お米の「大規模大量生産」は日本の敵か味方か?令和6年米騒動とアメリカの関係…わが国経済・食文化・食料安全保障の死守ラインを考える

 

「中粒米の自国大量生産」こそが日本の食を救う

さて、かなりディストピア的な未来が待っているわけですが、問題はこれをどうやって回避するかです。明らかに食味は短粒米であり、日本のコメである、そして日本の食文化に合致する安いコメが必要です。

とにかく「5キロ20ドルよりはかなり安い」という条件のコメを、今後も大量に供給するにはどうしたらいいのか、これは大問題です。

仮に開発できても、「5キロ20ドルの国際市場から見て、十分に美味い」ということがバレてしまったら、結局は5キロ20ドルになってしまいます。そうなると、国内の購買力では買い負けてしまいます。

そこで考えられるのが、国府田ファームの戦法です。つまり「短粒米だと買い負ける」ので、国府田ファームが一時期大成功した「中粒米」をどこかで大量生産して、安く国内で使ってもらうのです。

海外の日本米への需要は旺盛ですが、要するに「日本食ブームに幻惑されて購買力があるばかりにブランド志向にのめり込んでいる」だけです。もしかしたら、本当の食味を分かって買っているのでは「ない」可能性が強いです。だとしたら、彼らは中粒米に関しては、5キロ20ドルで札ビラを切ることはしないかもしれません。その場合は、そこで日本市場として5キロ10ドルの中粒米を抑えるという可能性が出てきます。

少なくとも、タイ米、米国南部米の「長粒米」と比べて、中粒米は日本の食文化に馴染みます。といいますか、コンビニ、牛丼、ファミレスなどの産業では、すでにコッソリとブレンドを始めている可能性もあります。とにかく、コメの国際市場が変動する中で、日本のコメ作りをどうしてゆくのか、廉価な日本向けコメをどう確保してゆくのか、この問題には従来の常識は通用しそうにありません。

改革ができなかった産業がどう潰れていくのか、グローバル化に成功した部分はそうして国内を置き去りにするのか、日本の「長く終わらない敗北」のストーリーがここにもあります。

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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