オムライスを作り続けて総フォロワー200万人超え…「オム兄」が教える未経験でもバズる方法

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ショート動画クリエイターにインタビューし、その成功の秘密を探るシリーズ「バズるショート動画の裏メソッド」。今回登場するのはオムライスを作り続けて総フォロワー数200万人超え、赤い髪と赤い服がトレードマークのユニークなキャラクター、オムライス兄さん。彼がドヤ顔で披露するオムライス動画は、国内外の子どもから大人まで絶大な人気を誇ります。しかし、彼はもともと料理とは無縁で、オムライスを選んだ背景には意外な戦略が隠されていました。徹底した市場分析を元に、次々とヒットを飛ばす彼の成功の裏側を迫ります。

プロフィール:オムライス兄さん

1996年兵庫県生まれ、SNS総フォロワー数200万人を超えるオムライス系クリエイター。PPP STUDIO所属。トレードマークの赤パーカーとドヤ顔と「オム兄」の愛称で若者から大人にまで多大なる人気を誇る。「ご注文は必ず上から目線でお願いします」というアンチコメントを引用した動画で大ブレイクし、自身がプロデュースした「ドヤ顔ケチャップ」が3万円で転売されたことでも話題に。そのほか数々の企業コラボや芸人コラボでも成功を収め、「TikTok Creator Awards Japan 2023」において「Gourmet Creator of the Year」を2年連続(2022年,2023年)で受賞している。

@omurice_omelette @kuromasugames への返信 【永久保存版】ふわとろオムライスの作り方&ドヤ顔講座 #オムライス #tiktokfood #omelette #ドヤ顔 ♬ Lone Rider – Stephan Sechi


赤い服とドヤ顔でα世代に大反響…「オム兄」成功の裏に隠されたしたたかな勝算

──小学3年生の息子がいるのですが、オム兄(オムニイ)のことが大好きでいつも動画を見ています。

ありがとうございます。学校でも話題になっていたり、親子で見てくれる方も多くて本当に嬉しいです。

──それにしてもYouTubeがフォロー100万人、総フォロワー数も200万人超えと、オムライス一筋でここまで来れるものなのですか?

そうですね。3年ぐらい前からオムライス兄さんやってるのですが、実際にはオムライス一本というわけではなく、色んなコラボをしたり、ネタをやったりはしているのですが(笑)

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──散々聞かれているとは思いますが、なぜ「オムライス」だったのですか?

実はですね、ちゃんとデータに基づいているんですよ。

──データというと?

当時、Instagramのハッシュタグで「オムライス」で検索したら300万個ぐらいあったんでねすよね。

──300万!!

それでYouTubeでも「オムライス」「作り方」で調べたら200万回再生の動画がごろごろあって。需要は確実にあるなとわかって、オムライスに特化しようと思ったんですよ。

──オムライスが好きとか料理が得意というわけではなく、完全に数字で?

そうですね。「肉じゃが」「カレー」に次ぐ人気の手料理が「オムライス」だったんじゃないですかね。

──でも逆に言うと「料理」ジャンルはレッドオーシャンで成功するのは大変なんじゃないですか?

はい、確かに料理系やレシピ系はバズっていて市場も大きかったのですが、ショート動画でやってる人は少なかったんです。

──そうだったんですね。

それで当時、「ザ・洋食屋キチキチ」の幸村元吉さんのYouTubeチャンネルでオムライス動画が2000万回再生ぐらいバズっていて、これを日本版にアレンジしようと思ったんです。

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──これも再生回数をもとにしたんですね。昔からこういう分析が得意だったのですか?

大学在学中に自分でブログビジネスを始めてそこでマーケティングの知識を身に付けたんですよ。それでその後、YouTuberの編集マンもやったりして、自分なりにどのような動画がバズるのかなって分析をして、このノウハウをショート動画に転用しようと考えたんです。

──具体的にどのようなことを考えたのですか?

やはり三大欲求が一番強いですよね。

──三大欲求?

性的コンテンツ、料理グルメ系コンテンツ、そして睡眠欲あまりはないのですが、これに代わるのがエンタメ系コンテンツ。この3つが強いんですよ。

──なるほど。

なので料理とエンタメをかけあわせたコンテンツを作って差別化をしようと思ったんです。誰もいない市場でいかに自分のポジションを取るか、それでさっきのオムライスに特化したら狙い通りバズったんです。

──完全に計算し尽くした設計だったんですね。単にオムライスと子どもが好きで「お兄さん」を楽しんでいるのかと思っていました。

お兄さんをやってるのも実は意味があって、実はこのキャラにもバズる仕掛けがあるんですよ。

──子どもに刺さるにはどのような仕掛けがあるのか具体的にぜひ教えて下さい。

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秘伝1:ドヤ顔と高い声…子どもに刺さるキャラを作る。

僕が最初にバズったのは、「ご注文は必ず上から目線でお願いします」という企画だったんです。

──上から目線とはどういうことでしょう?(笑)

よくコメント欄で「青いオムライスを作れ」とかの無茶ぶりを受けるのですが、それに応える形でオムライス作りをするフォーマットを作ったんです。

@omurice_omelette @noa220824 への返信 ダイエッター向け【世界一食欲が失せる地球オムライス】です。#オムライス #omelette #tiktokfood ♬ Lone Rider – Stephan Sechi

──TikTokのコメント欄から生まれるバズってやつですね。

これ僕の場合、少し違っていて、書いてるのがだいたい小学生なんですよ。なので少し言葉足らずになってたり。

──そうなんですね。

なので僕があえて裏アカで意味がわかるように投稿し直してたりしてます。バズりやすい言葉に置き換えて、上から目線になるように変換してました。

──まさか裏アカウントで自分でやっていたとは(笑)

一応実際にあったコメントなので。それに応える形でドヤ顔を料理を出したらバズるというフォーマットができたんですよ。

──それも仕掛けというか狙いというか。

そうです。分析してやってました。

──オム兄といえば「ドヤ顔」ですが、あれも狙いがあったのですか?

あれもとはドヤ顔じゃなくて、変顔のつもりだったんですよ。

──変顔?

もともとはヒカキンさんやTikTokのトップのカビー・ラメさんが変顔をやっていたので自分も取り入れたんです。ただ「上から目線で」企画では変顔ではなく、視聴者を煽っているほうの「ドヤ顔」と言われまして。

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──確かにコメント欄で「ドヤ顔」って書きたくなる(笑)

そうですね。視聴者のほうがエンタメとして捉えてくれて良かったなと思います。

──オム兄の動画が子どもに刺さるのはこういう計算があるんですね。

そうですね。狙ってやっています。

──子ども受けを狙おうとしてもなかなかできないと思うのですが、なにか秘訣があるのですか?

ありますよ。高い声を出すんです。

──と、言いますと?

「さすがに無理やって〜」という僕の決めセリフがあるのですがあれもわざと高い声にしています。

──高い声でないといけないのですか?

これもバズってる動画や子どもに刺さる動画などを分析したら全員声が高かったんです。当時のペイント聖夜さんやリーサさんなど、声や決めセリフの一部が高いことがわかったんです。

──確かに今よくコラボしてる100円娯楽さんやそば湯さんも声高いですね。そして子どもに人気がある。

小学生は学校というコミュニティがあってそこで拡散されやすい口コミという強みがあるんですよ。だから子どもに刺さればバズりやすいというのをわかっていて、このキャラでやっています。

秘伝2:冒頭のカロリーを高くする。

──キャラクターが重要なのがわかったのですが、動画制作においてこだわっていることはありますか?

冒頭のカロリーを高くするということですね。

──グルメにかけた名言っぽいですね(笑)どういうことですか?

バズらなかった場合は基本的に動画冒頭に問題があるんですよ。

──離脱されるということですか?

そうです。最初の5秒で7割をつかまえたいんです。

──やはり冒頭のインパクト大事なんですね。

いかに最初の5秒で視聴者の関心を引けるか、僕はそのために情報量をつめこむんです。これをカロリ─高めにすると言っています。

@omurice_omelette 海外でバズってるオムライスを再現してみた IB:@むにぐるめ(唯一無二の絶品グルメ) #food ♬ Athletic Meet “Heaven and Hell” (No Introduction) – Shinonome

──情報量はどうやって詰め込むんですか?

それこそドヤ顔とオムライスのアップに、甲高い声でわけのわからないことを言うとか、この視覚と聴覚で両方攻めるんです。

──しかも赤い服と赤い髪で(笑)

お弁当で例えると栄養バランスの取れたお弁当は好まれないんです。もう唐揚げ、ハンバーグ、肉、肉、肉ってぐらいにひたすら茶色なものだけをつめこんでいく。

──確かにカロリー高いですね(笑)

これをテンポよくつなぎさらに情報量をぎゅっと凝縮してコンテンツを紡ぎ出しています。

──冒頭のあとに飽きさせない工夫とかしてますか?

基本的には冒頭とテンポ感さえあれば飽きさせないと思ってます。あとやらないこととして音を止めない、音がないシーンを作らないこと。

──たしかに静かなときがないですね。

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秘伝3:勝てるフォーマットを見つける。

──事前分析によるアクションが多いのですが、動画制作でPDCAとかは回しているのでしょうか?

以前はよくやっていたのですが、最近はバズったものを探して取り入れるぐらいですかね。いいね数の多いコメントを探してなぜバズらなかった分析しています。

──そういえば、オム兄がバズる前は海外向けに日本の料理コンテンツを発信していたと聞きました。

そうです。もともとはきまぐれクックさんがYouTubeでやっていたフォーマットをTikTokでやってみたかったんですよ。なので魚とかをさばく動画をやっていたのですが流行らなくて。そのあとにやっていたのが炊飯器だけで料理を作る動画です。

──いわゆる炊飯器兄さんですか(笑)

これも海外向けには可能性はあったのですが、リズムネタでしか勝ちパターンが見つからず断念しました。

──話を聞いていると勝ちパターンや勝てるフォーマットを探している印象です。

そうですね、上から目線で募集とか、あとは「やっちゃう!」の掛け声とともにポップコーンを作る人気動画があるのですが、このフォーマットをオムライスに転用したこともあります。

──なぜポップコーン動画を参考にしたのですか?

ポップコーンは海外でバズるコンテンツなんですよ。トウモロコシにコーラを入れて爆発させたり。これをフォーマット化すればバズると思ったんです。

──すでに勝っているパターンを探すのが重要なんですね。

実はオムライス自体も海外で通用するフォーマットになっていて。

──日本との反応の違いがあるんですか?

海外って生卵を食べないんですよ。海外はしっかり火を通さないと食べない文化なので。

──あーなるほど。

僕のオムライスは一応火を通すのですが、生っぽいので海外からはおそらくゲテモノ食いのジャンルとして見られてまして。

──そういう興味なんですね。

そうです。なので以前に「青いオムライス」を作る動画を出したのですがこれはインスタで9000万回再生されました。

──9000万回!

あと他にもプロのオムライス料理人と2画面で料理対決するというフォーマットも海外でバズりまくりでしたね。

──勝てるフォーマットがわかると強いですね。

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秘伝4:コラボ動画で可能性を広げる。

──芸人さんとのコラボ動画もすごい人気ですが、これも計算なのですか?

そうですね。計算というかそもそもオムライスだけでは正直厳しいとわかっているので、幅を広げるためにやっています。

──カジサックさんとのコラボ動画が本当に楽しそうでした(笑)

そうですね。憧れていた芸人さんなので尺にも編集にも気合い入れました。

@omurice_omelette @カジサック【YouTuber】 ♬ Athletic Meet “Heaven and Hell” (No Introduction) – Shinonome

──コラボ動画は長尺が多いですが、台本を書くの大変なんじゃないですか?

実は台本とかないんですよね。

──えっ!ないんですか?

そうですね。一応相手の需要だけは書き出して、例えばインパルスの堤下さんでしたら、自分のボケの回数を増やして、名前を間違えたりのツッコミどころを多めにするとか。

──事前の打ち合わせとかもないんですか?

ないんですよ。過去のバラエティ番組などを見返すぐらいです。どういうボケが来たらどういうツッコミをしてるかリサーチをして。

──ここも分析というかリサーチが

そうですね。相手はプロの芸人さんなので、打ち合わせなくてもガンガンきますね。自分は芸人さんのスイングを見て、そこにボールを置いてるだけです(笑)。でもやはり素人なのでそこは編集の力でなんとかテンポよく見せています。

──コラボする時に気をつけていることってありますか?

まぁ自分の立ち位置をわきまえるってことですかね。ボケ役に徹したり、ツッコミ役に回ったり。過激なことを言わないようにとかですかね。

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──これまでの話を振り返って、「オムライス兄さん」というコミカルな役柄からは想像できない徹底した分析や設定に本当に驚かれされました。ご本人としては自分のどの部分が一番評価されていると思いますか?

そうですね。一番はやはりキャラクターですね。服の色は赤、高い声で動画の最後にかならずドヤ顔。やっぱり一番はみなさんオムライスを見に来てるのでここを外すと数字が伸びないのもわかっています。なので今後もオムライスを軸に色んなことに挑戦していければと思ってます。

──最後に今後はどんなことに挑戦しようと考えてますか?

最近はおかじゅんさんという筋肉クリエイターさんとコラボしまして。筋肉ムキムキになって来年にでもフィジークの大会にでようと思っています。トレーニング系は再生回数も多いのでここで頑張っている姿を見せつつ、再生回数とフォロワー数を伸ばせたらと思います。

──最後の最後まで分析と計算、ありがとうございました(笑)。1年後がまた楽しみです。

 

取材・文:タキバヤシ
撮影:冨田味我

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