生年月日が同じなら、年齢はまったく一緒ですが、細胞や臓器の機能などから示される「生物学的年齢」は人それぞれで、老化のスピードはさまざまな要因で変わってきます。今回のもりさわメンタルクリニックの無料メルマガ『精神医学論文マガジン』では、子ども時代に逆境体験のある人が妊娠した際に、生物学的な加齢に影響を与えるとするイギリスの最新研究を紹介。この研究では、妊娠による生物学的加齢が、生まれた子にも影響するのかについても調査しています。
母親の子ども時代の逆境体験と妊娠期の生物学的加齢
◎要約:『母親の逆境体験は妊娠期の母親自身の生物学的加齢に影響を与えている可能性があるが、子どもへの影響は明らかではない』
今回は、母親が体験した子ども時代の逆境体験が、妊娠期における母親の生物学的加齢と、それが子どもにも受け継がれているかを調べた研究をご紹介します。
母親の子ども時代の逆境体験と、妊娠期の母親と子どもの生物学的加齢
Maternal Adverse Childhood Experiences and Biological Aging During Pregnancy and in Newborns
イギリスの大規模な母子の健康に関する研究 Avon Longitudinal Study of Parents and Children (ALSPAC) からの、出生後のイベントの影響がどのように遺伝学的要素に及ぶのか(遺伝子配列によらないエピジェネティクスの分野)を調べたデータを元にしています。
上記のデータの中で、母子883組(母の平均年齢29.8歳)が対象となりました。結果として、以下の内容が示されました。
- 母親の子ども時代の逆境体験を示す尺度(ACE scores)が、生物学的な加齢(GrimAge EAAで測定)と関連を示していました。
- 母の逆境体験の尺度は、子どもの生物学的加齢とは関連していませんでした。
- うつは母親の生物学的加齢とは関連していましたが、子どもとの関連はありませんでした。
今回は明らかではありませんでしたが、母親の逆境体験が母体の状態に影響を与えることで、子どもへも何らかの影響を及ぼすことが考えられる内容でした。
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