朝日新聞が9月17日付の朝刊に掲載した、安倍晋三氏と旧統一教会会長らが自民党の総裁応接室での面談時に撮影されたという写真。これまで自民党が繰り返してきた「教団との組織的な関係はない」という主張が根底から揺らぎかねないスクープに大きな注目が集まっています。そんな旧統一教会にかつて信者として身を置いていたジャーナリストの多田文明さんが今回指摘しているのは、教団と悪質業者の共通点。多田さんはメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』で、なぜ両者が勧誘時にターゲットに対して「2時間」を割くよう求めるのかについて解説しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:音声ガイダンス詐欺が横行。2時間というマジックワードに気をつける。ルーツは旧統一教会の手法にあり
2時間はマジックワード。そのルーツは旧統一教会にあり
長年、詐欺や悪質商法の被害実態を見てきてわかるのは、だまそうとする者は「2時間」をだましのキーワードとして使っているということです。
2000年代に、キャッチセールスに声をかけられて勧誘場所に連れて行こうとする前には、決まって「2時間くらいありますか?」と尋ねてきました。
なぜ聞くのかというと、相手を勧誘場所に連れ込み、個人情報を聞き出して、相手の事情に合わせた形で契約の説得に入るまでには、最低2時間が必要となるからです。たいがい最後の契約の説得の場面では、誘われた人は契約するか否かの決断に揺れますので、30分以上は取っておかないと、十分な説得ができません。そのことを考えると、最低2時間は必要となるわけです。
実は、これをキーワードにした商法のルーツをたどると、旧統一教会の霊感商法に行きつきます。
信者らは勧誘場所に連れ込んだ人たちに「あなたには悪因縁があり、悪霊がとりついている。それを祓うためには壺、印鑑、多宝塔を買わなければならない。そうしないと不幸になる」といった霊感を使った脅しを行い、甚大な被害を生みだしました。
その後、霊感商法が社会問題化すると、旧統一教会は、壺から自らの関連会社が販売する絵画、宝石、着物などを売りつける展示会商法に形を変えてきました。
私が信者時代だった時の内部資料には、展示会に連れ込む際、相手に話すべき事柄がマニュアル化されていました。内部では5大トークともいわれています。
- 招待制になっている
- 時間は2~3時間かかる
- アドバイザーが説明してくれる
- 私も買った
- 買ったらいいね
この5つを必ず、誘い込む前には伝えなければなりませんでした。これを話さないと、神の言葉を守らなかったとして、上の立場の者から叱責されることもありました。
ここにも「2~3時間かかる」という言葉があるように、最低2時間が必要であることを告げなければなりません。この言葉はだます上での重要なワードとなっていたのです。
これは正体隠し伝道の時にも使われました。教団の教義を教え込む場でもあるにもかかわらず、それを伏せて自己啓発の勉強をするサークルだと嘘をついて誘い込む際にも「2時間くらいはありますか?」と聞くことになっており、もしこの時間がない場合は、別日に約束を取るにようにいわれました。
今、詐欺や悪質商法で使われる「2時間」のマジックワードのルーツは、旧統一教会の手法にあるといっても過言ではありません。
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