子供たちにとって最も楽しいはずの夏休み。しかし生活に困窮する家庭にとっては、その存在が重くのしかかっているのが現実です。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、多くのシングルマザー家庭の親たちが夏休みを大きな負担と考えている背景を解説。さらにかような家庭の子供の支援を民間に丸投げし、血税で海外視察という名の「夏のバカンス」に出かける自民党議員たちを強く批判しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:悲しい夏休み
納税するのもバカバカしい。困窮家庭に「悲しい夏休み」を強いる自民党政権
少し前のことですが、貧困子育て家庭の支援などを行なっているNPO法人「キッズドア」が、今年5月27日から6月3日にかけて実施した子育て家庭に対するアンケート調査の結果が、一部で話題になりました。まず「物価高騰が続く中、去年と比べて現在の家計はどう変化したか」という設問に対して、「とても厳しくなった」が77%、「やや厳しくなった」が21%、合わせて98%の世帯が「悪化した」と回答しています。
しかし、これは当たり前のことなのです。何故なら、このアンケート調査は、全国の子育て家庭をランダムに選んで質問したのではなく、生活に困窮している子育て家庭1,800世帯あまりを対象に実施したものだからです。「食料品が高くて買えなくなった」「子どもに満足な量を食べさせてあげられなくなった」などの個別回答が相次いだのも、生活に困窮している子育て家庭が対象のアンケート調査なのですから、当たり前のことです。
それよりも、このアンケート調査の結果で話題になったのは「夏休み」に関する設問の回答でした。「夏休み」に関して、何と全体の半数近い47%が「今より短い方が良い」、さらに13%は「無くても良い」と回答したのです。その理由の最多は「子どもが家にいることで生活費が掛かる」というもので、他には「夏休みに特別な体験をさせる経済的な余裕がない」という回答が続きました。
子どもにとって「夏休み」は1年で最大の楽しみのはずなのに、生活に困窮している家庭の親は、学校が休みになり給食がなくなるため、負担が増えると言うのです。日本の貧困子育て家庭は、その大半がひとり親家庭なので、働きながら昼間の子どもの面倒を見るのは、経済的にも体力的にも大きな負担なのです。
また、子どもが学校へ行き、自分が仕事をしている昼間は、家の電気代はほとんど掛かりませんが、子どもが家にいる夏休みは、ずっとエアコンやテレビなどが稼働しているため、電気代も余計に掛かります。こうした背景から、シングルマザーの多くが、夏休みは「今より短い方が良い」「無くても良い」と思っているのです。
G7の中では最低で、世界的に見ても途上国レベルだった日本の子どもの相対的貧困率は、第2次安倍政権下が歴代最悪の16%で、6人に1人の子どもが貧困でした。厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、2021年には相対的貧困率が11.5%にまで改善しましたが、これは子育て家庭の大半を占める「両親がそろっている子育て家庭」を含めた総合値であって、ひとり親家庭だけを見ると、相変わらず44.5%、2人に1人の子どもが貧困なのです。
これは、OECD43カ国の相対的貧困率の平均31.9%を大幅に上回り、貧困率が最も高いブラジルの54.8%や南アフリカの49.8%などに次いで、世界ワースト10に堂々とランクインしている酷さなのです。そして、その最大の原因が「男女の賃金格差」なのです。
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3人に1人の子どもが1日3度の食事を摂れないという現実
最新の調査では、同じひとり親家庭でも、父子家庭の平均年収が約518万円なのに対して、母子家庭の平均年収は約272万円、もはや「ほぼ2倍」と言ってもいいほどの賃金格差があるのです。これは、男性の多くが正規雇用であるのに対して、女性は非正規雇用が多いという雇用形態の違いだけでなく、女性は正規雇用でも同じ会社の男性社員より平均150万円も年収が低いという性差別による結果です。
先月7月20日から28日にかけて、各地の32支援団体で作るNPO法人「ひとり親家庭サポート団体全国協議会」が、全国47都道府県のひとり親家庭を対象に行なったアンケート調査では、2,104人の有効回答のうち、父子家庭はわずか1.5%、全体の98.5%が母子家庭でした。この回答比率からも「困窮しているのはシングルマザー家庭」だということが見えて来ます。
このアンケート調査では「電気代が高騰しているためエアコンの使用を控えようと思うか」との設問に、半数近い46%が「とても思う」、33%が「思う」、合わせて8割近くが「エアコンの使用を控える」と回答しました。また、ガス代と水道代を節約するために「風呂やシャワーは毎日は使わない」との回答が33%、3世帯に1世帯が「風呂やシャワーを我慢する」という結果になりました。
学校給食がなくなる夏休みの子どもの食事については、「1日3食」が64%、「1日2食」が32%、「1日1食」が2%、3人に1人の子どもが1日3食を食べられないということが分かりました。また「子どもは1日2食で自分は1食」「夏休みは米の消費が増えるので自分のご飯を抜いている」などの個別回答もありました。そして、全体の41%が「高騰しているため米が買えないことがあった」と回答しています。日本の主食であるお米が買えない人が、こんなにいるのです。
子ども食堂の「お手伝い」を通して見えた現実
…そんなわけで、今年で3年目になりますが、あたしは毎週木曜日、近所のお寺が運営している子ども食堂のお手伝いをして来ました。普通は「ボランティア」と言いますが、あたしはこの言葉が嫌いなので「お手伝い」と言っています。食事を提供するのは午前11時から午後5時までの6時間ですが、あたしは調理があるので朝から入っています。
お手伝いを始めた頃は新型コロナ禍だったので、いろいろな規制も多く、食事をしに来る子どもは1日に20~30人程度でした。こちらもあまり1カ所に人を集めたくないので、フードバンクから提供される食料品をダンボールに詰めて希望者に無料配布するフードパントリーをメインにしていました。
それでも、食事をしに来る子どもは少しずつ増え続け、去年の春には1日50人前後になりました。子ども食堂は誰でも自由に食事ができるわけではなく、まずは親と簡単な面談をします。あたしは運営面は担当していないので詳しくは分かりませんが、特定の食材にアレルギーを持っている子ども、持病を持っている子どもがいるので、そういうことをチェックするそうです。
そんな中、去年5月に新型コロナの感染症法上の位置づけが2類から5類に緩和されましたが、これは科学的根拠のない政治的な措置なので、子ども食堂でのあたしたちのマスク着用や手指の消毒は当然のこと、テーブルや食器類の消毒もそれまで通りに続けました。
すると、7月後半になって、突然、申し込み者がバタバタと増え始めたのです。ほぼ全員がシングルマザーで、子どもを連れてお寺にやって来て、子ども食堂に申し込んで行くのです。これもあたしは担当していないので詳しくは分かりませんが、7月の最後の木曜日にお手伝いに行くと、それまでの1.5倍以上、何と80人を超える子どもが食事に来たのです。
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岸田政権下で9,000カ所を超えてしまった子ども食堂
申し込み状況を見て、調理責任者がいつもより多めに食材を用意していたので何とかなりましたが、増えたのは小学生が9割、中学生が1割でした。結局、この状況は、夏休みの間ずっと続きました。そして、2学期が始まる9月になると、増えていた小学生と中学生は来なくなり、それまで通り、小学生以下の子どもたちがメインの50人前後に戻ったのです。
子どもの数はジワジワと増えつつも、昨年12月までは50人台でした。これが大きく変化したのが、昨年の年末が近づいて来た時です。夏休み前と同じように申し込み者がバタバタと増え、あっという間に70人台になったのです。そして、それは年が明けて今年になってからも変わらず、毎週、平均して70人前後が来るようになりました。
先月7月に入ると、去年と同じように申し込み者が急増し、一気に120人を超えました。ここの子ども食堂は、一緒に来た親や兄弟も希望すれば食事を提供しているので、夏休みに入った先々週の7月25日には、この日のメニューのチキンカレーを140人分も用意しました。しかし、それでも足りなくなり、最後はフードパントリーのレトルトカレーで対応しました。
…そんなわけで、民主党政権下ではゼロだった子ども食堂ですが、7年8カ月に及んだ第2次安倍政権下では、全国6,000カ所にまで拡大しました。これは当時の安倍首相が、毎年増額する防衛予算の穴埋めのために、生活保護の母子加算の削減など福祉予算を削りまくったことも一因と見られています。
現在の岸田政権になってからも子ども食堂は絶賛急増中で、昨年1年だけでも約1,700カ所も増え、昨年末には全国で9,000カ所を超えてしまいました。そして、今年に入ってからも増え続けているのですから、それだけニーズがある、つまり、それだけ生活に困窮している子育て家庭が増えているということでしょう。
これはあくまでも、あたしがお手伝いしている子ども食堂の状況ですが、利用者の大半はシングルマザー家庭の子どもたちです。あたしがお手伝いしている子ども食堂は毎週木曜日ですが、仲良くなったママさんに聞いたところ、月曜はあっちの子ども食堂、火曜はこっちの子ども食堂と、複数の子ども食堂をカケモチして利用していると言っていました。
困窮家庭の支援を民間に丸投げする自民党政権
現在、全国のシングルマザー家庭は約120万世帯で、その半数が生活に困窮しています。そして、1世帯に子ども1人としても、約60万人の子どもが1日3食を食べられない「悲しい夏休み」がやって来ました。しかし、そうした子どもたちを1人でも多く救おうと最前線でがんばっているのは、政府でもなく、岸田首相が鳴り物入りで設立した「こども家庭庁」でもなく、あたしたち民間人なのです。
そして、恥も外聞もない自民党の国会議員たちは、自国の子どもたちの貧困問題をあたしたち民間人の善意に丸投げしたまま、国民から巻き上げた税金を使って「海外視察」という名の夏のバカンスを楽しんでいるのです。自民党議員の海外視察の実体は、エッフェル姉さんの一件で周知されましたが、この夏も自民党の裏金議員たちは、何と百人以上が性懲りもなく海外へ遊びに行くのです。本当に納税するのがバカバカしくなる今日この頃です。
(『きっこのメルマガ』2024年8月7日号より一部抜粋・文中敬称略)
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