お米の「大規模大量生産」は日本の敵か味方か?令和6年米騒動とアメリカの関係…わが国経済・食文化・食料安全保障の死守ラインを考える

 

コメ価格が5キロ20ドル(2800~3500円)で高止まりする理由

さて、そんなコメ、特に日本食向けのジャポニカ米に取って、大量生産をやるにあたっての問題はノウハウです。機械化の進め方をはじめ日本は大規模な米づくりの技術や経験が乏しいのです。

ちなみに、田牧一郎氏が日本の実情を視察した際には驚愕したというエピソードが伝えられています。「ここまで小規模なのに、新品の高価な機器を入れている」というのです。「自分たちは古い機械を修理してフル稼働させて利益を出している」わけで、大きな違いというのです。

そんな中で、その田牧一郎氏の田牧ファームは、現在、技術指導を兼ねて茨城県に進出しています。すでに「コシヒカリ」から収穫量を15%増しとした改良品種を使って、味の優れた短粒米を生産しています。

ブランド名は、茨城の名前を冠した「茨米(うばらまい)」で、世界へ輸出を始めており、アメリカでもかなり出回っています。ハッキリ言って好評であり、中華系、韓国系スーパーなどでも相当に出足はいいです。

この「茨米」の動きと並行して、世界では短粒米の流通については、やや小さめの一袋5キロ(11ポンド)の単位が定着しつつあるようです。そこに、この「茨米」だけでなく、日本発の様々なブランド米も追随して世界中で流通し始めています。価格も、だいたい5キロで米ドルで20ドルから25ドル前後で安定してきています。この価格は日本円に換算すると2800円から3500円前後ということになります。

今回のコメ不足による価格高騰で、日本国内でもブランド米の価格は5キロで3千円というレベルになってきていますから、日本から見た内外価格差は解消しつつあるとも言えます。

仮に、全く仮の話として、田牧氏の「茨米」プロジェクトが成功したとします。田牧氏によれば、ドローンでの監視、自動化された肥料や農薬の投入、稼働率を高めた効率的な農機具の使用など、徹底したノウハウ移植をしないと、高利益体質にはならないそうです。ですが、とにかく規制緩和などができて、成功したとします。

実は、田牧氏のプロジェクトには、日本政府、コマツ、JFE(川鉄+鋼管)なども深く関わっているようで、今更感はあるものの、オールジャパンで支援しているという面もあるようです。

その場合でも、全世界で現在の強い需要が徐々に拡大するようですと、5キロ20ドルという相場は崩れないでしょう。その上で、「茨米」のプロジェクトを追って、今は日系人である田牧氏だけでなく、民族資本でしっかり「短粒米の日本における大規模営農」を成功させるファームが出てくればいいと思います。日本の農業にとっても、そして何よりも日本のGDPにとってプラスだからです。

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