きめ細やかなサービスと全国に広がる店舗網によって、社会インフラとして欠かせないものになったコンビニエンスストア。少子高齢化が世界に先駆けて進む日本において、その役割はさらに重要性を増していきそうです。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは、三菱商事とKDDI、両社が共同経営するローソンの3社が発表した「未来のコンビニ」に注目。インタビューでのKDDI高橋誠社長の言葉から、どんな未来を見ていて、課題はどこにあるかを探っています。
KDDIと三菱商事がローソンで「やりたいこと」──少子高齢化への社会課題をコンビニは解決できるのか
2024年9月18日、三菱商事、ローソン、KDDIは「未来のコンビニ」共同会見を行った。三菱商事とKDDIが共同経営することになったローソンを、今後、どのようにしていきたいか、の決意表明といえるだろう。
ローソンに1回行けばpovoのデータ容量が100MBもらえる、「Pontaパス」でお得なクーポンがもらえ、au PAYでのポイント付与率が上がるといったのはコンシューマーにとってわかりやすい例だろう。陳列ロボットやドローンなどは法人ビジネスの導入事例としても想定の範囲内と言える。
ローソンの経営に参画するにあたり、KDDIはどんな未来を見ているのか。8月にシリコンバレーにGoogleの新製品発表会を取材しに行った際、高橋誠社長にインタビューする機会があったが、高橋社長は「西海岸の企業からはローソンへの参画に関して、やたらと質問を受けた」と語っていた。アメリカでは、ウォルマートが「リテールテック」で成功事例を収めており、西海岸のIT企業にとって、関心が高いのだという。
例えば、店舗内にデジタルサイネージをどんと構え、広告を出すと商品の売上げが一気に上がるため「リテールメディア」として媒体価値が評価され、結果、広告料収入が確保できるという。確かにすでに日本でもファミリーマートがレジの上に巨大なモニターを新たに設置していたりする。西海岸の企業もリテールテックやメディアに関心があるため、KDDIと組んでローソンで展開するなんてこともありそうだ。
一方で、日本のローソンで得たリテールテックの知見をグローバルで展開するなんてことも考えられる。高橋社長は先日、開催されたKDDI SUMMITの基調講演でも語っていたが「日本は世界で最初に少子高齢化の課題を解決しなくてはならない国であり、そのノウハウを世界に共有していく立場にある」という。
これはヘイミシュ・マクレイ著『2050年の世界 見えない未来の考え方』(遠藤真美訳、日本経済新聞出版)によるものだが、共同記者会見後に行ったショートインタビューで高橋社長は「日本は少子高齢化が進み、いろんな事柄での課題先進国とも言われている。各国が同じような課題へ直面していくなかで、日本ならではの付加価値・取り組みが役立つんじゃないかと。その中心にいるのがコンビニ。そこで、よろず相談がどこまで受け入れていただけるかが課題だ」と語った。
リモート接客できる機械の前に何十分も座って金融や医療の相談をする、というのはとてつもなく高いハードルのように思えるが、コンビニというリアルな顧客接点があるからこそ、数多くの課題を解決できる可能性はありそうだ。
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