横綱トランプを終始圧倒、ハリス氏の立合い・踏み込みと「爆笑問題」とは?米大統領選TV討論会 重要ポイントまとめ

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米大統領選挙のTV討論会で直接対決したトランプ候補とハリス候補。アメリカ国民の多くが「ハリス氏の勝ち」とジャッジした理由とは?「相撲で言うところの立合いとしては、ハリス氏のほうに圧倒的な踏み込みがみられた」と指摘するのは、米国在住作家の冷泉彰彦氏だ。移民問題をめぐる「犬や猫を食べている」発言にかぎらず、トランプ氏の暴言に“爆笑”で対応するのがハリス流。大統領選の勝敗は、このハリス氏の“爆笑”戦術が投票日まで有権者の好印象をキープできるかどうかにかかっている。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:トランプ対ハリス、TV討論を総括する

全米が注目した「トランプ候補vs.ハリス候補」直接対決

2024年9月10日の火曜日、ペンシルベニア州のフィラデルフィアにある国立憲法センターで、トランプ候補対ハリス候補のTV討論が行われました。主催はABCテレビ、押しも押されぬ地上波3大ネットワークの一つであり、同時にディズニー社の一部門でもあります。

司会は、同局の専属政治記者であるデビット・ムイアとリンゼイ・デイビスでした。前回の「バイデン対トランプ」の際と同じように、聴衆はなしでした。

民主党の候補者がハリス氏に交替してから初の討論とあって、今回の討論はかなり注目がされていたのは事実です。ABCは独占放送とはしないで、ニュース専門局など全17局に同時中継をさせており、全部を合わせると視聴数は6千710万であったと発表されています。

これは6月の「バイデン対トランプ」の際の5千130万(いずれもニールセン調べ)よりも大幅に増えています。過去のデータとしては、2016年の「ヒラリー・クリントン対トランプ」が8千400万、1980年の「レーガン対カーター」が8千万、2020年の「バイデン対トランプ」の7千300万という「上」があるようですが、TVという媒体の影響力が下がっている中では、今回もかなり注目されたと言っていいと思います。

“横綱トランプ”をハリス氏が圧倒

TV討論から数日が経過しており、アメリカのメディアでは「討論はハリス優勢だった」という報道が目立ちます。また、トランプはこの結果に懲りたのか、現時点では「2回目はやらない」ということを言っています。

では、実際のところの空気感はどうだったのか、討論の詳細に入り込む形で振り返ってみたいと思います。

まず驚いたのは、ハリス候補のほうから歩み寄って握手を求め、トランプ候補が応じたことです。常識的には、セクハラ的な問題を気にするようになった80年代以降、男女の握手は女性から求めるのが自然という感覚がアメリカにはありますので、自然な流れではありました。

ですが、トランプ氏のほうは「まさか、悪名高い俺様に握手だと…?」みたいな躊躇があり、そこを突いてハリス氏はどんどん歩みを進めてトランプ氏の演台のところまで行って両者握手となったのでした。(以降は敬称略)

この瞬間に、相撲で言うところの立合いとしては、ハリスのほうに圧倒的な踏み込みがあった感じでした。そのハリスは、いつもより強めにパーマを当てていたのと、少々顔色が悪く痩せた感じに見えましたが、この「踏み込みと握手」で一気に調子に乗った感じがしました。

【経済と物価】司会の質問に答えないハリス氏の戦術

司会から出た最初の質問は経済と物価についてで、ハリスには「4年前より改善したのか?」という厳しい質問が出ました。いまだに国民の不満の強いインフレについて、現政権として責任があるのではという含みの質問でしたが、なんとハリスはいきなり「勝手に話題を振る」作戦に出ました。

大統領選のTV討論では常套手段なのですが、とにかく「答えにくい質問には答えずに、自分の有利な話題に振る」のです。不誠実な方法ですが、相手が司会者を引き込んで抗議してくるならともかく、そのまま話題を振って、そちらに流れれば一気に不利な話題から逃げられるというわけです。

明らかに司会は「4年前より改善したのか?」と聞いてきたのに、ハリス氏は今後の未来の話に振りました。そして「自分の経済政策で中流を持ち上げる」と宣言、方法としては「減税」と「中小企業優遇」だというのです。さらに、いきなりトランプ陣営は「富裕層と大企業への減税で大失敗した」と断罪していました。

一方のトランプですが、こちらも髪を短く切って若く見せるようなスタイルで登場しましたが、発言の姿勢は相変わらず「悪ガキの漫談」調でした。

質問は経済が良くなっているのかという問いでしたが、いきなり「俺は関税を上げる」と宣言、そして畳み掛けるように「最悪のインフレ、最悪の政権のせいだ」と罵倒。勢い余って、いきなり「オハイオ州のスプリングフィールドにはハイチから移民が殺到して大変だ」と、とにかく、このネタについてはどうしても喋りたいという感じでした。

このトランプの発言に対し、ハリスには「反論の機会」が与えられたのですが、ハリスは「トランプは不景気と民主主義の危機を残した」と、これまた経済とは関係のない話も含めて対抗。

とにかく、両者ともに質問に誠実に答えるというわけではなく、また相手の発言に正確に打ち返すのでもなく、用意したフレーズをランダムに相手にぶつけている感じでした。

要するに、テニスで言えば適当に新しいボールを打ちつづけているのであって、全くラリーになっていないのでした。

続けて、トランプは「経済については自分たちは良くやった、株価も高かったし」と述べると、ハリスはトランプ政権が財政赤字を広げたと批判し「トランプは何の計画もない…」と述べていました。これに対するトランプの批判は「大学の先生は褒めてくれた」ということと、「ハリスの政策はバイデンの計画のコピーにすぎない」という罵倒でした。

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