たとしても、仕事相手と一緒の時は仕事モードを崩さない。家族や仲の良い友人と食事するときだけ、料理に専念できるのだ。

中国では、偉い人が一緒の時でも、美味しい料理が出れば、全員で一生懸命に食べる。偉い人がスピーチする場合も、食べるときには集中して食べ、話すときには集中して話す。話の切れ目には「乾杯」して、しばし食事に集中する。そしておもむろに話し出す。その繰り返しだ。

中国では、食事のマナーはあまり気にしない。ガツガツ食べようが、口から物が飛ぼうが、とがめられることはない。魚を食べ時に、テーブルクロスの上にペッと骨を吐き出すのも普通のことだ。

ガチ中華の店は、中国人が多く、中国語が飛び交っているので、こちらも中国にいるような気分になる。細かいことはいいから、旨いものを腹一杯食って幸せな気分になるのだ。

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3.中国酒の魅力

第三の魅力は、中国酒だ。脂っこいガチ中華料理には、さっぱりとしたビールと紹興酒が合う。紹興酒はもち米が原料の醸造酒で、アルコール度数は14~18度。ほんのりとした甘みがあり飲みやすい。昔は、砂糖や干し梅を入れて飲む人が多かったが、現在はストレートで飲む人がほとんどだ。室温で飲むか、お燗で飲むかを選ぶ。

一般的には3年ものか5年物、10年物まで。甕だしの場合、さっぱりした上澄みと、濃厚な底の部分を選べることもある。

昔の中国では、紹興酒は料理酒で、飲む酒ではないとされ、置いていない店も多かったが、最近は多くの銘柄が存在する。

中国の宴席の正式な酒は、白酒(パイチュウ)で、高粱や小麦が原料の40度以上の透明な蒸留酒。「乾杯」と言って、小さなショットグラスで一気に飲み干し、グラスの底を相手に見せる。

最も有名なのは「貴州茅台酒」で、一時期はバブルとなり価格が数十万円に高騰した。このボトルがテーブルに置いてあると、宴席のグレードが上がるとされている。

もちろん、労働者でも飲める安い白酒もある。正直言って、日本人には違いがよく分からない。

多くの日本人は、白酒は匂いがきつ過ぎて飲めないという。しかし、中国で慣らされると、最初は臭いと思っていた匂いが華やかに感じられるようになる。意外に、翌日には残らないのも特徴の一つ。

ガチ中華というなら、白酒にも挑戦してほしいものだ。

4.ガチ中華は異文化体験

まとめると、ガチ中華の魅力はある種の「異文化体験」である。

中華料理は、中華包丁と中華鍋でほとんどの料理を素早くつくる。一度に数人分の料理を作り、大皿に盛り付け、みんなで取り分けて食べる。とても合理的だ。

日本料理は、料理によって器を選び、一人分の料理をきれいに盛り付ける。味だけではなく、目でも食べるのだ。

中国人は、日本料理は高コストだと言っていた。日本人には当たり前のことなので、気にもしていなかったが、考えてみればその通りだ。

中華料理は素材の鮮度の悪さを、強い味付けでごまかしている。刺身のように生で食べる料理はほとんどない。冷たい料理も稀だ。ニンニクやショウガなどのスパイスは毒消しの意味もあるのだろう。

日本人は、料理もご飯も箸で食べるが、中国や韓国では、ご飯は匙で食べる。中国の箸は太くて長く端は四角い。韓国の箸は金属製で細く平たい。日本の箸は、軽くて先端が尖っており、ご飯粒でもつかめる。

日本料理は箸で食べられるような大きさに切り分けて出てくる。西欧料理は、大きな肉や魚をナイフで切り、フォークで刺して食べる。日本人にとって、西欧料理は切るとか刺すとか、野蛮な感じがするのだ。

日本料理と対極にあるガチ中華をたべて、大陸人の気分を思い描くのも楽しいではないか。

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編集後記「締めの都々逸」

「今日も元気に 大きな声で 飲んで笑って 食って酔う」

中国駐在が長い人は、たまに帰国すると窮屈さを感じるといいます。日本はいちいち細かくてうるさい。奥様から、箸の上げ下げから、ゴミの捨て方、洋服の脱ぎ方まで小言を言われる。あーあ、面倒くせえ、となるんですね。私は出張ベースでしか中国に行っていないので、それほど中国生活に染まっているわけではありませんが、それでも気持ちは分かります。

日本人は常に相手の気持ちや世間体を意識して生活しています。中国では、相手の気持ちなど考えずに自分の都合で生きてます。言いたいことを言い、やりたいことをやる。文句を言いたければ文句を言うし、喧嘩になっても気にしない。全員がそうだから、ストレスは溜まらないんです。

まあ、最近は不景気でお金もなくなり、別の意味でストレスが溜まっているようですが。

「日本人ももう少しだけ我がままになってものいいのではないか」とガチ中華を食べながら思うわけです。(坂口昌章)

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image by: Shutterstock.com

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