「移民がペットを食べている」だけじゃない。トランプ前大統領の大問題発言とは?

 

移民への対応が現大統領の大失策だと強調したいトランプ氏はさらに「彼らは町を乗っ取っている。彼らは建物を占拠している。彼らは暴力的に入ってくる。彼女(ハリス氏)とバイデンがわが国に受け入れたのは、この人たちだ。彼らは私たちの国を破壊しているのだ」と畳みかける。

ここまで書くと、最後まで何を言ったかを伝えなければならないだろう。この話をトランプ氏はこうまとめた。

「彼らは危険だ。彼らは最高レベルの犯罪性を持っている。私たちは彼らを追い出さなければならない。私たちは彼らを早く追い出さなければならない」

危険な犯罪性のある人を追い出す、との論理は、偏見を助長し、対立と闘争を促進する。私たちは、そのような言動が繰り広げられた結果としての悲劇から排外主義政策は負の歴史として学んできたはずだが、米国ではまだ死んではいないようだ。

しかしながら、この発言を笑い飛ばすことも出来ない。それは私たちが辿ってきた道でもある。1964年、東京五輪の開催を控えた東京の在日米国大使館で、統合失調症の可能性がある青年にライシャワー米国大使が刃物で殺傷された事件では、メディアがこぞって疾患者を強制的に隔離する必要性を説き、治療よりも治安維持の風潮が先行した。

この出来事は、結果的に日本の精神疾患者の地域移行やインクルーシブ社会の遅れにつながったとも指摘される。共生社会を目指す現在は、トランプ氏の言動を受け入れる雰囲気は日本にはないと思いたい。

幸いなことに日本では、対岸の選挙であることもあり、生活に直結する話題に切迫感はなく、日本経済新聞社とテレビ東京の9月13~15日に実施した世論調査では、ハリス副大統領とトランプ前大統領のどちらが当選してほしいか聞いたところ、ハリス氏が71%、トランプ氏が19%だった。

ともあれ、今回の発言は、疾患や障がいに関する感覚は国際社会で共に作り上げていく途上にあることをも示しているのだろう。

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image by: Jonah Elkowitz / shutterstock.com

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障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

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