8月2日、正式に民主党の大統領候補として指名されることが確定したハリス副大統領。一部激戦州ではトランプ氏をリードしたとも伝えられていますが、誰が米大統領になろうとも日本の軍拡路線に「待った」はかからないようです。今回のメルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』ではジャーナリストの有田芳生さんが、そう判断せざるを得ない理由を解説。その上で、日本で政権交代が起きない限りこのような状況は制度化され続いていくことになるとの認識を記しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:岸田政権が進める「従属帝国主義」の危険性
極めて危険。岸田政権が国民無視で進める「従属帝国主義」
11月に行われるアメリカ大統領選挙は、81歳のジョー・バイデン大統領と78歳のドナルド・トランプ前大統領の闘いとしてはじまり後者が優勢に進んできた。
「もしトラ」と呼ばれたように、再びトランプ政権が誕生すれば、米中関係だけでなく、地球温暖化対策からの離脱や難民拒絶政策など孤立化政策が進み、日本の安保政策にも大きな変動が起きる可能性がある。
もっとも北朝鮮との関係では、大統領時代に保守派の反対で思うような政策が取れなかったため、こんどは朝鮮戦争の休戦協定を恒久的な平和協定に進めるなどの劇的対応があるかもしれない。その課題についてだけいえば朝鮮問題関係者のなかでは、期待感がある。
しかしバイデンが候補者を降り、59歳のカマラ・ハリスが候補者になることが確実となり、大統領選の行方も波乱ぶくみとなっている。トランプ先行の世論調査だったが、ハリス登場で差が狭まりつつあるからだ。
『朝日新聞』が「百年 未来への歴史」と題する大型連載をはじめた。序章の「瀬戸際の時代」(8月2日付け)に驚くべき事実が紹介されている。国内総生産(GDP)という指標は、1940年代に米英が開発したという。資源や物資など戦争を遂行する生産力を表す。
日本は1920年には世界全体に占めたのは3.4%。それが戦後の高度経済成長で急伸し、1990年には8.6%となり「ジャパン・アズ・ナンバーワン」(エズラ・ヴォーゲル)と呼ばれるほどだった。ところが2022年には3.7%に落ち込んだ。中国などが経済成長を果たしたのに対して、日本は少子高齢化が急速に進み、先進7か国(G7)のなかでもっとも低成長となった。指標でいえば100年前と同水準になってしまったのだ。それでもGDPは世界4位の水準だが、ゴールドマンサックスの予測では、2050年に6位、75年には12位に転落するという。
そんな経済水準にあるにもかかわらず、岸田政権は2027年の防衛費をGDP比で倍増する方針を取っている。24年度予算では約8兆円が計上されたが、27年度には11兆円になる。国家権力の核心は軍事だ。日本は米軍の指揮下にあって、従属的かつ能動的に軍拡路線を進めていく。
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