今後も続く、五輪「8月開催」という米国の横暴
いずれにしても、この米国マネー依存というのは、前回の東京大会の場合にも問題になりましたが、具体的には開催時期を縛ってくるという問題があります。NBCとしては、最大の広告収入を上げて、この投資を回収したいわけです。その際に障害になるのは、他のメジャーなスポーツとの日程の重なりです。
アメリカの地上波(3大ネットワーク、現在はNBCが独占権)と、これに一部ケーブルやネットを加えたメディアとしては、五輪と次の重なりは避けたいのです。
・バスケのNBA(シーズンはファイナルまで入れると、10月末から6月末)
・野球のMLB(公式戦とのダブりはいいが、7月上旬のオールスターと、10月丸々一ヶ月のプレーオフとのダブりはイヤ)
・アメフトのNFL(公式戦が9月上旬にスタートして2月のスーパーボウルまで)
特にバスケ(NBA)は五輪競技にしていることもあり、逆算するとこの8月というのがほとんど「唯一の選択肢」になってきます。昔はもっと五輪の時期というのはフレキシブルに組めたのですが、バスケが五輪の競技になって、プロが出るようになったバルセロナ(1992年)以降は、ほとんどが8月開催になっているのはこのためです。
更に、アメリカのスポーツ市場で大きいのはアメフトのNFLで、これは9月に公式戦が始まると週末の1試合1試合が重要となり、巨額なマネーが動くのでダブりは避けたいわけです。同じ理由で、野球の関係で10月と7月上旬はイヤというわけです。
92年以降の例外は2000年のシドニーで、これは恐らく正式決定後に、どうしても寒い冬ではなく暖かくなってからという理由で10月に「ねじこんだ」のだと思います。2021年の東京も、10月開催にすれば有観客で押し切って経済効果もある程度実現できたのにと思います。まあ冷静に考えれば10月でも有観客は難しかったのかもしれませんが。
それはともかく、米国マネーによって五輪が支配されているというのは、どうしようもない現実です。開会式や閉会式の内容がアメリカンになるのは、開会式でも感じましたが、パリ大会の実行側に「オリンピックなんてそんなもの」という「こだわりのなさ」が出たのだと思います。閉会式の演出を見ると益々そうした感じがあります。そうした理解でとりあえずはいいのだと思います。ですが、開催時期がほぼ一択、7月下旬から8月下旬という一択に絞られているというのは、やはりいただけません。









