猛暑でも外国人観光客でもない、コメ不足「真の原因」
さて、原因としては、とりあえず昨年(2023年)が猛暑のためコメの収穫が不良だったということと、外国人観光客が大量のコメを消費したからという説明がされていました。
ですが、昨年以上の猛暑である今年のコメは順調だそうですから、猛暑による不作というストーリーはマユツバです。外国人のせいというのは、もっと怪しい話です。外国人観光客は寿司は食べても朝昼晩続けて米は食べません。まして、オカズとご飯を「三角食べ」などという習慣はないし、食堂で「大盛りライス」とか、町中華で「大盛りチャーハン」を食べたりはしません。
ですから、外国人観光客の需要というのは、仮に多少はあっても数字的にはその影響は限定的と見るべきです。
一方で、確かに、ここ数年、政府と全農はブランド米の輸出を強化しているのは事実で、足りないのに「うっかり多めに輸出に回してしまった」という要素はあるかもしれません。
とにかく猛暑だとか外国人というのは怪しい説明で、何度もお話しているようにコメ不足の本当の原因は、高齢農家の後継者不足により耕作放棄が加速している問題が非常に大きいのです。日本での米作りがどんどん細っているのです。
耕作放棄の原因としては高齢化だけでなく、鳥獣被害の深刻化なども挙げられているわけですが、これも構造的には同じことです。
要するに農業地帯での人と自然の力関係が逆転しつつあるわけです。ここに至った原因としては、高齢の小規模兼業農家が頑張っていたために、その利害を守ることばかりが国の政策となり、その結果として農業経営の改革が遅れたことが指摘できます。
この点に関しては、最新の動きとして「米農家の経営破綻」という別の社会問題も出てきています。人材難の中でも、何とか頑張っているコメ農家が経営に行き詰まるケースが出ているというのです。輸出ブームとコメ不足というトレンドは農家には追い風であるはずなのに、どうして経営破綻に追い込まれるのかというと、肥料の高騰だとか、機械化コストが重くて潰れるのだというのですから、何とも言いようがありません。