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杉田水脈はなぜ女のプライドを捨て「エセ保守の男たち」に媚びたのか?安倍・萩生田・ほんこん…男の顔色を窺う人生で得たモノ失ったモノ

自民党の杉田水脈(すぎた・みお)前衆院議員(57)といえば、差別的・ネトウヨ的過激発言の数々が真っ先に思い浮かぶ。だが意外なことに、故・安倍元首相や萩生田光一氏との関係を深める以前は、そこまで極端な右翼思想の持ち主ではなかった。それがなぜ、自分自身女性でありながら「男女平等は絶対に実現しえない、反道徳の妄想だ」などと男に媚びるようになったのか。杉田氏の衆院選不出馬をふまえ、元全国紙社会部記者の新 恭氏が詳しく解説する。(メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:安倍元首相の秘蔵っ子、杉田水脈氏の運は尽きたのか

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苦境に立つ“ネトウヨの姫”こと杉田水脈前衆院議員

衆議院選挙がスタートし、メディアはいっせいに自主規制期間に入った。しばらくは「公平」という名に縛られた退屈な報道を甘受するほかなさそうだ。

そんな時は、選挙に出る人より、あえて出ない人を取り上げてみるのも一興だろう。

自民党の前衆院議員、杉田水脈氏。安倍晋三元首相の寵愛を受け、衆院選では比例単独候補として優遇される一方、ネトウヨ的な過激発信を繰り返してきたことで知られる。

報道によれば、杉田氏は今回も比例単独の立候補をめざしたが、党本部との話し合いの結果、出馬を「辞退」したということになっている。来年の参院選に鞍替えするためというのが表向きの理由だ。

事実、自民党が非公認とした12人の中に彼女の名は含まれていない。だが実際には「非公認」と同じ扱いを受けたといってよさそうなのだ。

安倍元首相からの寵愛でのし上がった“強運”に陰り

杉田氏は10月10日、森山裕幹事長からの電話を受けた。杉田氏はこう振り返る。

「杉田さんは来年の参議院選挙に出馬を考えてるっていうのはあるんですかって聞かれたので、それも視野に入れて考えていますってことに、お答えしました」(テレビ山口)

杉田氏の所属する自民党山口県連が同月7日、党本部に杉田氏の公認申請を出してきた。前回の21年、前々回の17年と同様、比例中国ブロック単独の立候補を前提とした申請だ。

もちろん、党本部が「はい、わかりました」と簡単に返事をするわけはない。杉田氏は、派閥からキックバックされた1564万円を政治資金収支報告書に記載せず、6か月の「党の役職停止」処分を受けた。いわゆる“裏金議員”の一人だ。ただでさえ目立つその人を比例名簿に登載すれば、自民党批判のタネが増える。

杉田氏が、その極端主義にも関わらず、岸田内閣の総務大臣政務官に登用されるなど党内で一定の役割を与えられてきたのは不思議なほどである。

しかし、今回の選挙にあたって、その“運”にも陰りが見えてきた。

私の名前が衆院選の比例名簿に載らないなんて…

「党内融和」のための柔軟路線をとろうとする森山幹事長に対し、石破首相や小泉進次郎選対委員長は裏金議員への厳しい姿勢をアピールすることに重点を置いていた。

このため、“裏金議員”の中から安倍派幹部ら6人と、当選見込みの薄い6人の計12人を選んで非公認とした。また“裏金議員”34人については比例との重複立候補を認めないこととし、その減少分を補充するため比例単独の候補64人を新たに追加した。その中には新人や女性の候補者が多く、清新さを打ち出すことに腐心した様子がうかがえる。

このような状況にあって、杉田氏を公認し比例名簿に登載するのはきわめて難しい。杉田氏本人もそれはわかっていたらしく、「衆院がダメなら来夏の参院選に」と県連の関係者に話していたという。

森山幹事長が電話で参院選出馬の意向を聞いてきたのはむろん、今度の衆院選は断念したらどうかという働きかけである。杉田氏は続けて、こう語る。

「じゃあ今回の衆議院の名簿に載るっていうよりは、そっち(参院選)をがんばってこれから目指した方がいいんじゃないかっていうようなお話をされまして、その話し合いの結果、そちらの方向でということで、なりました」(同)

淡々と森山幹事長の提案を受け入れているような口ぶりだが、杉田氏の心中は穏やかではなかっただろう。もし総理・総裁の座に、高市早苗氏がついていたなら、こんな仕打ちを受けないですんだと思ったはずだ。

杉田氏は総裁選で高市氏を応援し、東京都内での街宣でもマイクを握って熱弁をふるっていた。高市政権を待望し、その敗北に打ちひしがれていた一人だ。

安倍元首相、萩生田氏に“ベタ褒め”されて右傾化に拍車

杉田氏といえば、日本維新の会の第1次公募に応募し、2012年の衆院選に兵庫6区から立候補、比例復活で当選したが、その後、安倍晋三元首相の目に留まり、自民党との縁ができた。

杉田氏の国家観、家族観を安倍氏が激賞し、その意を受けた腹心の萩生田光一氏が自民党からの出馬を働きかけた。そんな経緯があって、杉田氏は衆議院比例中国ブロックの単独候補として、17年、21年の2回にわたって当選を果たした。

17年の選挙では、山口4区の安倍晋三事務所を訪問し、下関市内で開かれた集会に安倍氏夫人、昭恵さんとともに参加している。安倍氏なき今、その後継者を自任する高市氏が、杉田氏の頼みの綱なのは自然の理ともいえる。

杉田氏はSNSなど通じて、家父長制的価値観に基づく主張を続けている。とりわけ女性やLGBTQに関する過激発信は物議を醸すことも多いが、いわゆる岩盤保守層からは強い支持を受けている。いくつか、問題発言を取り上げてみたい。

2016年の国連女性差別撤廃委員会に出席した際、自身のブログに投稿。「チマ・チョゴリやアイヌ民族のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」。これに対し、会議に参加したアイヌ民族と在日コリアンの女性が人権救済を申し立て、札幌と大阪の法務局が杉田氏の「人権侵犯」を認定した。

同性カップルについて。「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない」(月刊誌への寄稿)

性暴力の被害者への支援をめぐり。「女性はいくらでもウソをつける」(自民党本部の会議で)

男女差別について。「男女平等は絶対に実現しえない、反道徳の妄想だ」(2014年・衆院本会議)

まさに、統一教会や日本会議が主張している右翼思想と同じである。

ただし杉田氏は、西宮市役所の職員だった当時や、2010年に同市を退職して「みんなの党」に入った頃には、そのような極端な考えの持ち主ではなかったらしい。

想像するに、安倍元首相が関心を抱いてくれたのが一つのきっかけとなって、右傾化に拍車がかかったのではないだろうか。

男頼み、比例頼みの杉田氏は選挙に弱い

女性でありながら、リベラルな立場ではなく保守的な意見を表明しているところが、安倍・菅政権時代の自民党にとっては希少価値といえた。

しかし当然のことながら、石破首相に代表されるようなリベラル色を帯びた自民党政治家の間では嫌悪感が強いはずである。政変が起これば別だが、石破政権のもとでは、杉田氏に不利な状況が続くのではないだろうか。

杉田氏は10月12日、山口市内で記者会見し、来年夏の参院選に全国比例で立候補する意向を表明した。

「(参院選で)『杉田水脈』という名前をどれだけの方に信任して書いてもらえるか、信を問うことに挑戦したい」(共同通信)

衆院の比例区は、「政党名」を書いて投票するが、参院の全国比例では「政党名」または「候補者名」で投票し、当選順位は個人名での得票数の多さで決まる。

衆院の比例単独だった杉田氏はこれまで、当落を全面的に党に依存するため、通常の選挙運動をすることもなく、せいぜい所属する山口県連がらみの地元活動をしたり、中国ブロックの自民党候補者の事務所をまわるていどだったに違いない。

ところが参院選の全国比例ともなると、個人名を書いてもらう必要があり、杉田氏自身が知名度を全国に広める努力をしなくてはならなくなる。

「高市内閣」の誕生を待つ?杉田水脈氏の今後

だがそもそも、杉田氏は自民党公認で来年の参院選に立候補できるのか。

森山幹事長が電話で参院選に言及したからといって、なにも公認を確約したわけではないだろう。党の方針などは、時の政治情勢によってコロコロと変るものだ。

安倍氏が亡くなって強力な後ろ盾を失い、杉田氏の政治家としての将来に暗雲が垂れ込めてきたのは紛れもない事実だ。

杉田氏を自民党に引き入れるのに一役買った萩生田光一氏も今や他人の選挙どころではない。裏金と統一教会問題の象徴的存在として「非公認」とされ、東京24区で落選の危機に直面している。

石破政権になって、岩盤保守層の分裂と自民党離れは加速している。その一部は日本保守党などの新興勢力に流れ込むだろうが、なかには自民党支持を固持し、近いうちに高市氏の天下になると信じる人々もいる。

杉田氏もまた高市政権の誕生を願い、雌伏して時の至るを待つ心境なのかもしれない。

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image by: 杉田水脈 Facebook

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