TVが報じなかったパリ五輪のダークサイド。カネとルッキズムの祭典に漂う「持続可能性」とは真逆のオワコン臭

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パリ2024オリンピックが11日の閉会式をもって閉幕した。オリンピック旗は2028年の開催地であるロサンゼルスに引き継がれたが、「次回の五輪が楽しみだ、という手放しの楽観はできない」と指摘するのは米国在住作家の冷泉彰彦氏だ。今回のパリ五輪でもいたるところで見られたという近代オリンピックの闇、「カネ」と「ルッキズム」の問題とは?(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:解消すべき五輪の闇

五輪は「ほぼ米国マネーの都合」だけで動いている

パリ五輪が無事に終了しました。直前に鉄道への放火テロが疑われる事態があり、非常に緊張感を経験したのは事実ですが、結果的に大きな混乱はなく終わったのは良いことだと思います。伝えられている範囲では、過剰警備に関する指摘はなく、仮にそうであれば高度な警備ノウハウが発揮されたのだと思います。

それにしても、日本の視点、あるいは世界の視点ということでも良いのですが、近代五輪のあり方にはかなり暗雲が漂ってきました。このまま五輪というものが持続可能なのかという問題がまずあり、その中心は経済なのですが、経済問題を別にしても多くの難問が重なっているのは否定できません。

そう考えると、今回の閉会式を見ていると、過去の五輪がそうであったような「やはり、オリンピックというのはいいものだ」そして「次回の五輪が楽しみだ」という手放しの楽観はできなくなっているのを感じます。

まず大きな全体的な問題としては、やはりカネの問題があります。今回のパリの場合は、とりあえずは経営的な問題は話題になっていません。例えば東京のような予算オーバーとか、ソチのような露骨な汚職という話は聞こえてきていないのです。

ですが、アメリカから五輪を見ていますと、やはりその異常性を感じます。それはアメリカの視聴率と購買力に強く依存しているということです。例えばですが、開会式と閉会式の演出は、次回開催都市であるLAの紹介部分は仕方ないにしても、それ以外の部分も露骨なまでにアメリカの視聴者への迎合が感じられました。

フランスの大会であるのに、どうしてレディー・ガガやセリーヌ・ディオンなのか、というのはやはり疑問が残ります。閉会式の主役だったバンドのフェニックスについてもそうです。確かにフランスのバンドだと言われればそうですが、楽曲の多くは英語だし、リーダーのトマス・マーズは妻がソフィア・コッポラで、現在の拠点はNYです。

競技におけるアナウンスが、まるでアメリカの格闘技のアナウンサーのように、絶叫調の英語というのも気になりました。勿論、フランスはEU統合の優等生と言いますか、中核国家であり、EUの公用語は英語であるのは間違いありません。そのフランスというのは、ビジネスやスポーツの世界では準英語圏になっていると言っても過言ではないと思います。

ですが、やはり競技の全体がアメリカという巨大市場のマネーで動いているというのは異常です。その金額については、具体的にはTVの独占放映権です。NBCが結んでいる契約ですが、現時点では「北京(冬季、2022)」から「ブリスベン(夏季、2032)」までの6回で77億5千万ドル(約1兆1230億円)に達します。夏冬ワンセットで約4000億ですから、途方もないカネです。ちなみに、日本の今回(北京+パリ)の放映権料はその10分の1の400億を払っています。

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