TVが報じなかったパリ五輪のダークサイド。カネとルッキズムの祭典に漂う「持続可能性」とは真逆のオワコン臭

 

だが日本は、あまりにも「カネ」がない

一方で、日本の場合は資金不足という問題が大きく暗い影を落としているように思います。

例えば、多くのメダルを獲得して日本選手団全体としては成果があったにもかかわらず、JOCとして優勝パレードは行わないという決定の問題があります。一部には、東京招致と東京開催成功を目指した時期には「パレードを行う理由」があったが、今はないという声もあります。

ですが、それも含めて資金不足ということは明らかです。資金がないので、警備を含めたコストを支えきれないのです。例えばスポンサー企業に頼ろうにも、東京五輪が残した「五輪とカネ」のマイナスイメージがある中では、積極的になれない企業も多そうです。

また、これは関西の例ですが、タイガースの優勝パレード絡みのスキャンダルが十分に解明されていない中では、企業が資金提供する意欲は低いのだと思います。そんな中で、無料イベントとしてのパレードには人は殺到する、けれども地上波TVも含めて、人が殺到したとしてもマネタイズができない、そんな構造が背景にはありそうです。

少なくとも、日本の場合は東京の悪夢が残っている中では、五輪に関心はあるが、カネが絡む話には疑念を持ってしまうという傾向が、今後かなり長い間続くではと思います。これは非常に深刻な話です。

もう少し小さな話としては、女子マラソンの補欠繰り上げ問題があります。女子マラソンでは日本記録保持者として日本代表となっていた前田穂南選手が8月2日の補欠解除後に負傷欠場を発表しました。パリ五輪としては、レース前日まで補欠と変更可能というルールがあったのですが、日本陸連としてはレース9日前の2日で補欠解除にしていたのです。

この問題ですが、前田選手サイド(天満屋)に細田選手の繰り上げに対して消極的で、そのために発表を遅らせたという可能性はゼロだと思います。また、日本陸連が官僚主義で「補欠繰り上げの手続きが面倒」などの理由で「9日前のカット」をしていたのでもないと思います。

問題はカネです。まず、これは一般世論は全く知らずに驚いたのですが、直前のトラブルに備えて補欠選手を帯同するということは、やっていないのだそうです。このこと事態が驚愕ですが、委員を派遣するチケット代ホテル代を削減してでも補欠を帯同すべき、という価値観は陸連にはないという以前に、そもそも陸連にはそんなカネはないのだと思います。

結果的に、急遽チケットを手配して補欠を飛ばすとなると、格安チケットは無理なので往復50万円とかになるし、ホテル代などを入れると100万円では足りないわけです。そのカネを用意するのは、例えばですが、補欠1位でGMC3位であった細田選手(エディオン)サイドには出来なかったのかもしれません。

そんな場合は、協賛航空会社が「太っ腹」で何とかすればとも思いますが、現状では日本発の欧州往復のマーケットは限りなく細っており、航空会社としてもタダ券を出す投資に見合う効果は計算できないのだと思います。

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